*ウサギのお部屋*

日記・レビューなどなど。
最新日記は数日後に非公開にします。

イ・スグァン「シルミド 裏切りの実尾島」

2007年07月21日 | 
シルミド・裏切りの実尾島・ (ハヤカワ文庫・NV)
イ・スグァン,米津 篤八
早川書房

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2003年



韓国映画「シルミド」と同じ題材の、より真実に迫ったとされる、実録小説。

関係者の取材を徹底的にした、という。

けど、事件を起こした者は自害・あるいは死刑になっていて、軍事裁判の記録も非公開らしく、その辺が悔やまれるね。



おおまかな流れは、映画を見たから、だいたいわかっていたので、意外とサクサク読めた。

小説、という形式だから読みやすかったってのもある。

主人公は、死刑囚・ジュノ。

刑務所にいるところを、「国家に忠誠を誓い、北朝鮮へ行く工作員となり、侵入して金日成の首を取ったら、死刑を取り消して、かなりの地位につくことも可能」と言われて、軍隊の特殊部隊に入り、無人島である実尾島(シルミ島)で訓練を受けることに。

他のメンバーも、チンピラだったり、前科者だったり、存在を消されても誰も探さないような人たち(実際は違ったのだが)。

しかし、3ヶ月で決行されると言われていたのに、3年以上経っても作戦は決行されず、訓練兵はすべて殺される、との噂が広まり、訓練兵たちは、教育兵を殺して島を脱出し、ソウルに乗り込む。



この国も、国家による詐欺行為は日本と変わらないのねーとか思って読んだ。

これは!って思った部分は、作者の思いでもあると思われるところ。

祖国は祖国であり、政治家は政治家。

自分=国家だと勘違いしている政治家がいるけど、違うんだ。

祖国を愛しているが、自分を裏切った大統領は許せない。この二つに矛盾はない。

っていうようなところ。



愛国心を見せるために国歌を歌え!って強要した誰かさんに教えてあげたいねーここんとこ。

それから、軍隊のある国って、本当にこんなんなんだなー。おっかないなーと思った。

「国家機密」とされている真実が、すべて明るみにされる日は来るのだろうか。

「6 stories」現代韓国女性作家短編

2007年07月18日 | 
6 stories シックスストーリーズ 現代韓国女性作家短編
キム インスク,コン ジヨング,ハ ソンラン,キム ヒョンギョング,ソング キョングア,安 宇植,鷺沢 萠
集英社

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2002年

安宇植 編・訳



収録作品;

隣の家の女 ハ・ソンラン

ちょっとした日々の記録 チョウ・キョンラン

性交が二人の人間関係に及ぼす影響に対する文学的考察のうちの事例研究部分引用 ソン・キョングァ

人間に対する礼儀 コン・ジヨン

鏡にまつわる物語 キム・インスク

緑の木の記憶 キム・ヒョンジク



鷺沢萠さんのエッセイもついている。彼女が今の韓流ブームを見たらどう思うんだろうなぁ、とまた思ってしまうね。



もともと、「愛のあとにくるもの」

http://jocoso.jp/itty/1663656



で辻仁成さんとコラボレートした作家さん、コン・ジヨンさんのほかの作品も読んでみたいな、と思って、図書館で検索したら出てきた本なの。それで借りてみたの。

彼女に関して言えば、全然違うねー。ちょっとこれは難しかったかな。書き方が下手なのか、訳が下手なのか、私が勉強不足だからいけないのか(笑)



他の人の作品も、なかなか楽しめた。

やっぱ、「どこが?」ってことじゃないんだけど、日本の女性作家を6人集めたって、こんな本はできないってゆうか、顔は同じなのに言語が違うってこととか、文化や背景が違うってことも感じた。



で、私は何を書く?

って、今、自問しているところ。

それをこの本にも聞かれたような気がした。

石田衣良「東京DOLL」

2007年07月15日 | 
東京DOLL (講談社文庫)
石田 衣良
講談社

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2005年



なんか、女の子が主人公の軽いお話かなって思って選んだ。

女の子がモデルになるっていうところは予想がついたけど、あとは全然違う。予想通りだったら読む必要ないもんね。



主人公は「MG」(マスター・オブ・ゲームの略)と呼ばれる、ゲームを作る人。

いきなり何の説明もなく「MGは、」で始まる文章だと、え、何人?男?女?みたいのがあるよね。そういうのも新鮮だった。

コンビニのレジで、次のゲームのイメージにピッタリの女の子「ヨリ」を見つけ、モデルにならないか、と誘う。



あーどこまで書いていいんだろ。

表向きは、モデルの女の子が「人形」なんだけど、実は…みたいのも奥に隠れている。

主人公が名前で呼ばれない、語られない部分にもそれはうまく現れていると思う。



「どうなっちゃうんだろう?」っていう暗い予感とか、物語の中にどんどん引き込まれていくのを感じた。

読んでる間、「そっか、それは現実ではないのだ」って確認して、その暗い感じに憑依されてる、といったらいいのかな、そうなってる自分に気づく、みたいな。読んでる途中で寝たとしたらまた夢を見ちゃったと思うわ。

