ワニなつノート

「手をかりるように知恵をかりること」(次のメモ)

「手をかりるように知恵をかりること」(次のメモ)


「そんなこと、誰かに聞けばいいのに」

「だって…」

「聞いていいのよ」

「でも、自分のことは自分でやらなきゃ…」

「何でも一人でできる人なんていないのよ。
あなたも、私も、社会的な哺乳類なんだから」

「ほ乳類?」

「そうよ、他人と関わり、互いに深く結びつき、
依存しあわないといきていけないの」

「そんなこと、だれもおしえてくれなかった」


そうね、私もそうだったわ。
小さいころから、自分のことは自分でしなさいって。
もうお姉ちゃんなんだから、自分でできるでしょ。
赤ちゃんじゃないんだから、いつまでも甘えてちゃだめ。
自分のことくらい、自分でできなくてどうするの。
そんなことじゃ、いつまでたっても一人前になれないわよ。

だから、わたしもいつもがんばってきた。
手をかりることにも遠慮して、
知恵をかりることなど思いもよらなかった…。

泣きたいときも、苦しいときも、
みんな一人でがんばってるんだからと、
自分に言い聞かせてきたの。
それが当たり前だと思ってたから。

どうして、わたしは、そんなふうに思いこんだのかしら?
助けを求めちゃいけない。
自分のことは自分だけでやらなくちゃいけない。
弱音をはいちゃいけない。
甘えちゃいけない。
手をかりるのはいけないこと。

それを、「人としての約束事」のように信じてきたのは、
どうしてかしら?

「自分のことは自分で」
そんなこと、教えられる前から、
自分でできることは、自分でやってたのに。
わたしは自分の足で歩けるから、自分の足で歩いたわ。
自分の目で見てきたし、自分の耳で聞いてきた。
でも、それは、人としての「約束事」とは違うものだった。

「自分のことは自分で」
そんなこと言われなくたって、
子どもはみんな「自分で」やりたいことばかりよ。
なんだって、子どもは自分でやってみたいって思うものよ。

歩きはじめたばかりの子どもでも、階段を一人で上りたくて、
支えようとする親の手をふりはらうでしょ。
鳥のように、空だって、自分の翼で飛びたいくらいなんだから。

うまくできないこと、人の手をかりたい気持ちのとき、
子どもはちょっと横を見上げる。
そこに、笑顔で見守っていてくれる人がいてくれて、
そっと手をかしてくれる人がいてくれて、
さりげなく知恵をかしてくれ人がいてくれたら、
わたしたちは、もっと別の関係を
生きあうことができるようになれるのに。

「自分ができることを自分でやる」ことと、
「自分のできないことに誰かの手をかりる」ことが
同じ約束事ならよかった。

「自分ができる」ことを、自分のために、
そして「自分が分からない」ことは、誰かの知恵をかりながら、
「自分ができること」を、誰かのためにつかうこと。
いろんな自分のありように出会いながら、
いろんな人と関係に出会い、深く結びあい、
たよりあう関係を、私も学びたかったな。

犬は「ワンワン」となくもの。
猫は「ニャーン」となくもの。
自分のことは自分でやるもの。ワン。
人の手をかりてはいけない。ワン。
人の知恵をかりてはいけない。ワン。
そんな「約束事」に縛られることなく、
2才の女の子が、「ワンワンがニャーン」といって
おかしそうに笑う世界に、私も微笑みたい。

子どもの世界では、ワンワンがニャーンも、
ネズミがネコをつかまえたっていいんだから。
こころはもっと自由に、わたしはもっとわたしのままに。

手をかりるように、知恵をかりることを、
わたしは今からでも、子どもたちから学びたいな。

コメント一覧

ai
素直な○が
珍しく抵抗しました。
「僕は、こっちの道に行きたい。」
暗いところが苦手な○が、
私が行こうとする「明るくて安全な近道」ではなく、
「暗く危険な遠い道」を歩きたいというのです。
夕方、買い物に行こうとした時のことです。

にらめっこが続きました。
立ち止って動こうとしません。
疲れていた私は、
酷い言葉を浴びせます。
「一人では何にもできないくせに、
何言ってんのよ。」

すると、○は、意を決したように唇を噛み、
踵を返すと、脱兎のごとく、走り出しました。
その早いこと。
みるみるうちに坂を下り、私の視界から消え、
あっという間に、
夜の闇に飲まれて行きました。

彼が歩きたかった道。
追いかけずに、しばらく立ち止り考えてみました。

わかりません。

でも、彼は、もう大人なんだと思いました。
発達障害?というくくりに入れられるのが
嫌なんだと思いました。

自分のしたいことをして、
一人で歩きたい時だってあるんだよね。
○君、いい子だねぇ。
○君、自閉症の子の中では、いい方だよ。
おとなしいし、かわいいし。素直だし。
人は、無責任に君のことを評価するけど、

僕は、僕だ!と叫んでいるんだよね。
「自我」の目覚め。
ダメな母は、君から「自我」を奪っていたのかもしれないね。
20分くらい経ちました。
涙でイルミネーションがゆらゆらとぼやけて見えます。
その中に、黒いはっきりした点が、近づいて来ました。
○です。○が戻ってきたのでした。
○は、何にも言わず、私の手を取り、
静かに歩きだしました。

そうだね。
今までは、君の手を取って歩いていたけれど、
これからは、私が手をひかれる番だね。

目の前に、ぱっと広がる景色。
○が私に見せたかったもの。
それは、宝石のように、輝く夜の街の景色でした。
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