赤ちゃん扱いと自尊感情(その1)
先日の相談会でこんな話がありました。
保育園で、友だちから赤ちゃん扱いされることがあり、子どもがいやな思いをすることがある…。
このまま、普通学級に行かせてあげたい気持ちがあるけれど、障害があることでいつも赤ちゃん扱いされる子どもの気持ちを考えると、親として不安もある…。
その話を聞きながら、わたしの頭に浮かんだのは、「赤ちゃんじゃないよ」という子どもたちの声と、人工呼吸器をつけて保育園で働き始めた歩さんに、「あゆみお姉さんって死んでるの?」と聞いた子どものことばでした。
保育園の子どもが、寝たきりの子や、しゃべらない子を、自分よりも年下扱いすることは、ある意味自然なことなのだと思います。
子どもが、誰かを赤ちゃん扱いすることは、自分を「お姉さん扱い」することでもあります。
でも、赤ちゃん扱いされる側の子どもはいい気持ちはしません。ましてや死人扱いされるのは心外でしょう。
歩さんは大人だから、その場で反論できます(^^)v
「死んでないよ。ちゃんと手動いてるでしょ」
「ふーん、そうなんや」
でも、まだうまく反論できなかったり、そもそもしゃべれない子は、「赤ちゃんじゃないのに…」とプライドが傷ついたり、いやな思いを持ち続けることもあるでしょう。
親が不安に思うように、小学生になってもお世話が好きな子、おせっかいが好きな子はいます。
そうした子のなかに「赤ちゃん扱い」する子もきっといることでしょう。
でも片方で1年生にもなると、「赤ちゃんじゃないよ」という子が出てきます。
普通学級でいろんな子と出会い、いろんな関係を体験すること、その中で、自分をみつめ、友だちを見る目を育てること。
それは、不安よりむしろ楽しみなことだと私は思いますと、そんなふうに話しました。
もちろん、保育園でも、そうした子どもの気持ちに気づける人がいたり、「赤ちゃんじゃないよ」と言える側の子どもを育てる人がいれば、保育園でも豊かに築きあえる関係なのだと思います。
歩さんは保育園でのこんな会話も教えてくれました。
◇
「あゆみお姉さんって、声が出ないのにどうやってお話するの?」
「文字盤でお話するんやで」
「私も文字盤したい」という子。
ヘルパーさんより先に、歩さんの「ことば」に気づき、「文字盤してって言うてるで」という子。
つばがたまっているのも、ヘルパーさんより先に気づく子。
「うさぎ好き?」
「ミッキー好き?」と聞いてくる子どもたち。
そして、歩さんの「はい」「いいえ」のサインである「舌を動かす」「眉間にしわを寄せる」という表現を、教えられなくても気づく子どもたちには、やっぱり大人はかなわないなと思います。
◇
相談会のときは、すぐ次の話題に移ったのですが、翌日からずっとこのことを考えています。
たとえば、「子どもが歩けないこと、車椅子を使っていることで、赤ちゃん扱いされる場面や関係があり、子どもが傷ついている場面がある、このまま普通学級に行って、大丈夫なんだろうか…」
この不安の先に、『「みんなは歩けるのに、自分だけ歩けないこと」「みんなができるのに、自分だけできないこと」、そういう環境だと自尊感情が傷つき、自己肯定感が持てなくなりますよ。だから、歩けない子は歩けない子の学校、できない子は個別でできることを教えてくれる学校がいいですよ。』という、特別支援への道があります。
でも、これってやっぱり変です。
子ども同士の関係や感情は、自然なことといえます。
親の不安も自然なことでしょう。
でも、それが「特別支援の場」につながるのは、やはり不自然です。
しかも、それが「子どもを守ること」「子どもの自尊感情を大切にすること」だと思われているとしたら、すごく変な話だと思うのです。
a.「この子を守る」とは、どうすることだろう?
b.この子に育てたい「自尊感情」とは、どういうものだろう?
いわゆる専門家や教育委員会の人は、特別支援の場に分けることが、答えだといいます。
本当に、本気でそんなことを思っているのでしょうか?
しばらく、このことにこだわって書いてみようと思います。
(つづく)
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