「誰でもできる仕事」は、やればやるほど貧困になっていく
http://www.bllackz.com/2013/12/blog-post_11.html
2013年12月11日 Darkness - ダークネスより転載
日本では非正規雇用が2000年頃から急拡大し、働いても働いても生活が楽にならずに追い込まれる人が増えてきた。こういった人たちのことを「ワーキング・プア」と呼ぶが、これはアメリカから直輸入された言葉だ。どんなに働いても生活ができないのは、言うまでもなく賃金が低いからだ。
アメリカで低賃金労働者というのは真っ先に挙げられるのはファーストフードの店員や、ピザの配達員だ。あるいは、ウェイターやウェイトレスや皿洗い等の外食産業に関わる人たちもまた低賃金の代表でもある。
それ以外にも工場の組み立て工員に見られる単純労働、清掃作業員、レジ係も、どんなに真剣に働いても賃金が低くて生活が豊かになることはないと言われている。
こういった労働者は失業者とは違うので、「仕事がないよりはマシ」だと言われている。しかし、病気やリストラや職場の倒産によって、翌日から生活破綻の可能性もある。どんなに必死で働いても、底辺ギリギリの生活者である。
■アメリカはワーキング・プアを量産する社会に
アメリカの貧困層はすでに5000万人を超えているとウォールストリート・ジャーナルは報じているが、この5000万人の多くがオバマ政権になってから上の生活レベルに行くのではなく、下の生活レベルに落ちている。
最初は貧困層であっても、努力や才能で成り上がることを「アメリカン・ドリーム」と言っている。実際のところアメリカン・ドリームをつかめる栄光の人はとても少なくて、多くの人は逆にアメリカン・ナイトメア(アメリカの悪夢)の方に落ちているというのは統計を見ても分かる。アメリカは金融緩和で株式市場とその周辺だけは景気回復しているのだが、株式とはまったく何も関係ない国民の多くは追い込まれたままである。
この景気回復で雇用は増えているのだが、その雇用の多くが最初に挙げたファーストフードの店員のようなものばかりであり、これからも成長が見込まれる職業もまた、こういった低賃金のものばかりだ。
つまり、アメリカはワーキング・プアを量産する社会になっており、貧困層は貧困から抜け出せないまま人生を終える可能性が高まっている。
オバマ政権はこういった人たちの保護や救済を訴えて、2013年12月28日に切れる緊急失業保険制度の延長を求めている。しかし、共和党は「自助努力が不足している労働者の方が悪いのだから、延長などする必要はない」と慎重な姿勢を崩していない。
アメリカは身分制度などないのだから、努力したらアメリカン・ドリームをつかめるはずだという理想論は未だにアメリカ人に根付いている。
確かにアメリカン・ドリームをつかめる人は少数であっても存在するから、その理想論は嘘ではない。宝くじは買っても一等が当たらないが、それでもどこかで当たっている人がいるのと同じである。
■コスト削減のために、人件費が削減されていく
資本主義社会の中では、すべての企業が競争に晒されるのだが、競争に打ち勝つには商品やサービスの価格は常に切り下げられる方向に向かう。それはすなわちコストの削減をするということであり、コストの削減のためには人件費の削減をするのが最も効果的なアプローチになる。
要らない人員を切り捨て、給料が下げられれば出費が減るので、その分だけ商品やサービスの価格は安くすることができるようになる。
だから、誰にでもできる仕事であるウェイトレス、皿洗い、レジ係、工場の単純労働、清掃員、小売り店の販売店等の仕事はどんどん最低賃金に近づき、場合によっては最低賃金以下の賃金に落ちていく。だから、働いても働いても生活は楽にならず、黙って自分の手を見つめて「どうなっているのだ」と呆然とするワーキング・プアの人生に落ちてしまう。
職業に貴賎はないが、誰にでもできるワーキング・プアの仕事というのは価値が非常に低く、世間はその仕事を評価していない。つまり、「スキルのいらない、つまらない仕事」であると思われている。もちろん、皿洗いにもスキルが要るが、そのスキルは世の中に重要なスキルではなく、言わば「時代遅れのスキル」と世間は見なす。「スキルがない」「あっても時代遅れ」というのは、資本主義の社会では価値がない。それがゆえに「時代遅れ」を続けていると、どんどん困窮してしまう。
■「時代遅れ」の仕事では、いずれ窮地に落ちていく
