今日は71歳の誕生日、本来なら計画していた伊勢街道を完歩して伊勢神宮にゴールをする予定だったが、被災地の人たちを思うと足がすすまなくてその計画はストップしたまま、それならと71歳の記念の日は、ひとり静かにのんびりと過ごせるバースデイウォークにしようと、お気に入りの大津市、瀬田川のほとりにある名刹の「石山寺」に行くことにした。
新大阪から東海道線JR石山駅で下車、この駅は今月になって三度目、京阪電鉄石山線に乗り換えて石山寺駅で下車したのが10時55分。
(京都駅を出ると鴨川の桜も満開、車窓から)
そこから瀬田川に沿って石山寺へ向かった。
真っ青な空、さわやかな川風、満開の桜の続く道をのんびりと歩いて石山寺の東大門に着いたのが11時14分、門前広場の満開の桜が迎えてくれているようだった。
石山寺の春は何年ぶりだろうか、もっぱら紅葉の時期に来ていたので新鮮な気持ちで門をくぐった。石山寺は西国三十三カ所霊場の13番札所として知られる名刹、近江八景の「石山の秋月」としても知られ花の寺としても関西ではおなじみ。
しかし、石山寺といえばなんといっても「紫式部」ゆかりのお寺、国宝の本堂内にある「源氏の間」で紫式部は「源氏物語」を書いたと伝えられている。
(国宝の本堂)
石山寺が女性に圧倒的に人気のあるお寺であることは聞いていたが、やっぱり女性の姿が圧倒的に多い。
境内の雰囲気がとにかく優しい、お寺にありがちな窮屈さとか圧迫感がまったくないこと、それに花の寺といわれるだけにさまざまな花が咲き誇っていて散策にも事欠かないこと、観音霊場でご本尊が如意輪観音さんであること等、優しくて穏やかなたたずまいが女性的な雰囲気なのかもしれない。
紫式部、和泉式部、清少納言等女流文学を代表する女性たちが訪れたというし、京都に近かったということで皇族、貴族の参詣はもとより、鴨長明、一休、松尾芭蕉、本居宣長、島崎藤村等も訪れるなど文人にも人気があったらしい。
天平勝宝元年(749)に聖武天皇の命を受けて、良弁によって建立されたと伝えられているが、奈良の東大寺を建立したのも聖武天皇だから何かつながりがあったのだろうか。
階段を上って正面に見える国宝のわが国最古といわれる国宝の多宝塔は実に美しい、あちらこちらで見てきた多宝塔の中でもとびきり目をひきつける。
石山寺は階段を上って伽藍が配置されており、多宝塔からさらにすすむと満開の桜の間から視界が広がる、石山寺でもっとも眺望のきく絶景ポイント、瀬田川を真ん中に琵琶湖が見える。
すぐ左にあるのが月見がうつくしいという月見亭、芭蕉庵も佇んでいる。
紫式部特別展を開催中だったがパスしてさらに散策、ベンチで弁当を食べて休憩したあと再びひとめぐりして
午後1時半、石山寺から瀬田川をさかのぼるように琵琶湖めざしてウォーキング、汗ばむような陽気の中を瀬田唐橋に向かった。
先日、仕事で訪れた時の瀬田唐橋周辺の桜は五分咲きだったがもう満開になっていた。
ここは琵琶湖一周をしたときのスタート、ゴール地点、その後も何度も来ている思い出の地。
合宿をしたSS会館を横目に今度は瀬田川の東側、夕照の道を琵琶湖をめざしてすすむ。
夕照の道は7年前に琵琶湖一周をした時に歩いたコースで当時をなつかしく思い出しながら歩きつづけると近江大橋が見えてきた、その向こうに比叡山も見えてきた。
1.29キロの近江大橋を草津市側から大津の市街地を目指して渡って行く、比叡山がだんだんと近づく。
橋の左が琵琶湖から流れ出る唯一の川、瀬田川。右が琵琶湖、橋の下を観光船が行く、すばらしい景色。
めざすはもう一つの名刹、三井寺に行くつもりにしていたが、広大な三井寺を楽しむには時間的に足らないと思ったので今回は中止、琵琶湖畔のなぎさ公園でのんびり過ごして早めに帰ることに変更した、途中で仕入れた好物のよもぎ餅を食べながら沖行く遊覧船をながめていた。暑いくらいの陽気だったので湖からの風が気持よかった。
大津プリンスホテル前を通りしばらく行くと釣りをしている人がいたのでのんびりと見ていると若い釣り人の動きが変わってきた、あっ、竿先が引いている、釣れたらしい!
時間をかけて慎重に釣りあげるのを見ていたらびっくりした。
大きな獲物だ、自分の左右にいつのまにか何人もの人が集まっていた。メジャーを持っていた釣り人が測った。55センチのブラックバス、それもメタボなやつだ、琵琶湖の魚を栄養にしているのだろう。
奥さんらしい女性がさかんに写真に撮っていたのでこちらも写真で失敬!
すごい、お見事!と声をかけたらうれしそうに笑顔で応えてくれた。
大津港近くまで歩いて切り上げ大津の市街地をJR大津駅まで歩いて新快速で戻ってきた。
こうして71歳の誕生日を雲ひとつない快晴の春の日の滋賀県で迎えた。
本来なら71歳の誕生日は、伊勢神宮で迎えるために伊勢街道を計画して歩いていたが今回の震災のために三月と今月の予定は中止した。
去年の70歳の誕生日は、東海道五十三次のゴール、東京日本橋でウォーキング仲間に迎えられて過ごした。69歳は静岡県のさった峠、68歳は愛知県の東海道・岡崎、それぞれ思い出になる地で迎えた誕生日。71歳を震災の中にもかかわらず無事に迎えられたことを喜ぼう。
さあ、71歳のスタート、どんな1年にするか・・・
71歳だからできること、71歳でもできること
一日一日、一歩一歩、確かに歩いて行きたい。
日野原重明先生が雑誌の今月号に
“与えられた命を大切に、他人のために時間を使ってください”と書かれていた。
亡くなった多くの命の無念さを思うと、少しでも役立つことで生かされている命を使わないと申し訳ないと思う、さて、どう使うか・・・