真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ウクライナ戦争とイーロン・マスク

2025年03月10日 | 国際・政治

 朝日新聞は、”ロシアによるウクライナ侵攻が始まって3年が過ぎた。和平をめぐる外交が動くなか、戦時下に暮らす人びとの思いに、耳を傾ける。”ということで、224日以降、ウクライナ市民の声を掲載し続けています。

 私は、その「市民の声」が、当初から、ウクライナ市民に対する同情を誘い、読者にロシアを敵視する思いを抱かせる意図を持って掲載されていると感じています。それは、自主的なものか、忖度か、それとも何らかの働きかけがあるのかはわかりませんが、アメリカの支配層(DS?)の「戦略」に従っていると思っているのです。

 35に、3人の声が掲載されました。

 アナスタシアさんは、

”ロシアによる絶え間ない爆撃があることや捕虜にされている人がいることが、どれだけおそろしいことかわかりますか。ロシアのよるウウライナ侵攻から3年が経ち、世界の人々は、この戦争を忘れ始めているいるように感じます。第36海兵旅団に所属していた知人のセルヒー・ブセルさん(29)が捕虜にされました。彼が無事に帰ってこっれるように、世界の人に忘れられないように、デモに参加して声を上げ続けています。

 私は南部ミコライウ出身で、今はキーウに住んでいます。ロシアによる侵攻が始まった224日は、キーウの自宅にいました。朝5時に母から電話があり、「戦争がはじまった」と知らされました。

 まさかと、耳を疑いましたが、電話中に自宅の外から爆発音が聞こえました。「ああ、本当に戦争が始まったんだ」と、ショックを受けました。その後友達と一緒に、学校の地下室に設置された避難所に行き、2週間過ごしました。

 出身地のミコライウでは10ヶ月間、毎日のように砲撃がありました。私の両親は無事でしたが、隣人が銃撃でなくなりました。

 多くの市民が犠牲になったのは、ロシアのプーチン大統領の野心によるものです。停戦の行方はわかりませんが、ウクライナが占領されたすべての領土を取り戻し、ロシア軍に捕らえられたすべての人々が帰ってくることを願っています。”(全文)

 といいます。

 

 また、ディアナ・ティウディナさんは、

”…、すべてのロシア人に、ウクライナ領から出ていってほしい。ひどい、とんでもない国に、さっさと帰って欲しい。私の青春時代を壊したロシアを「国家」とすら言いたくありません。…”

 と語っています。

 

 オリガ・コノバルさんは、

”…私はキーウ州オブヒウ市で暮らしています。ロシア軍による侵攻が始まった20222月、私はオブヒウにいました。近隣の市では(ロシア軍の攻撃による)犠牲者がでましたが、私たちは大丈夫でした。

 ですが、長引く戦争が、息子ロマンの命を奪いました。戦争が3年間も続くとは思ってもいませんでした。息子は自ら志願して入隊して戦地に行ったんです。息子が戦地に行くとき、「僕がどこに行くか、わかるだろう。でも、何も聞かないで」とだけ私に言いました。私は彼を止めることが出来ませんでした。息子は国を愛していたからです。…”

 と語っています。

 同じように37にも、3人の声が掲載されました。

ボクシングをやっているダリア・グタリナさんは、

”…私が試合で、勝者として審判から手を上げられたら、ウクライナの国旗が掲揚されます。そこに大きな意味があるかはわかりませんが、少なくとも、何らかの意味があると信じています。28年の五輪に出場したいと思っています。

 また、息子が志願してウクライナ軍に入隊し、最前線で戦っているというハリーナ・モスカリウクさんは

ロシア人を完全にウクライナ領から追い出したいです。ミサイルが飛んでくる時、「何か間違いがあり、ロシア領に落ちてくれないだろうか」と。他のすべてのウクライナ人のように、終戦を待ち望んでいます。”

 というのです。

 キーウ出身だという、ミュージシャン、オレグさんは

”…ただ、将来については何も考えられません。ロシアのプーチン大統領のことも信じられないし、停戦について強気の発言をしていたトランプ大統領への期待もうせました。”

