(続・クリスマスのハクテン)
4. 《うーれとカズキツネ》
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
《うーれとカズキツネ 》
むかし、うーれという
ひとりぼっちの女の子がいました。
うーれは、生まれたとき、とても小さくて
他の赤ちゃんの半分も体重がありませんでした。
だからお母さんとも離されて、
保育器の中でひとりぼっちで過ごしていました。
家に帰ってからも、うーれはいつもひとりでした。
身体が弱かったので、4才になっても、5才になっても、
幼稚園には行きませんでした。
うーれはいつも家の中でひとりで遊んでいました。
初めて学校に行った日、とっても大きな体育館いっぱいに、
たくさんの子どもたちがいたので、うーれはびっくりしました。
うーれが体育館のすみでじっとしていると、
一人の女の子が近づいてきて、手をつないでくれました。
うーれの生まれて初めての友だちでした。
女の子のなまえはみっちゃんと言いました。
うーれは、学校に行くときも、帰るときも、
みっちゃんと一緒に手をつないでいきました。
教室でもうーれはいつもみっちゃんのとなりの席でした。
ある朝、近所の犬にほえられたうーれは、
恐くて動けなくなってしまいました。
足が動かなくて泣いているうーれに、
みっちゃんは言いました。
「だいじょうぶよ。ちこくしても、
がっこうはなくならないから、
だいじょうぶ。ゆっくりいこうね」
みっちゃんはうーれが泣きやむまで、
じっと待っていてくれました。
それからうーれとみっちゃんは
二人で手をつないでちこくしました。
先生は、みっちゃんの話を聞いて、
二人の頭をなでて言いました。
「それはたいへんだったわね。こわかったでしょう」
はじめは大きすぎて恐かった学校も、
だんだん楽しく思えるようになってきました。
いつも自信がなくて、びくびくしていたうーれのとなりで、
みっちゃんがいつも言ってくれました。
「だいじょうぶだよ、うーれちゃん」
「うーれちゃんはうーれちゃんのままでだいじょうぶ」
「だ・い・じ・ょ・う・ぶ・だ・よ」
うーれは、きんちょうすると、つめをかむくせがありました。
それを、あかちゃんみたいと、男の子たちにからかわれたとき、
みっちゃんは言いました。
「だいじょうぶよ。うーれちゃん。
だいたい赤ちゃんって歯がはえてないんだから、
つめをかんだりできないでしょ。
あの子たち、そんなこともしらないんだから」
そう言われて、うーれはなんだかほっとしました。
うーれがくり上がりのたしざんができなくて泣いてたときも、
みっちゃんは言ってくれました。
「だいじょうぶよ。うーれちゃん。
うーれちゃんはたしざんより、お花がすきなんだから」
そう言われて、うーれは本当にそうだと思いました。
「うん、あたしはチューリップもタンポポも、
あじさいもかすみ草も、ひまわりもモクレンも大好き。
だから、だいじょうぶなんだぁ」
夏休みも、うーれは毎日みっちゃんと遊びました。
一緒に公園に行ったり、プールに行ったりしました。
でも、ある日、みっちゃんがいなくなりました。
うーれはまた一人ぼっちになってしまいました。
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