でも、読後感はいいので、あーよかった。



「女」は「媒介」「霊媒」である、とかいうようなことは、男の人の視点で書くから?男の人が作者だから?よく表れるような気がする。

私の大好きだった大学のA先生に見せたらなんて言うかな?なんて思ったりもした。久しぶりにそう思える作品に出会ったな。

伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」

2007年07月14日 | 
陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)
伊坂 幸太郎
祥伝社

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2006年

「陽気なギャングが地球を回す」の続編。



あー楽しかった。

幸せだった♪



彼らのトークがおもしろくて、ずーっと読んでいたい、という感じ。

どんどん先へ読み進んでしまって、「あぁ、もうすぐ終わっちゃう、寂しいなぁ、もっと読んでいたいのに」って思えるくらい。

もちろん魅力はそれだけではないのだが。



こんな気持ちにさせてくれる作家・作品、はなかなかないんだよねー

松谷みよ子「あの世からの火」

2007年07月12日 | 
あの世からの火 (偕成社の創作―直樹とゆう子の物語)
松谷 みよ子,司 修
偕成社

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1993年

直樹とゆう子の物語・第5作

今のところ、これが最終作。一気に全部読んでしまったよ!



今回は「屋根裏部屋の秘密」で出てきた、山荘の管理人のみすずさんの体験記が大部分を占める。

敗戦後、1人で3人の子供を抱えて、朝鮮から引き上げてくるときのお話。

生きるか死ぬか、というときに、ご先祖の火の玉に助けられた、という話から、タイトルがつけられた。

もちろんそれだけでなく、今の日本がひた隠しにしている、朝鮮を侵略したという事実をきちんと描き、日本が見ないようにしている、在日の問題にも少し触れ、朝鮮という国がクローズアップされている。

思えば悲しい国…

ずっと日本に侵略されてて、やっと解放されたと思ったら、今度は南北に分断されて、北に残してきた家族にも会えないという。



今ならなんて言うかな?

侵略戦争の時代を、「美しい国・日本」として美化して、その時代に逆戻りしたがってる首相になんて言うのかな?

本当、こういうの、読んで欲しいわ。

児童文学には、政治家のおじさんたちに読んで欲しいものがいっぱいあるわ。



若い世代、中学生のゆう子にしてみたら、母も兄も、なんでそんな怖いことばっかりに首を突っ込むんだろう、楽しいことばっかり見ていたいのに。って正直な気持ちも描かれていて、さすが、児童文学の巨匠だけあるよね。



そういえば、うちの父も引揚者だった。祖母が1人で、終戦時1歳半の父を連れて帰ったんだよね。こんなに大変だったのかな、すごいことなんだな。

そういえば、私の大好きな韓国ドラマだって、南北に分断されなかったら、あの切なさは生まれなかったと思うし…

朝鮮じゃなくて日本を分断するという計画もあったんだってね。

とか、考えると、決して無関係の問題ではない

松谷みよ子「私のアンネ=フランク」

2007年07月10日 | 
私のアンネ・フランク (偕成社の創作文学 29)
松谷 みよ子
偕成社

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1979年

直樹とゆう子の物語・3作目

直樹大学2年生・ゆう子中学2年生

母・蕗子 もうすぐ50歳(作者と同年代)



ゆう子の13歳の誕生日に、同じ13歳の誕生日から日記を書き始めたという、アンネの日記を母がプレゼントする。そこから物語がスタート。

娘の視点、母の視点が半々くらい、ちょこっと息子の視点もあり、のお話。

なんだけど、この作品においては、母・蕗子の物語が、作者の思いと重なっているんだね。

アンネと同い年だということに気づいた蕗子は、偶然の導きによって、アウシュビッツに行くことになった。

アウシュビッツ博物館の内部は、前に読んだ本で知ってた。けど、それを見た人の感情が…せまってきた…。



青森県の民話、「鬼の目玉」というお話に、端を発する。

これが、アウシュビッツとどう結びつくのか、っていうのが作家ならではの視点だね。

作者がたどった、民話の旅も、気になってきた。今度読んでみよう。大学のときに勉強したことが、今ならもっと深く理解できるような気がする。



私も、いつか訪れたい。アンネの家とアウシュビッツ。

そして、私なりの「私のアンネ=フランク」を書きたい。

と、ここまで考えて、ふと、思い至った。

何もそんな遠いヨーロッパまで行かなくても、ここ日本にも、隠れ家はあっただろうし、アウシュビッツもあったのだ。

それを残さないで、隠してしまった、そして忘れてしまった日本人…

そして、同じことを繰り返そうとしている日本という国…



この作品が書かれた当時からささやかれてきたことが、もうちょっとで現実のものになろうとしている。

みんなが気づかないうちに、事態は進行している。

早く、気づいて!

