2月11日は今年初めての就学相談会です。
相談会が近づいてくると、やっぱり落ち着かなくなります。
「かわいい子に普通学級を旅させ」たいと願う親の気持ちを後押しするには、どうすればいいのか、何を伝えればいいのか、分からなくなります。
ひとりの子どもにとっては、唯一の普通学級へのチャンスかもしれません…。
一人の子どもの、一度きりの「子ども時代」の「居場所」が左右されること。
それは、私の中の「8歳の子ども」にとって、一生を左右される怖さそのものです。
その居場所によって、桁違いの出会いの数と、膨大な量の観察学習の機会と、希望と、一生を左右されるのです。
◇
子どものころ、わたしはいつも怒っていた。
ここも違う。
ここも違う。
こんどは大丈夫かと思ったのに、
やっぱり、違う。
いつも怖い夢をみて、
目覚めても追いかけられて生きるのではなく、
ゆっくりじぶんをすきになれる子ども時代をあこがれた。
子どもが好きで、
子ども同士の関係が好きで、
どの子も安心してめぐりあえる世界を探した。
心からの安心できる子ども時代の感覚を味わったのは23歳のとき。
4さいの子どもたちと、ただ遊び、ただ散歩し、
いっしょにお昼を食べて、話して、笑って、遊んだ。
ひとりひとりの顔や声をたどると、三十人の中に、一人だけ歩くのが遅くて、言葉を話さない女の子がいたと思い出す。
4さいから5さいへの四季を、同じ枝に咲く花のように、
いっしょに雨をあび、陽をあび、仲間のまなざしや笑い声をあびて、
私自身が二十年の時を越えて取り戻したもの。
ああ、あの一年は、そういう一年だったと、
あの子どもたちの顔を思い出すと、耳元で声が聞こえる。
探したいものは何か。
大切にしたいものは何か。
自分の希望が何か、分からないのは、さびしい。
あの一年があってよかった。
あの一年のおかげで、自分がなくしたものがなにか、よくわかった。
子どもだった私が「違う」と感じるものの正体がわかった。
あの一年がなかったら、
わたしは多くの子どもや親と出会い損ねてきただろう。
◇ ◇ ◇
《アランブラの宮の壁の》 岸田衿子
アランブラの宮の壁の
いりくんだつるくさのように
わたしは迷うことが好きだ
出口から入って入り口からさがすことも
《詩集「あかるい日の歌」より》
◇ ◇ ◇
「わたしは迷うことが好きだ」
そんな言葉があるとはじめて知った。
「わたしは迷うことが好きだ」
もっと前に、そう思えるようになれればよかった。
たとえ迷っているときにも、なくならない安心があるらしい。
言葉を話せるとか、話せないとかに関係なく、
安心のぬくもりは、手のひらが覚えていたりする。
目を閉じれば、気配が聞こえることもある。
わたしがたいせつな誰かであったこと。
たいせつな誰かのわたしであったこと。
わたしとたいせつな誰かは、
つながっている。
迷って、探して、寄り道している、そのあいだも、
大切なものは、いつもここにある。
8歳のあの日からずっと、わたしが探してきたものと、
6歳の子を普通学級に通わせるために、親が探しているものは、
同じものだと思う。
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