アメリカでは2013年12月5日に、ファストフードチェーンの従業員たちが賃金引き上げのデモを行っている。オバマ大統領もまたそれに賛同しているのだが、企業側・経営者側は真っ向から反対して実現する見込みは少ない。恐らく、資本主義の性格からすると、どんなに一時的に対処が成功したとしても、最終的にはまた最低賃金以下の賃金に落ちていくことになるはずだ。
「価値のないものは安い」というのは商品だけではなく、労働にも当てはまるからだ。これはアメリカだけの問題なのだろうか。もちろん、違う。日本でも、欧州でも、中国でも、東南アジアでも、まったく事情は同じだ。「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事を続けていたら、それ以上の発展性はまったくない。どんどん追い込まれて窮地に落ちていく。
日本では消費税がアップされてインフレになっていくことは約束されているが、賃金が上がるかどうかは約束されていない。
安倍政権は経団連に賃金を上げるように異例の要請を行っている。これに応えられるのは大企業のみだ。中小企業ではむしろコスト削減等のしわ寄せを受けて、リストラや賃金下げが行われるのではないかと言われている。アベノミクスは普通の国民には何ら恩恵を与えていないのは、2013年9月時点で159万911世帯となり、過去最多を記録しているのを見ても分かる。
高齢者や母子家庭が追い込まれているのだが、こういった人たちが生活保護から抜け出すためには仕事が必要だ。しかし、その仕事は「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事である可能性が高い。それは、貧困から抜け出せる足がかりになるだろうか。恐らく、ならない。「誰でもできる仕事」は、やればやるほど貧困になっていく。なぜなら、「誰でもできる仕事」は価値がないと社会は見ているからだ。そして、価値がないものは叩き売られる。
そんなところで長く時間を潰していれば、どんどん人生を消耗してしまう。それが資本主義の残酷な一面だ。あなたの仕事は、価値があると思われているだろうか?そうでないのであれば、今はそうではなくても、いずれあなたもワーキング・プアに落ちて行く。やればやるほど貧困になっていく。これは必然的な世の中の動きである。
http://www.bllackz.com/2013/12/blog-post_11.html
2013年12月11日 Darkness - ダークネスより転載
日本では非正規雇用が2000年頃から急拡大し、働いても働いても生活が楽にならずに追い込まれる人が増えてきた。こういった人たちのことを「ワーキング・プア」と呼ぶが、これはアメリカから直輸入された言葉だ。どんなに働いても生活ができないのは、言うまでもなく賃金が低いからだ。
アメリカで低賃金労働者というのは真っ先に挙げられるのはファーストフードの店員や、ピザの配達員だ。あるいは、ウェイターやウェイトレスや皿洗い等の外食産業に関わる人たちもまた低賃金の代表でもある。
それ以外にも工場の組み立て工員に見られる単純労働、清掃作業員、レジ係も、どんなに真剣に働いても賃金が低くて生活が豊かになることはないと言われている。
こういった労働者は失業者とは違うので、「仕事がないよりはマシ」だと言われている。しかし、病気やリストラや職場の倒産によって、翌日から生活破綻の可能性もある。どんなに必死で働いても、底辺ギリギリの生活者である。
■アメリカはワーキング・プアを量産する社会に
アメリカの貧困層はすでに5000万人を超えているとウォールストリート・ジャーナルは報じているが、この5000万人の多くがオバマ政権になってから上の生活レベルに行くのではなく、下の生活レベルに落ちている。
最初は貧困層であっても、努力や才能で成り上がることを「アメリカン・ドリーム」と言っている。実際のところアメリカン・ドリームをつかめる栄光の人はとても少なくて、多くの人は逆にアメリカン・ナイトメア(アメリカの悪夢)の方に落ちているというのは統計を見ても分かる。アメリカは金融緩和で株式市場とその周辺だけは景気回復しているのだが、株式とはまったく何も関係ない国民の多くは追い込まれたままである。
この景気回復で雇用は増えているのだが、その雇用の多くが最初に挙げたファーストフードの店員のようなものばかりであり、これからも成長が見込まれる職業もまた、こういった低賃金のものばかりだ。
