前回の続きで「薬物」を個別に考えていきましょう。
精神興奮作用を有する漢方薬「麻黄」
麻黄(まおう) 麻黄または麻黄湯は漢方薬の一種である。 麻黄は中国原産で、気管支喘息の特効薬として長い歴史がある。 東洋医学では、頭痛・悪寒・発熱・腰痛・関節痛・咳・喘息などの症状の改善に処方されている。 最近、インフルエンザ患者に対してオセルタミビルとほぼ同程度の症状軽減効果があるという研究結果も発表され、話題となっている。
麻黄は、中枢神経系と交感神経系を興奮させる薬理作用を有するエフェドリン(ephedrine)などの植物アルカロイドを含有しており、前回のCaseのように、過量に摂取すると、興奮・妄想・幻覚・異常行動などの中枢神経症状に加え、急激な血圧上昇による高血圧性心不全や高血圧性脳症や致死的頻脈性不整脈をきたすおそれがある。
エフェドリン エフェドリンは、麻黄(エフェドラ:Ephedra)から抽出された植物アルカロイド成分の一種である。 エフェドリンは1885年に、長井長義氏により単離抽出され、その構造式も決定された。 エフェドリンは覚醒剤(amphetamine,methanephetamine)と類似の構造をもち、覚醒剤のように中枢神経系と交感神経系を興奮させる薬理作用を有することが解ってきている。
麻黄からの成分医薬品として、わが国では、エフェドリン(l-ephedrine)、シュードエフェドリン(d-pseudoephdrine)、メチルエフェドリン(l-methylephedrine)、ノルエフェドリン(l-norephedrine)の4種類が医薬品として使用されている。 これらのエフェドラの成分は、薬局で売られているカゼ薬にも微量が配合されているものもある。
2004年までエフェドリンの販売が自由であった米国では、ダイエット(食欲低下作用)、ボディービルディング、ドーピング(エネルギー代謝・心駆出力の増強)、花粉症対策などにも使用されていたが、精神異常、けいれん発作、心不全、不整脈、死亡など副作用報告が多発した。
わが国では従来からエフェドラの成分4種類が医薬品となっており、麻黄やエフェドリンの輸入は、エフェドリン含有サプリメントやお茶類も含めて禁止されている。
今回は以上です、次回も個別に見ていきましょう。