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<Q&A> コーナリング中、 フロントタイヤが重く感じますが ・・

2019-09-23 01:07:53 | 質問 と 回答 ( Q&A )

【 質問 】

   ( 前略 )
走行練習ができる講習会に参加した時、バンクさせてコーナリング中にフロントタイヤが重く感じました。 そして、バンクさせたままアクセルを開けたら、フロントライヤがまるで浮いたように感じて怖い思いをしました。 どんな調整やセッティングをすればよいでしょうか?
  ( 中略 )
ターンは左右で差はないように思います。 そのターン中にフロントブレーキを使うのは怖さがあります。 リアサスペンションの調整をするべきかなと考えていますが、どうでしょうか。

 
 
【 回答 】

練習走行中、バンクさせてコーナリングしている時に感じた事について、問い合わせをください、ありがとうございます。 また、その時の様子を事細かく確認して、色々と原因を検討されている様子に、オートバイとの良い関係を築きたい気持ちに共感しています。
   
では、今回の問い合わせの内容に対して、私なりの知識を基に参考になりそうな事をお伝えしますので、是非、一度ご検討ください。
 
  
1. 質問では触れてありませんが、フロントタイヤの空気圧不足や フロントタイヤの異常摩耗などが無かったとすれば、フロントサスペンションの設定が適切な状態になっていない可能性が大きく、アクセルを開けていなコーナリング中の挙動だという事から、リアサスペンションの設定等の関与は薄いと思われます。
   
2. ターン中に、フロントタイヤ が重く感じるという事から、フロントタイヤの方向安定性が失われて、タイヤがバンク方向へと必要以上に回りこもうとしている為の様に思われます。 その大きな要因は、ターン中の車高が低過ぎて、方向安定成分の トレールが不足しているためだと思います。
  
 
現状のフロントサスペンションの内容やセッティング状態は分かりませんし、トレッドエンドの “ 摩耗痕 ” の確認もしていないので、はっきりとした原因を特定する事はできませんが、上記の内容のアドバイスは有効だと思います。
  
フロントタイヤに働く力や、トレールの働きなどについては、下記の通り、一通りの説明をお届けしますので、この機会に一度 ご覧になってください。
 
ありがとうございました。

      
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質問にあった[ バンク中の、フロントタイヤの不安定感 ]は、「 トレール(量)」の不足が原因になっている場合が多く、特に 30 ㎞/h 以下の低速域では顕著に発生します。追加の説明として、「トレール(量)」に関する資料を届けますので、この知識を元に、一緒に 解決策を考えていきましょう。

 

『 トレールという考え方 』
   
「 トレール 」とは、フロントタイヤ の “ 方向安定性 ”( タイヤを、向いている方向へと進ませる力・要素 )を支える大切な要素の一つです。 特に、速度が低速の時と、バンクさせてターンをしている時に重要な働きをします。

  
上図は、オートバイでは一般的な フロントサスペンションの形式での 「 トレール 」です。 タイヤの接地面よりも前方に、ステアリングの回転軸と路面との交点があるようになっていて、その二つの距離が トレール(量)です。 この「 トレール 」があるから、特に低速走行時、フロントタイヤは安定します。(方向安定性がある)      
 
 
   
『 変化するトレール量 』  

上図の様な フロントサスペンション ( テスコピック形式と呼ばれています )は、サスペンション の動きによって 「 トレール量 」の大きさが変化します。  

         
上図の 左側は 乗車している時( 1G' 時と呼びます )の トレール量で、右側は ブレーキを強くかけて大きく縮んでいる時 ( 残ストローク時 と呼びます )の トレール量です。 
  
こういう風に、運転の仕方によって 「トレール量」は いつも変化しているのですが、この特性があるからこそ、ライダーは フロントタイヤ の “ 方向安定性 ” をコントロールしやすくなり、直進する場面、ターンする場面など、状況に合わせて 自在に 走行性能を引き出せるのが、このサスペンション形式 ( テレスコピック形式 )の美点の一つで、「 トレール量 」を 自在に変化させられるという優れた特性があるこそ、一般車だけでなく レースの世界でも 50年以上 採用されているのです。      



