*ウサギのお部屋*

日記・レビューなどなど。
最新日記は数日後に非公開にします。

佐藤厚志「常盤団地の魔人」(2024)

2024年08月31日 | 
 
佐藤厚志さんの、A賞受賞後の次の作品として話題の新聞小説が本になったので読んでみたの巻。
だが、、、
「常盤団地第三号棟」じゃなかった?
スズキスズヒロさんの挿絵は?
いろいろと、大人の事情がありそうです。
内容は全くの初見なので、加筆修正したとされているけれど、違いとかは分かりません。
ここまでは読む前の感想。感想? っていうかね。

ここからは、読んでみてから。
すっごい個人の感想です。著者の意図は関係ありません。ここのブログに書いてあることは全部個人の感想なんですけどね。。
著者が、この町に生まれて、育って、今も住んでいるのに、今まで聞きに行ったことのあるトークイベントでは、一切家族の話が出てこないのがずっと気になっている。
プライベートは言わないことにしてるのかもしれないけれど、それだったら書店員だったことも言わないんじゃないかな。
ここにある主人公の家族の姿が、もし著者のそれと重なるのであれば、それは、言わないわなーとは思ってしまう。違ったら本当にごめんなさい。

そうそう、これが今の話なのか、昔の話なのかが、微妙に隠されているというか。
主人公の名前からすると、今の話っぽいけど、家族の態度などを見ると昭和な感じがする。
これをわざと意図的にやってるのだったらすごいなと思う。

タイトルになった、魔人は、そういうことかーと思った。誰の中にもありそうですね。

あとは、殴られたときの表現が、花が咲いて、また花が咲いて、花畑になったとか、おしゃれだなーと思った。

読んでみて、やっぱり、スズキスズヒロさんの絵を見てみたいなと思った。

ノスタルジー、少年時代の思い出、みたいな書評が多いみたいですが、私は私の好き勝手に書きました。


パトリシア・ハイスミス「11の物語」(1945、1962、1964、1965、1967、1968、1969、1970)

2024年08月20日 | 
 
Eleven

映画「PERFECT DAYS」の中で、役所広司さんが読んでた本を読んでみるの巻その1。
映画は2月に観た。随分時間が経ってしまった。意外と人気で? 順番が遅かったんですよ。姪が読んでたんだっけか。
11編の短編を集めた短編集。

著者のことを知らなかったのだけど、ヒッチコック映画「見知らぬ乗客」の原作だったみたい。
あとは、予告編しか見てないけど、いつもの映画館でこの人の映画をやってたっけな。「パトリシア・ハイスミスに恋して」という邦題のドキュメンタリー映画。

ミステリーというか、奇妙な話というか。世にも奇妙な物語の原作にもいかがですかと思う感じでした(笑)

01かたつむり観察者
02恋盗人
03すっぽん
04モビールに艦隊が入港したとき
05クレイヴァリンク教授の新発見
06愛の叫び
07アフトン夫人の優雅な生活
08ヒロイン
09もうひとつの橋
10野蛮人たち
11からっぽの巣箱

1編ずつの感想はやめとこ。
いきなり、自分の書斎でかたつむりを飼い始めてどんどん増やしていく人の話から始まって度肝を抜かれる(笑)
とにかく、直前まで読んでたモンゴメリとの落差がすごい(笑)美しい世界ばかりじゃないんですね。。。
でもこういう、何か起きるぞって、いい感じで進んでも絶対に何か変なことになっからって期待して読むのもまた楽しいかもね。こういう、物語に身を委ねるやり方もあるね。
解説には、読み手の現実も崩れていくみたいに書いてあったけど、それはないな。現実と違う話を楽しむみたいな気持ちで読んだよ。
これはこれでありなのかしら。。。

何か、映画の原作も、映画と全然違うみたいな話らしいし、読んでみなければ分からないかもね?
気になる作家ができました。
今読んでも全然古くないのは、それは思う。


モンゴメリ「銀の森のパット」(1933)「パットの夢」(1935)

