前回の続きです。
精神興奮作用を有する不法薬物 「MDMA」
MDMA MDMAは、メチレンジオキシメタンフェタミン(methylenedioxymethamphetamine)の略称で、合成麻薬の一種である。 また、エクスタシー(ecstasyまたはXTC)という通称もある。 精神薬理学では、エンタクトゲン(entactogen:人間どうしの内面のつながりをもたらすという意味)とも呼ばれている。
MDMAの分子構造はメタンフェタミンのそれに類似しており、メタンフェタミンのフェニル基の一部を置換したものと同一である。 しかしながら、覚醒剤とは主だった作用機序が異なり、覚醒剤ではなく麻薬に分類されている。 また、MDMAは、幻覚剤LSD(lysergic acid diethylamideのドイツ語Lysergsaure DeathylamidからLSDと呼ばれる)にも似た「幻覚」症状をきたすが、多幸感や他者との共有感などといった「幻覚体験」を指すもので、幻覚や幻聴を伴うことはまれといわれている。
MDMAの薬理作用と症状 MDMAは脳内セロトニンを過剰に放出させ、多幸感、他者との共有感などをもたらす。 過量摂取により、精神興奮、不安、妄想、気分変調、記憶障害、睡眠障害、注意力困難などの中枢神経症状をきたす。 その他の身体症状として、覚醒剤(アンフェタミンなど)のように、高体温、不整脈、低ナトリウム血症、黄紋筋融解症、急性腎不全などをきたすことがある。
麻薬
狭義の麻薬 歴史上、狭義の麻薬(narcotics)はアヘン剤のことを指す。 アヘン剤とは、モルヒネ、ヘロイン、コデインなど、ケシの実から抽出されるアルカロイドから合成された薬剤のことである。 混迷・酩酊・多幸感などをもたらす。 その耐性と依存性の強さから、麻薬の製造や流通は法律で厳しく規制されている。
広義の麻薬 国際的な麻薬の定義(広義)は、1971年の国際条約「向精神薬に関する条約」で「現在のところ医学的利用価値が認められず、公衆衛生に深刻な害を及ぼす危険性があるとされる薬物」と分類されるものを指す。 中枢神経に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらす薬物のうち、依存性・毒性が強く健康を害するおそれが強い。 一方、わが国の「麻薬及び向精神薬取締法」において麻薬に指定されている種類の薬物は若干異なる。 すなわち、覚醒剤(アンフェタミンなど)・大麻(マリファナ)・THC(テトラヒドロカンナビノール:tetrahydrocannabinol)は麻薬とは別に取り扱われてそれぞれ規制されている。
以上、「薬物」に関しての連載は今回で一旦終了です、次回をお楽しみに、では。