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ワニなつノート

「分けられた子ども」と百年後の世界 ⑧

《なぜと問わなくてすむように 2023》

 

「なぜ、ふつう学級?」

分けられたい子どもはいないから。

すべての子どもが、自由に出会い、つながれるように。                      

 

「なぜ、ふつう学級?」

この子の出会いとつながりの物語を、この子に聞くために。

この子が自分で、自分の人生の縁で、自由に出会い、つながりの安全の中で、遊び、学び、笑う姿を見ていたいから。

 

「言葉を話せないのに?」

言葉では聞けない物語を、私たちはたくさん聴かせてもらった。

おかげで、言葉を話せる子どもたちも豊かにもっている非言語のつながりにも気づけた。

 

「なぜ、ふつう学級?」

なぜと問われても、いまは落ち着いた存在でいられるのは、つながりの確かさを、子どもたちに教えてもらったから。

こうして、私たちが語る言葉を、ふつうにうなずきながら聞いてくれる子どもたちに出会えたから。

その答えを、言葉にしておきたい。

 

痴漢にあった子が「なぜ声をあげなかったのか」と、問われないように。

性虐待にあった子が、「なぜ逃げなかったのか」と、問われないように。

障害のある子が「なぜ、ふつう学級にいるの?」と、問われないように。

 

6歳のわが子を、近所の子どもと学校に通わせたいと願う親が、「なぜ」と問われ、怖れたり、凍りついたりしなくてすむように。言葉がみつからず、泣きながら子どもに謝らなくてすむように。

 

「なぜ、ふつう学級?」

分けられたい子どもはいないから。

子どもが子どものいる方へ、耳を傾け、首をかしげ、目を向けるから。

つながろうと手をのばすから、全身で、全神経で。

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