ワニなつノート

うーれとカズキツネ(その5)


うーれとカズキツネ (その5) (続・クリスマスのハクテン)



「みっちゃんはどこにいったですか?」
カズキがノートをのぞきこんで聞く。

「どこにいったのかなぁ」

「みっちゃんはおしえてくれなかったですか?」
「うん。あの日、いつものように、
みっちゃんの家に遊びに行ったら、かぎがかかっていて、
誰もいなかったの」

「お出かけですか?」
「うん…。次の日も、次の日も、次の日も、
鍵がかかったままだったの」

「みっちゃんは、まいごになったですかねぇ」

そうか…、みっちゃんも迷子になっちゃったんだ。
あのとき、わたしのこころが迷子になったように、
みっちゃんも、わたしがいなくなって、寂しかったろうな。

5年がすぎて、わたしは、いまはじめて、
あの時のみっちゃんの気持ちを考えてる…。
「そうね、そうかもしれないね。
ちゃんと説明してもらえないと、
子どもはいつも迷子になっちゃうんだよね」

「かえってこなかったですか?」
「夏休みの最後の日、みっちゃんの家の玄関があいてたの」

「かえってきたですか?」
「ううん、出てきたのは知らない女の人で、
みっちゃんはもう引っ越しましたって…」

「そうですか…」
「うん、それでわたしも迷子になったんだ…」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ワニなつ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事