『 旋回モーメントとトレール量という考え方 』

では、直立している時ではなく、バンクさせて 旋回 している時、フロントタイヤ に働いている 力や要素を考えてみましょう。 特に、低速で タイヤの回転数が低く勢いが少ない状態で考えてみます。( タイヤ・ホイールの回転モーメントが小さい時 )
  
                   

   
バンクしている時、タイヤの 接地面中心は、バンクしている側へとずれているので、その “ ずれ ” の分だけ、タイヤ全体を バンクしている向きへと 回転させようとする力 (モーメント)が働きますが、そういう場面で、「トレール」はタイヤの “ 方向安定性 ” を保つ様に働き、バンクしている向きへと巻き込む様に働く力(モーメント)を 打消し、バランスさせる大切な力・要素です。
  
つまり、バンク中させた ターンの場面では、旋回力(旋回荷重)によってサスペンションが 縮み、「 トレール量 」が減り、方向安定性が減り、旋回性が増しているのですが、そんな場面でも、特に低速時には、 「トレール量」は安定を保つために 最低限以上の大きさを保つ必要がある事が分かります。 ( これが、安定限界トレール量という考え方に繋がります )
  
30 km/h 以下の低速でターンをしている時、それも 大きな荷重によって サスペンションが大きく縮んで時、しかも 深くバンクさせて タイヤに大きな旋回モーメントが働く場面には、「 トレール量 」が十分に残されている事が大切です。
  
が、フロントサスペンション の 状態や、整備や調整の結果によって、ターン中に必要な 「 トレール量 」が確保されていない事が 珍しくなく、そういう車両での ターン、特に低速域での ターン の場面で、フロントタイヤ の安定性が損なわれ、ライダーに不安感を与え、危険な状況に陥っている車両は少なくありません。 これが、“ 足つき性向上 ” と謳って 低車高化 させている車両の危険性であり、フロントサスペンション の 整備や調整をする時、一番気をつける点の一つです。
  
だから、2番目の図で示した様な 「 残ストローク量 」の管理は、整備や調整を行なう場合に気を付ける必要があるのです。



『 バンク角とフロントタイヤの自由度の関係 』

今回寄せられた質問に関係して、バンク走行時に フロントタイヤ に 働いている要素を、もう一つ 紹介します。

              
フロントタイヤは、バンク角によって、左右に向きを変えられる自由度が変わります。 直立時には 最も大きく、極端に深くバンクさせた時には 自由度は無くなり、ほぼ直進状態と変わりない 状態になります。   この 自由度は フロントタイヤにとって大切な要素で、路面状況などに合わせて、常に最適な グリップ性能を発揮させる為に、フロントタイヤは 常に左右に小刻みに方向を変える必要があるのですが、極端に深いバンク角の場合には、必要な 自由度が奪われます。
  
その様に 深いバンク角で走行する場面でも、安定した コーナリング性能を発揮させる為に、「 トレール 」によって安定性を保つ大きな役割をしているのですが、仮に、サスペンションの整備や調整によって 十分なトレール量が確保されていない場合、バンク中、フロントタイヤは 巻き込ませる旋回モーメントと バンク角によって 巻き込めない要素とが 拮抗し合っている状態に陥ります。 今回、質問を受けたような現象は、この様に拮抗した状況が発生している可能性が高いように考えています。
  
その 力の拮抗によって、フロントタイヤは トレッドエンド部(エッジ部)で 路面に強く巻き込まれる様な力を受け続け、重くも感じられ、自然に 速度も低下します。 その状態で アクセルを開けると、フロントタイヤ に掛かっていた荷重が一気に減り、拮抗による巻き込みが解消され、瞬間、フロントタイヤが路面から離れる様な作用を受けたのが、今回の質問の状況だと推測した次第です。

 
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以上の理由によって、残ストローク量の確認と、トレッドエンド部の “ 摩耗痕 ” の確認を まずは お勧めします。 また、それらの状況をご連絡下されば、その情報を活かして 次のアドバイスや知識をお届けしたいと考えています。
 
では、良きオートバイとの日々を過ごし、楽しんでいきましょう。

  
 

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『 トレール・コントロール  ライディング 』
http://gra-npo.org/lecture/ride/trail_controll/trail_con_ride_1.html

 

『 タイヤから診る、ライディング 』http://youkaidaimaou.hatenablog.com/entry/2019/09/18/232348
  
  
 



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