今回は臨床研修プラクティスから「輸液パーフェクトガイド~どんな病態でも輸液の考え方は同じです~」と題し、一回目にはこれ、「この患者は脱水なの?溢水なの?」を考えていきましょう。
今日は「バイタルサインの解釈のポイント」を考えていきましょう。
重症脱水はしばしば血圧の低下、すなわち低血圧をきたす。 この「低血圧」に、「末梢循環不全」による症状や徴候(気分不良、めまい、尿量低下、意識障害)が加わると、臨床的に「ショック」の状態と呼ぶ。 ただし、「ショック」=「脱水」ではない。
次に挙げる四大原因をつねに念頭に置きながら、ショックの鑑別診断を進めていく。 すなわち、①低容量性ショックhypovolemic shock(脱水:出血)、②血管拡張性ショックdistributive shock(敗血症:アナフィラキシー)、③閉塞性ショックobstructive shock(心タンポナーデ:肺塞栓)、④心原性ショックcardiogenic shock(心筋梗塞:重症心不全)である。
このうち、よく遭遇する鑑別の場面は、単に「脱水による低容量性ショック」のみか、あるいは「敗血症性(血管拡張性)ショック」も合併しているのかという状況であるが、”ショックで頻呼吸(RR>毎分20回)を伴う”場合、常に敗血症の可能性を考慮する。
仰臥位で血圧の低下を認めない症例の場合、体位性低血圧(起立性低血圧)の有無を確認するとショックの鑑別に有用である。 チルトテストtilt testとも呼び、臥位から坐位(または半坐位)にベットを傾けて頭高位を取る。 体位が坐位や起立時に乏血症状を認めると陽性であるが(めまいや気分不良、失神)、3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下、または脈拍数が20以上増加する場合でも陽性とする。
この場合、「血圧低下あり+脈拍増加あり」は通常、血管内低容量hypovolemia(脱水や出血)であるが、「血圧低下あり+脈拍増加なし」は神経原性低血圧(自律神経障害や迷走神経性反射)であることがある。 ただし、ベータ遮断剤などを服用している症例や徐脈性心疾患を有する症例では、脱水でも脈拍増加を認めないことがあるので注意。
また、脈拍の初期評価も重要であり、安静仰臥位状態でも、すでに脈拍数がベースラインから毎分30以上増加している場合には、500ml以上の脱水または出血があると示唆される。 ただし、立ちくらみや失神などの失血による症状は、出血の速度や量に依存する。
今回は以上です、次回も引き続き輸液パーフェクトガイドからお送りします。