就学相談会の前に思うこと
6月25日と、7月9日と就学相談会がある。
28年もやっているのに、毎回、「同じだまされ方」をしている人に出会う。
手口が、「おれおれ詐欺」と同じだと感じる。
趣向は変わるのだが、やっていることは古典的だ。
たとえば、ずっと不思議だと思ってきたこと。
障害児の就学のテーマが「選択」だと思わされていること。
ふつう学級か、特別支援か、子どもにとって一番いい環境を「選択」するのが、親の務めのように思わされていること。
違うよ。テーマは「選択」じゃないよ。
就学相談会のメインテーマは、子どもが安全に安心して学校生活を送るための、情報や手段、社会的資源や仲間の存在を知ること、だよ。
《ふつう学級は「選択」ではない》
この町に生まれ、この町で育つ子どもにとって、
この町は自分一人でなく家族みんなの故郷になる。
6才になったら、この町の小学校に行くことを、
酸素のように吸い込んで、子どもは育つ。
障害があってもなくても、酸素は同じに届く。
気管切開をしても呼吸器をつけても、酸素は同じに届く。
家は大切な親やきょうだいがいる所。
学校は大好きな友だちや仲間がいる所。
それは「選択」ではない。
赤ちゃんは赤ちゃんの声のする方へ向かう。
それを「選択」という人はいない。
「子どもが子どものなかで育つこと」
「仲間を必要とすること」を選択とは言わない。
哺乳類に生まれてきた時点で、仲間のなかで生きる運命なのだ。
◇
子どもは親を「選択」しない。
でも虐待する親だったら?
それでも親は他にいない。親の選択はない。
ただ現実には、親以外の「抱きしめて守ってくれるひと」が幼い子どもには必要で、親が「立ち直る」のを待てない時もある。幼い子どもの命と時間は儚いものだから。
それでもそれは「子どもの選択」ではない。
親と施設・里親を比べて選択したのではない。
ふつう学級も同じ。
もしそこが「虐待する・ふつう学級」だったら?
そのときは、まず逃げた方がいい。選択ではない。緊急避難だ。
子どもの味方になって、子どもの訴えに耳を傾けてくれる大人が、子どもには必要だ。
選択ではない。必要不可欠なのだ。
選択がまちがっていたのではない。
その「ふつう学級」に「虐待」があったのだ。
そういう話なのだ。
◇
現実の社会に、子どもを大切に育てる親と、虐待してしまう親と、両方の親がいる。
だからといって、最初から「実の親」と「養護施設」と、どっちが子どもにとって「いい環境」かという選択はない。
実の親に大切に育てられるのがいいに決まっている。
ふつう学級も同じこと。学校の教職員みんなが、子どものありのままを受けとめて、大切に育ててくれるのがいいに決まっている。
でも、現実に、「虐待(ネグレクト)するふつう学級」があることを多くの人は、経験的に知っている。
だからといって、はじめから「ふつう学級」と「特別支援」、どっちがいいか、という「選択」を迫るのは違う。
明らかに比べるものが、違う。
比べるとしたら、「子どもをみんな大事にするふつう学級」
と「手のかかる子をネグレクトするふつう学級」とどっちを選択しますか?だろ。
答えは決まってる。
◇
「いじめられますよ」という校長や教育委員会は、「ふつう学級」は子どもが虐待される場所だと宣言しているにすぎない。
「いるだけでいいのか」という教師は、「私はなんの世話もしない、なんの関わりももたない」と、子どもをネグレクトすると宣言しているにすぎない。
「分からない授業はかわいそう」という人は、授業とは本来「分からない子ども」に語りかけることだということを忘れている。語りかける前から、「分からないに決まっている、かわいそうな子ども」と憐れんでいるにすぎない。
授業とは、相手が理解できると分かっているから、するものではない。相手に伝えたいことがあり、そのことを仲間と一緒に学びあう、そのことも授業を通して伝えたい、学びの形だということを知らないだけ。
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