TPP内部告発 情報公開と説明求める (2013/12/19)
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内部告発サイトのウィキリークスが今月、環太平洋連携協定(TPP)に関する第2弾の機密文書を公開した。ベールに包まれた秘密交渉で、米政府が強引に交渉を主導する内実が浮かび上がる。交渉は越年するが、日本政府は国民の知る権利を無視したまま無理難題を丸のみする愚を犯すべきではない。情報公開と説明は政府の責務だ。
この文書は、交渉参加12カ国の首席交渉官による会議が米国で開かれた11月末の時点で、参加国の一つが記録用に作成したものとみられる。最初に強調しているのは米国が各国に強い圧力をかけて合意に突き進もうとしていることだ。しかし、知的財産や医薬品、投資など主要な部分で対立点が残り、ほとんどの分野で溝が存在していると分析する。
実際、その後、シンガポールで開かれた閣僚会合も文書に指摘されたような首席交渉官段階の対立を解消できず、物別れに終わった。全体会合だけではなく、2国間などで繰り広げた関税撤廃などの交渉も不調に終わった。政治的な判断を行える閣僚レベルでも乗り越えられないほどの意見の相違があったことを裏付けている。
問題は、その相違点が国民に明らかにされていないことだ。各国の主張や対立点は、これまでさまざまなルートで漏れ伝わる情報を積み重ね大まかな構図として明らかにされてきた。今回のウィキリークスの文書もその一つだ。しかし、各国政府は交渉の秘密を盾にして詳しい内容の開示を拒んでいる。
TPPは関税撤廃で国内農業に大きな打撃を与え、規制緩和などを通じて国の姿を変えかねない非常に危険な側面を持つ。交渉で何が問題になって、政府が何を主張しているのか、政府は国民に丁寧に情報公開をする義務がある。国会決議も国民への十分な情報公開と国民的議論を促している。情報不足に対する懸念は交渉参加前から指摘してきたが、その恐れが現実のものになっている。
情報の不足がもたらす悪しき前例がある。1993年末、当時のウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)の最終盤で日本政府は突然、度重なる国会決議、国民の反対運動などがあったにも関わらず、米市場開放を決めた。毎年70万トンを超す米が輸入されているが、政府は最後まで秘密交渉を貫き、国民の知る権利を軽視した。その後、世界貿易機関(WTO)で繰り広げられたドーハラウンドでは、そうした反省に立って、一定の情報公開に務めたはずだ。
国民主権は、憲法の最も大切な柱である。国民の知る権利と報道の自由はその土台だ。特定秘密保護法の論議などをみると、安倍政権はその根幹を軽視しているとしか思えない。TPPは国家の針路を左右しかねない交渉だ。国民とその負託を受けた国会が、正確な判断を下せるようにするために、政府に情報開示と説明責任を求める。
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内部告発サイトのウィキリークスが今月、環太平洋連携協定(TPP)に関する第2弾の機密文書を公開した。ベールに包まれた秘密交渉で、米政府が強引に交渉を主導する内実が浮かび上がる。交渉は越年するが、日本政府は国民の知る権利を無視したまま無理難題を丸のみする愚を犯すべきではない。情報公開と説明は政府の責務だ。
この文書は、交渉参加12カ国の首席交渉官による会議が米国で開かれた11月末の時点で、参加国の一つが記録用に作成したものとみられる。最初に強調しているのは米国が各国に強い圧力をかけて合意に突き進もうとしていることだ。しかし、知的財産や医薬品、投資など主要な部分で対立点が残り、ほとんどの分野で溝が存在していると分析する。
実際、その後、シンガポールで開かれた閣僚会合も文書に指摘されたような首席交渉官段階の対立を解消できず、物別れに終わった。全体会合だけではなく、2国間などで繰り広げた関税撤廃などの交渉も不調に終わった。政治的な判断を行える閣僚レベルでも乗り越えられないほどの意見の相違があったことを裏付けている。
問題は、その相違点が国民に明らかにされていないことだ。各国の主張や対立点は、これまでさまざまなルートで漏れ伝わる情報を積み重ね大まかな構図として明らかにされてきた。今回のウィキリークスの文書もその一つだ。しかし、各国政府は交渉の秘密を盾にして詳しい内容の開示を拒んでいる。
TPPは関税撤廃で国内農業に大きな打撃を与え、規制緩和などを通じて国の姿を変えかねない非常に危険な側面を持つ。交渉で何が問題になって、政府が何を主張しているのか、政府は国民に丁寧に情報公開をする義務がある。国会決議も国民への十分な情報公開と国民的議論を促している。情報不足に対する懸念は交渉参加前から指摘してきたが、その恐れが現実のものになっている。
情報の不足がもたらす悪しき前例がある。1993年末、当時のウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)の最終盤で日本政府は突然、度重なる国会決議、国民の反対運動などがあったにも関わらず、米市場開放を決めた。毎年70万トンを超す米が輸入されているが、政府は最後まで秘密交渉を貫き、国民の知る権利を軽視した。その後、世界貿易機関(WTO)で繰り広げられたドーハラウンドでは、そうした反省に立って、一定の情報公開に務めたはずだ。
国民主権は、憲法の最も大切な柱である。国民の知る権利と報道の自由はその土台だ。特定秘密保護法の論議などをみると、安倍政権はその根幹を軽視しているとしか思えない。TPPは国家の針路を左右しかねない交渉だ。国民とその負託を受けた国会が、正確な判断を下せるようにするために、政府に情報開示と説明責任を求める。