 と語っています。

 いずれも、気の毒な情況に置かれていることはわかるのですが、問題は、ロシア軍の侵攻を招いたアメリカを中心とするNATO諸国やウクライナ右派のドンバス爆撃などの動きを考慮することなく、ロシアやロシア人に対する憎しみを語っていることです。

 ロシア軍ではなく、ロシア人にウクライナ領から出ていってほしいという主張にも、ウクライナの右派、ゼレンスキー政権の姿勢が読み取れるのではないかと思います。

 

 侵攻前のプーチン大統領の演説内容を受け止めれば、ロシア軍のウクライナ侵攻が、プーチン大統領の「野心」などではないことがわかるはずです。

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻直前(2022224日)、国営テレビを通じて、ロシア国民向けの演説しました。でも、その演説の内容に関する報道は、日本では、全くなされなかったと思いますが、ウクライナでもほとんど報道されていないのではないかと想像してしまいます。

 その演説内容のなかには、

その間、NATOは、私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、絶えず拡大している。軍事機構は動いている。繰り返すが、それはロシアの国境のすぐ近くまで迫っている。

 とあります。ウクライナを含むNATO諸国の大規模な合同軍事演習や、ウクライナに対する戦略核兵器の持込みなどに対する恐怖心が読み取れると思います。

 また、またアメリカを中心とする西側諸国が

まず、国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した。この事実を思い起こさなければならない。 というのも、西側には、あの出来事を思い出したがらない者たちがいるからだ。私たちがこのことに言及すると、彼らは国際法の規範について指摘するのではなく、そのような必要性があると思われる状況だったのだと指摘したがる。

 その後、イラク、リビア、シリアの番が回ってきた。

 リビアに対して軍事力を不法に使い、リビア問題に関する国連安保理のあらゆる決定を曲解した結果、国家は完全に崩壊し、国際テロリズムの巨大な温床が生まれ、国は人道的大惨事にみまわれ、いまだに止まらない長年にわたる内戦の沼にはまっていった。リビアだけでなく、この地域全体の数十万人、数百万人もの人々が陥った悲劇は、北アフリカや中東からヨーロッパへ難民の大規模流出を引き起こした。

 シリアにもまた、同じような運命が用意されていた。シリア政府の同意と国連安保理の承認が無いまま、この国で西側の連合が行った軍事活動は、侵略、介入にほかならない。ただ、中でも特別なのは、もちろん、これもまた何の法的根拠もなく行われたイラク侵攻だ。その口実とされたのは、イラクに大量破壊兵器が存在するという信頼性の高い情報をアメリカが持っているとされていることだった。

 それを公の場で証明するために、アメリカの国務長官が、全世界を前にして、白い粉が入った試験管を振って見せ、これこそがイラクで開発されている化学兵器だと断言した。後になって、それはすべて、デマであり、はったりであることが判明した。イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。” 

”繰り返すが、そのほかに道はなかった。目的はウクライナの“占領”ではなく、ロシアを守るため現在起きていることは、ウクライナ国家やウクライナ人の利益を侵害したいという思いによるものではない。それは、ウクライナを人質にとり、我が国と我が国民に対し利用しようとしている者たちから、ロシア自身を守るためなのだ。

 

 こうした指摘が、ウクライナ侵攻をもたらしたとすれば、それが、ウクライナの市民の声にある、プーチン大統領の「野心」であるということは誤まりだと思います。

 イラクの人たちが200万人以上殺されたというような事実に対する恐怖心が、ロシアのウクライナ侵攻の背景にあるとすれば、上記のようなウクライナの市民の思いは、ゼレンスキー大統領と同じ反共反ロ意識に基づくものか、あるいは認識不足に基づく、誤解だと言ってよいと思います。

 

