さて今回は、栄誉ある他流試合第一号を名乗り上げて、見事に勤めを果たされた小野正博先生の記録第二弾を、小野先生のご承認を得たうえで公開いたします。
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水戸藩道場破り日記②:水戸総合診療の正体は四谷学院だった!?
先週に続いて水戸藩道場破りに行って参りましたので、ご報告いたします。今週は大変難しい患者さんが多く、「ドクターG」の壁にぶち当たった思いがしました。また、先週ご報告できなかった徳田先生の回診風景や水戸協同病院の総合診療科と他の内科との関係についてご報告いたします。
今日は徳田先生と水戸駅で待ち合わせをし、歩いて病院に到着。すぐに着替えて外来へ向かう。
1例目は長期間にわたる両側腹部、両手関節背側周辺の発作性の痛みと左下肢の痺れのある方で、紹介状を3通持参し、「ドクターG」の診察を求めて来院されていた。さっぱり鑑別診断が思い浮かばなかった。炎症所見もなく、器質的疾患では説明が不可能のように思われた。
2例目は睡眠中に舌だけが突っ張るという方で、舌だけに生じた筋けいれんかもしれないと考えたがよくわからなかった。甲状腺疾患をお持ちの方で、検査をオーダーし、フォローとした。
3例目はめまいで、先週に引き続き当初BPPVを疑ったが、血圧が低めであり、降圧剤による血圧低下を伴っていた。降圧剤を減らし、経過観察とした。
4例目、5例目は急性上気道炎であった。
今回は徳田先生が学会出張のため、12時過ぎに外来を終了した。
前回は昼食後午後3時から徳田先生の回診があり、見学させていただいた。研修医が呈示したい症例を選んでプレゼンし、それについて徳田先生が鑑別診断を挙げ、ディスカッションした。呈示された症例は、
①咽頭炎と発熱を繰り返すPFAPA症候群疑い
②側頭動脈炎
③PCI後のMSSA菌血症で右足趾のみにオスラー結節様の皮疹を伴う
といういずれも非常に興味深いものであった。徳田先生は研修医の質問にどんどん答えていく一方で、逆に研修医に質問することはほとんどなかった。非常にリラックスした雰囲気であり、研修医も伸び伸びとしていた。徳田先生はベッドサイドでの診察を重視しておられ、IEでは舌の裏側も見るべきであることなどをベッドサイドで教えていただいた。
水戸協同病院の総合診療科は、多くの大病院の総合診療科とは違い、他の臓器別の診療科と横並びの関係にあるのではない。いわば他の臓器別の診療科と一体化しているのである。例えば、研修医(卒後3年目までの研修医は全員総合診療科所属である)が心筋梗塞の患者を診断し、入院させたとすると、入院後の主治医は循環器がサブスペシャリティーである医師になるが、その下で一緒に患者を担当するのである。それはただ循環器の勉強をするためではなくて、入院中に生じる発熱などの問題に総合診療科として対応するためでもある。患者さんにとっては循環器の専門的な視点と総合診療科としてのジェネラルな視点から常に2方向から診てもらえることになる。これは例えば受験界で言えば「ダブル教育」の四谷学院のようなものではないだろうか?理想的な総合診療のスタイルであると思い、感嘆した。
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以上、小野先生、ありがとうございました!
徳田安春