つまり、アメリカはワーキング・プアを量産する社会になっており、貧困層は貧困から抜け出せないまま人生を終える可能性が高まっている。
オバマ政権はこういった人たちの保護や救済を訴えて、2013年12月28日に切れる緊急失業保険制度の延長を求めている。しかし、共和党は「自助努力が不足している労働者の方が悪いのだから、延長などする必要はない」と慎重な姿勢を崩していない。
アメリカは身分制度などないのだから、努力したらアメリカン・ドリームをつかめるはずだという理想論は未だにアメリカ人に根付いている。
確かにアメリカン・ドリームをつかめる人は少数であっても存在するから、その理想論は嘘ではない。宝くじは買っても一等が当たらないが、それでもどこかで当たっている人がいるのと同じである。
■コスト削減のために、人件費が削減されていく
資本主義社会の中では、すべての企業が競争に晒されるのだが、競争に打ち勝つには商品やサービスの価格は常に切り下げられる方向に向かう。それはすなわちコストの削減をするということであり、コストの削減のためには人件費の削減をするのが最も効果的なアプローチになる。
要らない人員を切り捨て、給料が下げられれば出費が減るので、その分だけ商品やサービスの価格は安くすることができるようになる。
だから、誰にでもできる仕事であるウェイトレス、皿洗い、レジ係、工場の単純労働、清掃員、小売り店の販売店等の仕事はどんどん最低賃金に近づき、場合によっては最低賃金以下の賃金に落ちていく。だから、働いても働いても生活は楽にならず、黙って自分の手を見つめて「どうなっているのだ」と呆然とするワーキング・プアの人生に落ちてしまう。
職業に貴賎はないが、誰にでもできるワーキング・プアの仕事というのは価値が非常に低く、世間はその仕事を評価していない。つまり、「スキルのいらない、つまらない仕事」であると思われている。もちろん、皿洗いにもスキルが要るが、そのスキルは世の中に重要なスキルではなく、言わば「時代遅れのスキル」と世間は見なす。「スキルがない」「あっても時代遅れ」というのは、資本主義の社会では価値がない。それがゆえに「時代遅れ」を続けていると、どんどん困窮してしまう。
■「時代遅れ」の仕事では、いずれ窮地に落ちていく
アメリカでは2013年12月5日に、ファストフードチェーンの従業員たちが賃金引き上げのデモを行っている。オバマ大統領もまたそれに賛同しているのだが、企業側・経営者側は真っ向から反対して実現する見込みは少ない。恐らく、資本主義の性格からすると、どんなに一時的に対処が成功したとしても、最終的にはまた最低賃金以下の賃金に落ちていくことになるはずだ。
「価値のないものは安い」というのは商品だけではなく、労働にも当てはまるからだ。これはアメリカだけの問題なのだろうか。もちろん、違う。日本でも、欧州でも、中国でも、東南アジアでも、まったく事情は同じだ。「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事を続けていたら、それ以上の発展性はまったくない。どんどん追い込まれて窮地に落ちていく。
日本では消費税がアップされてインフレになっていくことは約束されているが、賃金が上がるかどうかは約束されていない。
安倍政権は経団連に賃金を上げるように異例の要請を行っている。これに応えられるのは大企業のみだ。中小企業ではむしろコスト削減等のしわ寄せを受けて、リストラや賃金下げが行われるのではないかと言われている。アベノミクスは普通の国民には何ら恩恵を与えていないのは、2013年9月時点で159万911世帯となり、過去最多を記録しているのを見ても分かる。
高齢者や母子家庭が追い込まれているのだが、こういった人たちが生活保護から抜け出すためには仕事が必要だ。しかし、その仕事は「誰でもできる仕事」「時代遅れ」の仕事である可能性が高い。それは、貧困から抜け出せる足がかりになるだろうか。恐らく、ならない。「誰でもできる仕事」は、やればやるほど貧困になっていく。なぜなら、「誰でもできる仕事」は価値がないと社会は見ているからだ。そして、価値がないものは叩き売られる。
そんなところで長く時間を潰していれば、どんどん人生を消耗してしまう。それが資本主義の残酷な一面だ。あなたの仕事は、価値があると思われているだろうか?そうでないのであれば、今はそうではなくても、いずれあなたもワーキング・プアに落ちて行く。やればやるほど貧困になっていく。これは必然的な世の中の動きである。