《知的障害児の高等教育を考える》(その1)
今まで、考えもしなかったことを考えてみようと思う。
テーマは「知的障害児の高等教育」です。
「0点でも高校」と言いながら、私はその先を考えたことがありませんでした。
高校卒業後に「聴講生」として大学に行った子どもたちの話は聞いてきました。
なぜ「聴講生」かといえば、受検が難しくて合格できないから。でも「聴講生」なら、大学生活を楽しむこと、同年代の仲間と出会うことができる。そう思ってきました。
100人のうち2~3人ですが、短大や専門学校に進学した子もいます。「知的障害」といっても「軽い」子はある程度点数も取れるから、と思いました。
どちらにしても、ひらがなも書かず、ことばをしゃべらない「障害児」の「高等教育」を、私は考えたこともありませんでした。
その「問い」をはっきりと自覚したこともありません。
かろうじて思い出せるのは、篠原先生の言葉です。
篠原先生は視覚障害、聴覚障害、身体障害の学生との交流を書いています。
その篠原先生も、知的障害の学生の入学については実現していないのだから、大学と「知的障害」は別なのだと、私は思い込んできました。
それが私の「限界」でした。
そして、それが私の「差別」だと、いま身に染みて思います。
きっかけは、前川喜平さんと寺脇研さんの言葉です。
とりあえず、本に書かれていた言葉を、そのまま紹介します。
◇
■《前川》知的障害のある人でも、その人にふさわしい高等教育あるいは継続教育が受けられるような、そういう仕組みがあってしかるべきだと、私自身は考えています。
■《前川》…一人ひとりが生きたいように生きられるようになるためにも、高等教育で学びたいという意欲と能力のある子どもには、その機会が与えられるべきだと思っています。
「能力」といっても、それは一人ひとり異なっています。
ですから、それぞれの能力に応じた教育の場、学習の場が許されるべきだと思うですね。
先ほども言いましたが、知的障害のある子どもにも、高等教育機関が用意されてしかるべきだと思うんです。
■《寺脇》知的障害のある子どものための高等教育の場をつくるという考えに、私も賛成なんですよ。
知的障害のある人は、より上級の学校になど行くわけがないという思い込みが、こういう発想を排除しているわけです。
「いつでも、どこでも、誰でも学べる」というのが、生涯学習の考え方ですが、それで言えば、障害があろうとなかろうと、そのための環境づくりは、やらなきゃいけないことなんです。
■《寺脇》…あらゆる障害に関してですが、いわゆる健常者には社会教育や生涯学習の場が、いろいろ用意されているのと同様に、障害者にも、そうした場をつくっていかなくてもいけないと思うのね。
また、障害者が学校だけでなく地域の中で健常者と共に学んだり活動したりする場も必要です。
■《寺脇》…知的障害者が地域の中で健常者とともに生きていくための学びの場は、学校にも地域にもまだまだ足りない。
ましてや、前川さんの提案する「知的障害のある人でも、その人にふさわしい高等教育が受けられるような仕組み」は全国的に見てまったくといっていいほど用意されていないのが現実です。この問題を考えていくと、学びの場を失ってしまう人の多くが、知的障害のある場合なんですね。
(『これからの日本、これから教育』
前川喜平・寺脇研 ちくま新書)
◇
ほんとに、すごいなぁ~~。
私は、「知的障害のある人でも、その人にふさわしい高等教育が受けられるような仕組み」なんて、一ミリも考えたことがなかったなぁ。
「知的障害のある人は、より上級の学校になど行くわけがないという思い込みが、こういう発想を排除しているわけです」
まったくその通り。
その思い込みを今日まで持ち続けてきたのは、私でした。
(つづく)
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