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記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

邂逅忌(小説家・椎名麟三の忌日)【Ⅱ】

2010-03-28 | 人物
私も戦前に生まれ、戦後の荒廃した時代に、父の仕事が成功していたので、小学校4~5年生くらいまでは、その時代としては、裕福な生活をしていたが、戦後の混乱期、父が仕事上であくどい詐欺に引っかかり、一転天国から地獄へ、借金まみれのどん底生活を経験することになった。家や家財は全て抵当で差し押さえられ、収入は途絶え、一家心中をさえ考えたこともあった。そんな時、父の仕事が順調で裕福であった時代には、家にしょっちゅう出入していた人達や、親族までもが、どん底に落ちたときには豹変し、離れていった。父は心労から早世してしまった。私たち子供3人は母の手1つで育てられることになった。毎日寝ずに内職をして育ててくれた。子供時代にそんな人々を見て育ち、人間が如何に弱い、そして、欺瞞に満ちた動物であるかを知らされた。そのような中で、大変な苦労をした母親が、信仰(仏教)に救いを求めるようになったのは自然な成り行きでもあった。私も、子供の頃から母親に連れられて、お寺に行き仏の教を受けた。戦後の誰もが食べるのにも事欠く大変な時代のこと。熱心に信仰をしている人達の多くは、生活上非常な苦労をしている人や、病気で困っている人、その他大きな悩みを抱えている人達であった。人間困ったときの神頼みじゃないが、神や仏への信仰など、何事もなく平穏に暮らしている人が、心底から出来るものではなく、どん底に落ち、地獄を見たときに、初めてそこに光を見出だし、生きてゆく支えとなるのが信仰であることに気づくものだろう。仏の教えから生き方を学び、おかげで、人並みの生活が出来るようになった今、毎日、ただ普通に生きていられることに心から感謝している。
「邂逅忌」の元となった本「邂逅」の字は難しい字だが「かいこう」と読み、“思いがけなく出会うこと。めぐりあうこと”をいう。また、この「邂逅」は、「わくらば」とも読む。たまたま。偶然に。まれに。の意(goo-辞書参照)。
「わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩垂れつつわぶと答へよ」(古今集雑下、九六二、在原行平。意味などは以下参考の※:「在原行平 千人万首」参照)
「わくらば」と言えば、1961(昭和36)年の大ヒット曲で、仲宗根美樹の「川は流れる」(作詞:横井弘、作曲:桜田誠一)を思い出す。
「病葉を 今日も浮かべて 街の谷 川は流れる・・・」
この歌の冒頭に出てくる「わくらば」は「病葉」と書かれている。「病葉」は、病気で枯れた葉。特に、夏、赤や黄に変色して垂れたり縮まったりした葉を言う。大好きな歌だったので歌詞はよく覚えている。
歌はこの後、1番:「ささやかな 望み破れて 哀しみに 染まる瞳に黄昏の 水のまぶしさ」
2番「思いでの 橋のたもとに 錆ついた 夢のかずかず ある人は 心つめたく ある人は 好きで別れて 吹き抜ける 風に泣いてる」
3番「ともし灯も 薄い谷間を ひとすじに 川は流れる 人の世の 塵にまみれて なお生きる 水をみつめて嘆くまい 明日は明るく」と続いて終わる。
仲宗根美樹が、ハスキーな声で気怠い感じで唄うこの歌は枯れて流される「病葉」に喩えて人生を謳ったものであり、なんとも切なく、わびしいが、心にしみる名曲である。
何時までも青々と茂っていて欲しいと願う美しい葉のなかにも病気や虫のために枯れて変色し、川に落ち、さ迷い流されるものがある。人生にも同じようことが起る。誰もが「病葉」のようにはなりたくはないと願うが、人が生きていく上にも「明・暗」様々なことが起る。いや、むしろ、「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」と言われるように、苦の後に楽が、楽の後に苦が来るのが人の一生と言うべきか・・・。
それまでは全く見知らぬ男と女がめぐり合い(邂逅)、愛が芽生えて結ばれるのも、予期せぬ「病葉」に「邂逅」するのも、それは、偶然(邂逅)ではなく運命(天命)と悟るまでには、「川は流れる」の歌の「病葉」のようにずいぶんとさ迷い歩くことになるのだろうな~。「邂逅」と言う字には"しんにゅう"が付いている。明日のある事を信じ、さ迷い歩いているうちに光明にめぐりあうことになるのだろう。この味わいのある歌以下で聞ける。
YouTube - 川は流れる・・・仲宗根美樹 
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=o00Pkw8znAc
「忘却とは忘れ去ることなり、忘れずして忘却を誓こう心の悲しさよ。』」これはNHKラジオドラマ
君の名は』の名台詞。『邂逅とは、めぐりあうことなり』これは私の戯言(^0^)。『忘却』 とか『邂逅』といったかって使われていた良い言葉が、今はどんどん忘れ去られ、使われなくなってしまったね~。
(画像は、神戸にある山陽電鉄本社前に設置されている椎名麟三碑文)

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参考:
※:神戸新聞読者クラブ「自由を求めて 兵庫と椎名麟三」
http://club.kobe-np.co.jp/mint/article/odekake/jiyuuwomotomete20080329.html
※:兵庫文学館/兵庫県ゆかりの作家/椎名麟三
http://www.bungaku.pref.hyogo.jp/cgi-bin/jousetsu/sakka.cgi?id=24
※:椎名麟三 - ウラ・アオゾラブンコ
http://uraaozora.jpn.org/shina.html
※:椎名麟三 とドストエフスキー
http://www.ne.jp/asahi/dost/jds/dost205.htm
※:椎名麟三 『美しい女』論[ PDF]
http://www.kinjo-u.ac.jp/kibunken/document/12_onishi.pdf
※:煙突の見える場所 - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23651/index.html
※:中野書店 古本倶楽部
http://nakano.jimbou.net/catalog/geta_themes.php/gtID/135
※:在原行平 千人万首
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yukihira.html
転向 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%A2%E5%90%91
ジャン・ジュネ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8D
信仰 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E4%BB%B0
第一次戦後派作家- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E6%88%A6%E5%BE%8C%E6%B4%BE%E4%BD%9C%E5%AE%B6
イエス・キリスト -その偉大なる生涯-
http://www.adventist.jp/media/bible/christ/
新潟鐵工所 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E9%90%B5%E5%B7%A5%E6%89%80
新日本文学会 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%96%87%E5%AD%A6%E4%BC%9A
仲宗根美樹 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%B2%E5%AE%97%E6%A0%B9%E7%BE%8E%E6%A8%B9
芸術選奨 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B8%E8%A1%93%E9%81%B8%E5%A5%A8
君の名は - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%9B%E3%81%AE%E5%90%8D%E3%81%AF

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