《では、私はなぜ一緒がいいと信じているのか?》
私が大人になってから、の理由は分かっている。
幼い子どもが必死でみんなの方へ顔を向け、
手を伸ばし、這ってでも行こうとするから。
そして、自分のできなさに気づいた時には、自分のその一番の願いを、自分からあきらめようとするから。
「分相応」をわきまえるほどに成長して、一緒の居場所を、自分からあきらめる子どもたちの「理解力」を感じてきたから。
時に自分の思いより、母親を気遣って、自分の思いをのみこむ子どもたちの声を聞いてきたから。
その思いに気づかないふりはできない。
その思いを大事にできないなら、私は人としていられなくなる。
子どものためじゃない。
わたしのために。
この社会の大人は、一部の幼い子どもたちに、あなたは頭が悪い、言葉もしゃべれない、勉強ができない、社会のルールが理解できない、他者の気持ちが理解できない、という。
だから、みんなとは別の場所で、それらを学べという。
その子たちは、この社会の大人たちのルールをよく理解していて、親に無理をかけないように、自分の一番の夢やあこがれの居場所を、あきらめる「理解力と自制心」をもつ。
「知的能力がない」「人の気持ちが分からない」と言われる子どもたちの、ほんとうの気持ちを聞いてしまったら、その子どもたちを見捨てて生きていたくはない。
小夜さんの本の一節。
特殊学級の担任初日。
「先生も普通学級落第してきたの?」といったH君。
とっさのことに、返事ができないままの小夜さんに、
「大丈夫よ、また試験を受けて普通学級にもどれば」と励ましたH君。
1965年。
いまから50年前のこと。
そこから3年後、わたしも「普通学級落第」といわれる立場を知る。
あれから、わたしはその時の自分の気持ちを分かちあえる幼い仲間たちの声を聞いてきた。
子どもの思いは50年前もいまも、かわらない。
その子たちを分けようと分けようとする社会も、かわらない。
残りの人生を、
このことを、
ちゃんと言葉にできるようになりたい。
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