前回に引き続き臨床研修プラクティスから頸静脈圧(jugular venous pressure:JVP)による評価のステップについて考えていきましょう。
頸静脈圧(JVP)とは 全身性静脈圧は動脈圧よりはるかに低い。 静脈圧を決定する因子には、血液量と右心系の容量、左心室収縮能がある。 血液量が減少すると静脈圧は減少する。 逆に、過剰な輸液などにより循環血液量が増加すると静脈圧は上昇する。 内頸静脈の拍動の高さ、すなわち頸静脈圧(JVP)は静脈圧を反映する。
JVPは通常、右側の内頸静脈で評価される。 なぜなら、右内頸静脈と右心房は解剖学的に直接つながっているからである。 ただし、内頸静脈は胸鎖乳突筋の下を走行し直視することができない。 そこで、注意深く頸動脈圧拍動と区別しつつ、体表皮膚に伝播される頸静脈拍動を同定する必要がある。 もし内頸静脈拍動を同定できなければ、直視可能な外頸静脈で代用できるが、信頼性は落ちる。
JVPの高さを測るには 内頸静脈が動揺(拍動)する頂上点か、必要なら外頸静脈が虚脱するように見える位置の頂上点をまず見つける。 JVPは通常、胸骨角からの垂直距離で計測される。 胸骨角は胸骨柄と胸骨体との結合部の骨性隆起で、第2肋骨が接合している。
患者の体位に関係なく、胸骨角は右心房より約5cm上方にあることを記憶しておく。 胸骨角から計測した静脈圧の高さ(垂直距離)は、患者の体位によらず一定であり、JVPが胸骨角より4cm以上あるいは右心房より9cm以上上方なら、静脈圧は上昇していると評価する。
JVPと拍動の評価をはじめるときには 病歴より患者の循環血液量を推定し、ベッドや診察台の角度(上半身の傾き)はどれくらいが適当かを考える。 循環血液量がほぼ正常と思われる患者のJVPをみるときには、まず患者が30度の半坐位になるようにベッドの角度を上げ、皮膚表面に伝播される頸静脈拍動を見つける。 JVPは、循環血液量正常の患者で通常はっきりと観察できる頸静脈拍動の動揺や凸凹面の最高点の垂直の高さである。
循環血液量が減少した患者では、JVPは低下していると予想できるので、JVPの拍動がよく見えるようにベッドの角度を下げ、時には0度(仰臥位)にすることもある。 反対に、容量負荷や循環血液量が増加している患者では、JVPは上昇していると予想できるので、まずベッドの角度を上げて評価する。 ベッドの角度を60度、さらに90度まで上げる必要がある。
今回は以上です、次回もJVPについてまとめていきましょう。