今回は少し複雑ですが。 老化のメカニズムの1つとして、テロメアの短縮による細胞分裂の停止、それに引き続く細胞死が考えられてます。 それならば、このテロメアの短縮を抑えてやれば老化を防げるのではないか、という考えが出てきました。 実際、短縮したテロメアを修復する酵素テロメアーゼの存在が確認されています。 ヒトでは増殖盛んな血液幹細胞、生殖細胞にみられます。 またほぼすべてのガン細胞に存在します。 テロメアーゼをもつ細胞は分裂限界をもたず永久に分裂すると考えられてます。
いくつかの生体外の実験ではテロメアーゼの細胞内導入により、細胞分裂限界の延長が可能となったという報告がされましたが、逆にガンを引き起こすのではないかという懸念もあり、臨床応用にすらいたっていません。
ただし、ほとんどのガン細胞がテロメアーゼをもつことに着目して、テロメアーゼを抑制する抗がん剤の開発が進んでいます。 もしかすると、この薬の開発によってガン治療の成績があがり、長寿へつながるかもしれません。
そしてもうひとつ、老化の原因として活性酸素による酸化ストレスを介した細胞障害が考えられています。 この活性酸素を弱める抗酸化剤であるビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10を大量に投与することによって細胞障害を抑制する試みでいくつかの実験が行われました。 しかしながら現在までのところ、これらの物質の老化抑制に対する効果は証明されていません。
最近の例では、ココアや赤ワインに高濃度に含まれているポリフェノールという物質が高酸化作用が強いということで老化抑制との関係が注目されています。
今回はこのへんで、次回も長寿研究の最前線を紹介していきます。