2024年08月14日 | 
 
「Pat of Silver Bush」
「Mistress Pat A Novel of Silver Bush」

これも新訳になってからは初めて読むので、ゆっくりじっくり読みたかった。そしたら、なかなか進まなくて(笑)
パット(7歳)が、自分の家をどれほど愛しているかということや、変化を嫌うことや、妹が生まれるときにばあやがパセリ畑から赤ちゃんを探す話(キャベツ畑じゃないんだ?)ぐらいで1週間ぐらい過ごしてしまう(笑)
パセリ畑って! あとは、コウノトリとか、お医者さんのカバン。

シルバーブッシュは、白樺の木々のことみたいですね。白樺が銀の森ってすてき。
アン、エミリーに次ぐヒロインのパット(パトリシア)は、自然、木が好き、家が好き、変化を嫌うところが、著者の気質を表しているのかなって感じです。本人もそう言っている。
やっぱり、自然の描写がいちいちすばらしくて。この世界の、この星の美しさを伝えてくれる。最近ね、この世界は地球はくだらないとか何とかいう意見を聞いたので、そうでもないよねって戻してくれた。
木々の生長と、心の傷の癒えることを同列にするのが著者ならではだなと思った。すごい。時間の経過とともにあるもの。
どこかに書いたけど、自然と心を結びつけるのは、アジア的らしく、あまり欧米の人でそれをやる人は少ないみたいで。そこもすごいなって思う。

パットは、アンやエミリーみたいにみなしごじゃなく、普通の家の、両親も兄弟もいる子ってところが違うなあ。そこが新鮮なところ。
でも、幼馴染の男の子にその境遇を持ってきてるので、やっぱりそれはある。

ばあやのジュディの田舎なまりの喋り方の訳し方がとても気になった。「っちゃ」を使うんだけど、仙台弁「だっちゃ」と違う活用で、ちょっと、変な感じがしました。「ちゃ」に手を出すと奥が深いですよ(笑)
でも、この人の話す話が面白過ぎて、物語のもう一つの軸になっている。幅を広げてくれる。この辺も、ストーリーテラーの著者の本領って感じです。

主人公が変化が嫌いという設定も、人生は変化の連続だから、それはつらいことなんだろう。
形あるものは全て変わっていく。これも、この世界ならではでいい。

言葉にならない悲劇。
恋に落ちることと愛することの違い。
ちょうど出合った言葉が自分に降りかかってくる。
などなど、なるほどなことがたくさんありました。

1作目は6、7歳から18歳まで。
2作目は20歳から30歳過ぎぐらいまで。
1作目は2回目、2作目は村岡訳で3回以上は読んでるはず。持ってるから。でもあまり覚えてなくて新鮮に読めた。

結婚相手と巡り会うところの話は、エミリーをなぞってるみたいな感じだった。それでも細かいところが違うのだけどね。
最後は、何回も読んだはずなのに全く覚えてなくて、ああー、そういうことかーってなった。そこもすごいなと思う。
最後はいつもそうあるべきのハッピーエンド。これも著者ならではですごく好き。安心して物語に身を委ねて連れてってもらえる信頼感がある。

ちなみに、「銀の森屋敷」はモデルがあって、従妹の家で、著者が結婚式を挙げた家。今も記念館として残っている。いつか訪れたいです。


ドラマ「路上のルカ」(2023)

2024年08月02日 | ドラマ
映画「キリエのうた」のディレクターズカット版です。映画の倍の6時間になった。大体30分ずつの10話構成。
全然映画と違う。
もちろん、見たことない場面もたくさんあるんだけど、ここ要らない、見たくないなって思った場面がなくなってた。さすが岩井俊二。と思ったら後から回想としてあったわ。でもそのときにあるよりは後からのほうがいいかな。
あとは、時間が、行ったり来たりしないで、時間通りに進むという違いもあるかな。それもいい感じ。
キリエとイッコの前に、ルカとマオリがあったほうが絶対にいい。さすが岩井俊二。
キリエと夏彦の恋の部分が、より、いい。私の気持ちが変わったからか、いい編集だからなのか。
震災の地震の部分は、結構これでもかってぐらいやった感があるので、映像表現として、やっぱり泣いてしまう。でもこのぐらいやってくれていいと思うの。
イッコさんのあれは、カルマかなと思う。それを背負って生まれてきて、そして、幾ら逃げても、そこから逃れられなかった。

