循環器フィジカル・ケース2
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症例2
80歳男性
主訴:呼吸困難
最近の健診や病院受診歴なし 喫煙歴+
10日前より労作時呼吸困難
5日前より発作性夜間呼吸困難
昨夜より起座呼吸 今朝救急外来受診
顔色が悪く冷汗をかいていた
胸痛無し
バイタルサイン:血圧110/85 脈 140 呼吸数40 体温35.5
SpO2 92% (O2 mask 7L)
収縮期駆出性雑音3/6 late-peaking ejection murmur
最強点は第2肋間胸骨右縁で右鎖骨に放散あり
S2減弱+
動脈触診で、遅脈+小脈pulsustardus et parvusあり
四肢末梢冷たい 冷汗+
前脛骨~足背に浮腫pitting edemaあり、slow edemaであった
心電図:左心室肥大LVH strain pattern
胸部X線写真:両側肺野びまん性にうっ血あり
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ピットフォール
担当医は、左心不全の診断で、ニトログリセリンの持続静注を開始した。
その数分後、血圧が60/45 mmHgへ急激に低下した。
その後の経過と解説
心臓診察より重度の大動脈弁狭窄症critical aortic stenosis (critical AS)による左心不全の診断となる。
心エコー検査により、大動脈弁の高度石灰化・開放制限あり、連続波ドップラーエコーによるA-V pressure gradient の推定では100 mmHgであった。
critical ASではニトログリセリンなどの血管拡張薬の投与で「ショック」になることあり、左心不全で肺うっ血をみる場合、フロセマイドなどの利尿剤の使用が安全である。
浮腫pitting edemaをきたす疾患の鑑別には、pit recovery timeの測定が有用である。
40秒以内のfast edemaであれば、低アルブミン血症(低膠質浸透圧血症)による浮腫であることが多い。
一方、本症例のように、slow edemaであれば、うっ血性心不全などによる浮腫を考える。
最終診断:重度大動脈弁狭窄症による左心不全
症候別“見逃してはならない疾患 | |
徳田安春 | |
医学書院 |
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