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循環器徴候7 連載 その50

2014-05-30 | 症例集

 今回は症例集です、循環器徴候とそのピットフォールについて考えていきましょう。

 例20 76歳女性 主訴:呼吸困難   進行肺がんにて入院緩和ケアを受けていた。 今回、数日前より労作時の呼吸困難があり、今朝より安静時にも呼吸困難を訴えるようになった。

 臥位で呼吸困難の憎悪があった。 喘息の既往はなし。 

 バイタルサイン:血圧90/70、脈138、呼吸30、体温36,5

 身体所見上、著明な頚静脈怒張を認めた。

 ・ピットフォール   担当医は、肺がんの進行による呼吸不全と考え、血圧低下は脱水による低容量性ショックであると判断し、酸素投与と急速輸血の指示を出した。

 ・その後の経過と解説   指導医により、血圧の呼吸性変動が確認され、吸気時の収縮期血圧は60で、呼気時の収縮期血圧は90であった。 肺がん患者では、がんの心膜浸潤により心タンポナーデを高率に合併することが知られている。 身体所見上、著明な頚静脈怒張を認め、心タンポナーデを考える。 脱水(血管内低容量)では外頚静脈は怒張しない。 この患者では、吸気時10mmHg以上のSBP低下(この患者の奇脈のサイズは90-60=30mmHg)であり、心タンポナーデ、重症喘息などを考慮しなければならない。

 この患者の場合、緊急で心嚢ドレナージが施行され、症状がすみやかに軽快した。

 今回はこの辺で、この症例の詳しい解説は次回に。

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