これを、子供たちに読ませる前に、事態は悪くなっているような気がする。

松谷みよ子「死の国からのバトン」

2007年07月10日 | 
死の国からのバトン―直樹とゆう子の物語 (少年少女創作文学)
松谷 みよ子
偕成社

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1976年

直樹とゆう子の物語・2作目。

直樹6年生・ゆう子5歳



作者の、民話収集から始まったというこの物語は、先祖と不思議な世界で出会う、という形を通して、現代の日本に起こる問題を告発するものである。



なーんて、解説風に書いてみたけど(笑)

最初はね、難しくて、ちゃんと読めなくて、困った。

小学上級以上、って書いてあるから、5年生でも読める文章なのにね。でも、きっと、子供たちにも難しいかもしれない。

ご先祖、なんて、遠い話だもの。タイトルも、なんか、怖いし。



でも、本当は、生きるということは、バトンを受け継ぐことなんだ、というようなことなんだよね。



大多数の民は飢えて死んでいった、ご先祖の時代と、まがいものだらけの(食べ物で言えば、添加物・農薬だらけの)今の時代とどっちが幸せなんだろうね?

っていう問いを投げかけてくれる。

水俣病みたいな公害病を例にあげて。



これも、やっぱり、難しいけど、子供たちに伝えたい問題である。

モンゴメリ「続アンの仲間たち」

2007年07月06日 | 
続アンの仲間たち (ニュー・モンゴメリ・ブックス)
L.M. モンゴメリ,赤松 佳子,Lucy Maud Montgomery
篠崎書林

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収録作品;

ふたりのミリセント

ペネロピーのパーティー用ブラウス

小さな黒い人形

フレイザー奨学金

コンスタンスの身内

ミス・サリーのお客

ある招待

ミス・シンシアの雪どけ

マーガレットの看護

シャーロットの貴婦人たち



こないだ読んだ「アンの仲間たち」の続編。

続編っていうか、英語版は1冊だったのが、翻訳版で2冊に分かれただけだから、同じ短編集である。

だから、感想もだいたい同じ。



その中でも、いいなぁって思ったのが、自分を犠牲にして、他の人に譲って、そこで譲られた人が親類に出会って引き取られた、というようなお話。



もう一度同じようなことがあっても、自分は同じことをするだろう、

とか、

自分は自分以外の誰にもなりたくない

とかいう部分が好き。



また、似た展開だってわかってても、泣いちゃうのよねぇ。

似たお話だけど、それぞれのキャラクターは別物だしね。

松谷みよ子「ふたりのイーダ」

2007年07月05日 | 
ふたりのイーダ―子どもの文学傑作選 (子どもの文学傑作選)
松谷 みよ子,司 修
講談社

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1969年



順番がぐちゃぐちゃなんだけど、こないだ読んだ「屋根裏部屋の秘密」の直樹とゆう子のシリーズ。これが第1作である。



タイトルは昔聞いたことあったんだけど、読んだことなかった。

こんな話だってのも知らなかった。



このシリーズ、全部読みたいなぁ。

図書館の書庫にあるかもしれないし、もっと探してみようっと。



この作品では直樹は4年生、ゆう子は2歳11ヶ月。

ゆう子の様子が、いっちゃんと重なって、本当にめんこいの。喋り方とか、夏なのに毛布を所望するところとか、ね。

この頃の子供は、前世の記憶が残ってる、とかいう部分もね。



1945年8月6日・広島

その日何があったか、子供たちは知らないのだろうか。

私なんかは、「はだしのゲン」を読んだから、絵で見ちゃったもんな。(特に2巻)あれはあれでショックだったけど、隠さないで見せてくれた親には感謝だ。



今の子供たちの方が、知らされてないような気がする。

こういう、子供でも読みやすい、優れた作品があるのは、本当に有益なことだと思う。

こういうの、読ませてあげたいなぁ。

事実を事実として受け止めさせて、それからのことは自分で考えさせたい。

こんなことがあったのに、なんでまた戦争をしようとしているの?って絶対疑問に思うはずだから。

それをさ、実際にあったことを隠してさ、以下略(笑)同じグチになっちゃうや。

伊坂幸太郎「重力ピエロ」

2007年07月02日 | 
重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社

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2003年



実家にいたときに買った本。

やっと読んだぁ。

(普段買うときはいらないって言うんだけど、注文して自宅に届けてもらったから)ずっと、書店のカバーがかかったままだったので、今回は、裏表紙のあらすじも読まず、どんなお話かわかんないで、ただ読んでみた。

こういう読み方ができるのも、伊坂さんの作品だから♪だよねぇ。



今までに読んだ数作に似ていない。

不可解な殺人がないってことと、最後で「なるほど、そうだったかぁ!」ってのがない(予想できたラストであった)って部分がね。

だから、ハラハラ・ドキドキってのはなかったんだけどね。こういうのも好き。



これは、家族の絆を描いた、本当にいいお話だと思う。

細かいセリフまわしとかも楽しいし、いろんな知識(膨大な参考文献)を得ることも楽しいんだけど、今回はこれかな。

あんまり多くを語ると陳腐になっちゃうから、今回は簡単に。