Hideは「障害」があるために、小学校入学のときには、一言も話さず、
読み書きもできませんでした。
そのため、Hideと両親は、
「市教委や学校の偏見や固定観念から生み出される障壁、
そして社会の仕組みや慣行を反映した無数の障壁」に
立ち向かわなければなりませんでした。
それらの障壁を乗り越えることは、
大多数の人々の目には実現不可能なものとして写っていたでしょう。
その頃、Hideが高校生になる姿や、Hideが一人暮らし(介助者付き)を
している姿想像できた人はいなかったでしょう。
母親でさえ、はっきりと「将来のHide」の生活を
イメージできた訳ではなかったでしょう。
ただ、専門家が決めた「障害児の幸せへの道」はまったく信用できなかったし、
言葉で伝えてくれる大人の障害者たちの「生き方」を、
Hideにも実現させてあげたいと願ったのでした。
そこには、確かな道があった訳ではありません。
だからこそ、Hideと両親のたどってきた「ふつうの道」は
限りなく価値があるのだと思います。
ふつうに小学校の6年間を過ごし、ふつうに中学校の3年間を過ごし、
苦労しながら3年間の浪人生活を過ごし、
ふつうに定時制高校の4年間を過ごしてきたのです。
今も言葉をしゃべらず、文字の読み書きもせず、
一人で歩くことはできるけれど、食事、トイレ、お風呂、買物等の
生活全般に介助が必要なHideが、
家を出て、地域の中で、ごくふつうの生活を過ごしていることは、
とてつもなくすごいことだと思います。
そうした生活を2年間、積み重ね、
先日ようやく「他人介護料厚生大臣特別基準」が認定されたのです。
単純に言えば、これで一生地域で自立生活を続けていく道が開けたのです。
親の都合や行政の都合で施設に入れられることはないのです。
自分の生活を、自分で生きていく道が開けたのです。
Hideは他人介護を受けながら地域で生きていくという
Hideの生き方を国に認めさせたということなのです。
それはまた、Hideの思いを尊重してきた親の育て方を、
国が認めたことでもあります。
Hideの思いを大切にして育ててきたその親の育て方を認め、
親から社会(国)がHideの生活の保障を引継ぎ「認定」したと言えます。
しかもHideのような「重度の知的障害者」と言われる人の、
「他人介護料厚生大臣特別基準」は、「史上初」のことです。
これまでは、「身体障害者」にしか認定されてこなかったのです。
だから、これは、ひとりHideの当たり前の生活の実現のすごさではなく、
これからその道をめざすすべての親子に希望の光なのだと、私は思います。
これから先、今年も、来年も、10年後にも、
生まれてくるすべての障害をもった子どもたちの希望になるはずです。
今までは、Hideも両親も、見えない星の光を、
きっと見えると信じてきたのです。
そしてこれからそれを目指す親子には、それがどんなに困難な道に思えても、
星の光は見えるのです。
そう、Hideは星になったのです。
まだピンピン生きているけど、星になったのです。
(秀が「他人介護料厚生大臣特別基準」を認定されたことを、
宣伝したいのですが、それがすごいことだというのが、なかなか伝わりません。
そもそも「他人介護料厚生大臣特別基準」が分かりにくいのです。
私も詳しい中身を知っている訳ではありません。
知り合いでそれを認定されたのは、康治と秀の二人だけ。
康治は「身体障害」だったし…。
とにかく、「知的障害者」には認定されていない、
ということだけは何十年と耳にしてきました。
で、「他人介護料厚生大臣特別基準」についての説明は、
これから調べるとして、いま私が思っている「すごさ」を書いてみました。)
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