《この子にとっての幸せは…》
7月の就学相談会のアンケートに印象的な言葉がありました。
《普通学級にはいれるか?
それでこの子にとって幸せか…?
それで私にとって幸せか…?
悩む…》
「この子にとって」という言葉はよく使われます。
でも、「私にとって」は、今までになかった言葉だと思います。
入院中に病院から出かけた相談会だったせいか、「私にとって幸せか」という言葉が新鮮でした。
これを書いた人は、普通学級でいいのか?という迷いの方が強い方でした。
でも、子どもの幸せを心から願い、「この子にとっての幸せ」=「私の幸せ」と思い悩む気持ちが伝わってきました。
今まで、会の多くの人たちも、同じように迷い悩んで普通学級に通い始めました。
確かなことは、私たちの中に後悔している人はいない、ということです。
「この子の笑顔がみたい」「この子が幸せになれるように」
そのために、教育委員会や校長との話し合いを繰り返し、ふつうならしなくてもいい苦労を背負い続けてきたけれど、「みんなと一緒に暮らした子ども時代」を後悔している人は、ここにはいません。
「この子の幸せ」を「私の幸せ」と感じながら、普通学級のなかで暮らしてきました。
そこに少しでも後悔があれば、こうして自分たちで「相談会」を開き、若いお母さんたち(かつての自分自身)に向けて、「大丈夫、こんなことや、あんなこと、すてきな出会いや出来事がいっぱい待ってるから、大丈夫」と、伝え続けることはできません。
【よ】
《ようちえんもがっこうも、子どものつながりは同じだから》
この子のしあわせを、私はどんなふうに、願うのか。
私は、「この子」ではない。
だから、まずはこの子が幸せを感じる、この子の感情を大切にすること。
この子の主体性、主観性を大事にすること。
この子は何が好きなのか。
どんなことに喜びを感じ、どんなことを楽しいと感じ、どんなふうに幸せを感じるのか。
それはこの子にしか感じられないこと。
この子が幸せを感じ、楽しみ、笑顔でいてくれることが私の幸せ。
もちろん、この子の人生に悲しみや涙が大切であることも忘れない。
この子の幸せを考える時に、私の幸せは「この子の人生の豊かさ、この子の感情にかかっている」。
◇
特別支援教育という制度は、この子の主体性、喜びの感情にとってもっとも欠かせない「みんなといっしょ」を否定するところで作られています。
6才の子どもが、みんなと一緒を求めているのに、それを奪われたところで手に入れる能力とは、
「自分のしたいことを我慢する」能力です。
「みんなと一緒を黙って見ている機会」が、子どもの人生の中にどれほど作られるか。
みんなと一緒にいることを認められない自分に気づいている子どもは、最初から「自己否定」を学ぶことになります。
それが、特別支援教育の限界であり、正体です。
特別支援の枠の中にある幸せは、分けられた場、制限された場の中だけのことです。
たとえば、認知症に関しては、次のような言葉が受けとめられつつあります。
『基本的問題は、認知症の人びとを変えたり、認知症の人びとの行動を「管理する」ことではない』
この単純なことが、学校では認められません。
特別支援教育の基本的問題は、まさに「子どもを変えたり、行動を管理すること」を目指していることです。
障害のある子どもたちの基本的な問題は、子どもを変えたり、子どもの行動を「管理する」ことではありません。
子ども同士の自然な出会いが起こり、生き生きとした関係が作られるように、私たち自身の不安や自分たちの受けた教育の教えから自由になって、子どもたちを信じて進むことです。
私たちこそが、「子どもをこう変えなくちゃ、管理しなくちゃ」という「こだわり」から解き放たれることが必要です。
その先には私たちの受けた教育からは思いもよらない出会いが生まれ、関係が築かれていきます。
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