政府は、障がいのある人の権利条約の批准とこれに対応する国内法整備に向け、2010年6月29日、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」を閣議決定し、これを受けて内閣府の障がい者制度改革推進会議は、障害者基本法の抜本改正のための「障害者制度改革推進のための第二次意見」(以下「第二次意見」という。)を同年12月17日に取りまとめた。当連合会は、こうした障害者基本法の抜本的改正の方向を基本的に評価し、同日付けで「障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案の提言」を公表している。
ところが、本年2月14日に、内閣府から障がい者制度改革推進会議に提出された「障害者基本法の改正について(案)」は、障がいのある人の権利条約はもとより、上記閣議決定及び第二次意見に沿って忠実に立法化を図ったものとは認められず、到底権利条約が提示する人権の国際水準に到達したものとは言えない。
とりわけ、以下の4点については、障害者基本法の改正内容として明記することが必要不可欠である。
1 障がいのある人を福祉施策の対象(客体)として位置付けるのではなく、権利の主体であることを明確にし、障がいのある人が必要な支援を受けた自己決定に基づく社会参加の権利と自ら選択する地域社会で生活する権利を有することを確認すること。
2 障がいのある子とない子が同じ場で共に学ぶ教育を原則とし、本人ないし保護者による統合教育と分離教育の自由な選択を保障すること。
3 精神障がいのある人の不必要な長期入院を解消し、地域生活への移行を推進するとともに、医療における適正手続を制度化すること。
4 施策の推進を徹底させるため、内閣府に設置される障がい者政策委員会及び都道府県等に設置される審議会等の機関に加え、市町村にも同様の機関の設置を義務付けるとともに、これらの機関はその過半数を障がい者団体の代表やその関係者が構成すべきとすること。
当連合会は、障害者基本法の改正にあたり、以上の諸点を含め、上記閣議決定及び第二次意見を踏まえ、かつ当連合会の提言の趣旨に沿った抜本的な改正を強く求めるものである。
2011年(平成23年)2月18日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
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