ルカの歌も、思う存分聴かせてくれるのがよい!
やはり、この映画はアイナさんの歌声があってこそ。
「憐みの讃歌」を今度歌ってみます。
とっといて、また観ようー。

モンゴメリ「エミリー」ブックス(1923・1925・1927)

2024年08月02日 | 
 
Emily of New Moon
Emily Climbs
Emily's Quest
(村岡花子訳)
毎年6月に読むと決めてる。理由は何となく、毎年その時期に読んでたから。エミリーの誕生日が5月なので5月でもよいのだけどね。
ちょっと遅くなってしまった。7月に読みました。

新装版が図書館にあったので、借りて読んだ。新訳ではないが持ってるのよりも文字が大きかったり読みやすくなってる。
あとは、時代に合わせて差別用語がソフトな表現に変わったりしてた。「めくら」が「目をふさがれてる」に変わってた。
てにをはが直されてたり、「知っていた」→「分かっていた」などもあった。
多分気づいてないけどもっといろいろ変更されていることと思う。
うわーと思ったのは、「マザー・ハバード」!(笑)これは誰も分かるまい。。「ハバードかあさん」じゃ分からなかったものがいろいろ出てきてすごい(笑)えっ何、かわいいワンピースじゃんと思うけど、、、

松本侑子さんの訳も待ってます!
「風のおばさん」は「Wind Woman」で、「北風のうしろの国」の北風のイメージだとか。
これもイメージ変わる。でも子供が「風の女が、、」とか言うと少し違うからね、難しいとこだね。

また、今回気づいたことなどを書いていこう。
3次元(旧世代)vs5次元(新世代)とかだねー。
あとは、やっぱり、物を書く人は、向こうの世界との通信があるよね。いわゆる「降りてくる」みたいなこと。これも、本当にあるんだと知ったので面白いなと思う。

お父さんの神様とエレン・グリーンの神様は違う。
ってのが、世界線がそれぞれ違うとか自分自神にも通ずる感じでよき。

名前何だっけ。
思い出した、アンゾネッタ。
本にあった聖女のようになれって言われてその真似をしたらこいつは頭おかしいって言われた話とか、ほんと面白い。

イルゼの言う、神様がいなくて悪魔しかいなかったとしたら、、、の世界って、今までの世界じゃん。そりゃー、怖いわ。

いつもよりも、細かな描写を味わって読んでいた。何度読んでも発見がある。
「同じ本を20回読む=何も発見はない」みたいな話があるけれど、何回読んでも何十回読んでも新しい発見があったり、今さらそこで泣いたりとか、毎回そこで泣くとか、すごいですよ。

イルゼのお母さんの本当のことのくだりで、何かすごく泣いた。
あそこは本当に、すごい。
でも、本当にそういうことはあるのだと知ったので、何か、いいよね。
この、不思議な、千里眼的な話。3部作で1つずつあるのも意図的でいい。

高校時代に下宿する先のルース伯母のことが、意外と入ってきた今回。
どんな嫌な人でも、いいところがあるというか、人間の深みをちゃんと描いているところがいい。
そういえば、もう私はこの伯母たちの年代になってるなって、今回は気づいちゃったね。エミリーみたいな姪がいたらめんこいだろなー。
ナイスアシストと思ったのは、ルース伯母が「家が火事? 港が火事?」って聞くところ。「火事になったのは私の心」ってエミリーが答えるの。いい問いだったなと思う。こういうところがぽっと出てくるのがいい。

3作目は、一番分量は短いけれど、一番年数も長いし、いろいろ詰まってると思う。
特に、愛について。
この辺を今までよりも深く読んだ。
恋がなかったらどんなにいいか? とか。体は近くにいても、心が離れてしまって、その切なさがつらい。
「愛するとはたった一つの感情でしかない」とかも、何でそれが分かっちゃうんだろうとかも、不思議だなあって、改めて思ったりとか。
テディが自分を愛していたんだと知ったところは改めて感動。
「怒りも、恨みも、彼女の魂の中に場所を捜すことはできなかった。まるで新しい生きもののような気がした」
魂って言葉は、よく出てきたなと思う。
そして、やっぱり、最後のシーンはとてもよいと思うのでした。物語が終わる寂しさ。ハッピーエンドのうれしさ。