真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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戒厳令と日韓関係の根本問題と米軍

2024年12月05日 | 国際・政治

 韓国の尹錫悦大統領は3日夜、”野党が多数の弾劾を試み、国政が麻痺状態にある”として、突然「非常戒厳」を宣言しました。

 尹錫悦大統領が、「非常戒厳」を宣言するしなければならないほど深刻な状況に追い込まれているという報道は、日本では全くと言っていいほどありませんでした。だから、私だけではなく、多くの日本人も驚いたのではないかと思います。

 

 ふり返れば、日本の主要メディアは、自民党政権と同じように、5年ほど前、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏が当選を決めた時、日韓関係がぎくしゃくしていた進歩(革新)系の文在寅政権からの政権交代を歓迎し、日韓関係の改善が進むのではないか、と期待したと思います。そしてその後、現実に、日韓関係が劇的に改善したと伝え、さらに関係改善を進めるように求めてきたとも思います。

 でもその後、尹錫悦政権が韓国国民の支持を失っていったにもかかわらず、支持率が低迷している原因を考えるような記事を目にしたことはありませんでした。また、支持率低迷の原因の一つに、日韓関係があることなどは伏せられていたように思います。

 

 戒厳司令部は、国会や政党などの政治活動を禁止し、言論と出版が司令部の統制を受けるとの布告を発表したということですが、こうした宣言の発表は、力の行使であり、韓国の現状を踏まえれば、とんでもないことだと思います。

 尹大統領は、戒厳令を発表した時、”北朝鮮に従う「従北勢力を一挙に撲滅する」”と語ったことが伝えられています。また、解除発表の談話でも”国の機能をまひさせる非道な行為を直ちに中止するよう国会に要請する”と訴えたと伝えられています。

 でも、尹錫悦大統領の「非常戒厳」を宣言を伝える日本のメディアの報道は、大統領の談話に関する内容とは直接関係のない、大統領の妻、金建希夫人のスキャンダルに関するものばかりでした。だから、やっぱり日本の主要メディアは、韓国与野党の対立点や日本も関わる尹錫悦大統領の外交政策の問題点は報道したくないのだろうと思いました。日本のメディアは、意図的に主要な問題を外しているように思ったのです。

 尹大統領が語った「国の機能を麻痺させている」のは、多数意見を受け入れない尹大統領自身であるという側面を見逃してはいけないと思います。民主主義というのは、話し合って妥協点をさぐる考え方であって、多数意見をはねつける尹大統領は、独裁者と言ってもいいと思います。

 韓国国会が、在籍議員の過半数の賛成で「戒厳解除決議案」を議決したことを受けて、”軍が大統領に従わず国会の決定を尊重したことが、大統領の戒厳の翻意に影響を及ぼしたとみられる”と報道されています。だから、国会の迅速な「戒厳解除要求」と軍・警察の理性的な判断が、平和裏に事態を収束させたというのです。もし、軍や警察が、尹大統領の戒厳令を優先して市民に向かっていたら、大変な流血の事態に発展していたと言われているのです。

 

 私は、この戒厳令騒ぎをきちんと受け止め、日本は韓国との外交関係を根本から見直すべきだと思います。こうした独裁的な右派の尹錫悦大統領を歓迎し、関係改善を進めようとした日本の自民党政権や主要メディアの姿勢に問題があったと言わざるを得ません。

 自民党政権には、「政権が代われば歴史問題はちゃぶ台返しだ。日米韓の連携も難しい」という声もあるようですが、もし、尹氏が辞任に追い込まれれば、韓国側が元徴用工や元慰安婦の問題などで再び対決姿勢に転じ、日韓関係が急速に悪化するリスクがあるというのです。

 でも、それは、日本が根本的解決を回避してきた結果だと思います。

 

 この問題の発端は、1965年(昭和40年)に、日本と大韓民国との間で結ばれた「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」(通称日韓基本条約)です。

 この条約で、日韓の国交が樹立され、日本の韓国に対する経済協力が決定されたわけですが、問題は、その際、”日本の対韓請求権と韓国の対日請求権という両国間の請求権の完全かつ最終的な解決”という言葉が強引に盛り込まれたことにあると思います。

 さらに言えば、問題は、アジア太平洋戦争中の元徴用工や元慰安婦の実態や被害の調査、当事者の要求や思いを踏まえることなく、当時の日韓の政権関係者によって、強引に「完全かつ最終的な解決」とされてしまったことにあるといってもいいと思います。

 だから、日本が元徴用工や元慰安婦の問題を「解決済み」と言い逃れる限り、完全な関係改善は望めないと思います。したがって、条約に基づく「日韓関係正常化」というのは、一部の日韓政治家どうしの関係であって、相互の国民の関係は、条約締結後も「正常化」されてはいないといってもいいと思います。

 日本の戦争指導層の思いを受け継いで、靖国神社に惨敗しているような自民党政権の政治家や自民党政権を支える人たちは、日本の植民地支配や戦争の責任を受け入れたくないので、「解決済み」とくり返しているのだと思います。

 その自民党政権の主張を受け入れることによって、日米の支持を得、また、利益を得る道を進もうとするのが、尹大統領と彼を支持する人たちなのだと思います。元徴用工や元慰安婦はもちろん、韓国の多くの国民の要求や思いに背を向けているように思います。

 反共保守の尹錫悦大統領と反共保守の自民党政権の関係強化は、平和的な朝鮮の南北統一を不可能にするのみならず、日韓関係の真の「正常化」も不可能にする、と私は思います。

 

 また、この問題で見逃せないのは、当時の東西冷戦を背景に、アメリカが交渉仲介を行っていることです。私は、そこにアメリカの日韓分裂支配の意図があったのではないかと疑っています。

 トランプ大統領の戦略はわかりませんが、戦後、現在までのアメリカの戦略は、南北朝鮮の統一を阻止し、日韓の間にも介入可能な問題を残すことであったのではないかと思います。

 

 だから、今回の戒厳令騒ぎにも、米軍は何らかのかたちで関わっているのではないかと想像します。韓国軍が実力を行使することを、駐留米軍が知らないということは考えにくいように思うのです。だから、バイデン民主党政権下の米軍が、韓国軍と同意の上、トランプ氏の大統領就任前に、南北朝鮮の統一や韓国からの米軍撤退を不可能にする事態をつくりだそうとしたのではないかということです。あくまでも想像であり、根拠はありませんが…。

 

コメント (2)
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