 もう一つ、しっかり踏まえたいことは、ロシアのウクライナ侵攻前、バイデン米大統領が「ロシアによる “ウクライナ侵攻”は、216日だろう」などと予想していたことです。なぜ、バイデン大統領は、ロシア軍のウクライナ侵攻を予想しながら、それを止めようとしなかったのか、なぜ、話し合いを呼びかけなかったのか、は重大な問題だと思います。また、バイデン大統領は、「ロシアのウクライナ侵攻は、北京冬季オリンピックの閉幕式(20日)前のいつでも起こり得る」などとも言っていたのです。そして、現実にウクライナ駐在の大使館を撤収し、職員たちを退避させたりしたようですが、どうしてウクライナの人たちのために、侵攻を止めようと努力しなかったのでしょうか。なぜ、軍人を周辺のNATO諸国に送ったりしたのでしょうか。

 

 先月の228日にホワイトハウスで行われた、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談は、合意がなされず決裂しました。大統領執務室での会談は、記者の前で激しく批判し合う異例の展開となったといいます。

 弱小国といえるウクライナのゼレンスキー大統領が、トランプ大統領を批判できるのは、やはり、バックにトランプ大統領のいうDS(アメリカの支配層)やNATO諸国が存在するからではないか、と私は想像します。

 ゼレンスキー大統領が8日、自身のSNSで、自分は参加しないが、両国高官の会談が11日に行われる予定であることを明かにしつつ、「我々はこの戦争の最初の瞬間から平和を望んでいる」とした上で、「現実的な提案がある」と和平合意への意欲を示しましたことが報道されています。

 でも、「我々はこの戦争の最初の瞬間から平和を望んでいる」というのは、明らかに「」だと思います。

 ロシア軍は、突然ウクライナ領土に侵攻したのではありません。ロシア軍が侵攻前、ウクライナとの国境沿いに集結していたことは、日本でも報道されていました。そして、バイデン大統領が、上記のように、ロシア軍のウクライナ侵攻を予想していたのです。にもかかわらず、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍のウクライナ侵攻を止めてほしいと声をあげることはありませんでした。逆に、侵攻に備えて、準備を整えていたと思います。”平和を望んでいた”のなら、なぜ、そのために必要な行動をとらなかったのか、と思うのです。今も昔も、戦争に「」はつきものだと思いますが、状況が変わったので、ゼレンスキー大統領は、前言を翻したのだと思います。メディアがその「嘘」に目をつぶる時代は恐ろしいと思います。

 また、ゼレンスキー大統領は、「ロシアは戦争を終わらせるつもりはなく、世界が許す間、より多くを獲得しようとしている」と非難したようですが、ふり返れば、アメリカの支援を受けて、ヤヌコビッチ政権を暴力的に転覆し、ウクライナの親露派を武力で圧して、ロシアのプーチン政権をも転覆しようと突き進んだのが、ウクライナの右派であり、ゼレンスキー氏は、今、その代表なのだと思います。

 見逃せないのは、その右派やゼレンスキー氏を支えてきたアメリカやNATO諸国は、かつて他国を植民地として搾取や収奪をしてきた国々であり、今なお、合法的に搾取や収奪をしている「豊かな国」であることです。

 ところが、その豊かな国々が、BRICSやグローバルサウスの急拡大で、窮地に陥り、その現実を乗り越えるために登場したのが、自国第一主義のトランプ大統領であり、ヨーロッパ諸国の右派勢力ではないかと思います。だから、今まで世界を席巻してきたNATO諸国やG7の国々の支配層(DS?)は、トランプ大統領側に正面から敵対するのか、自国第一主義と妥協するのか、選択を迫られているということではないかと思います。

 

 そんな中、今、私が気になるのは、イーロン・マスク氏が、スターリンクが情報提供を止めた場合に「ウクライナの戦線全体が崩壊するだろう」とXに投稿し、ポーランドのシコルスキ外相と激しい応酬を繰り広げた、と伝えられていることです。ウクライナ戦争に関する決定的なカードが、トランプ大統領側にあると言ってもよいと思います。

 朝日新聞は、”ロシア軍が、ロシア南西部クルスク州の町スジャ北方の3集落を奪還し、約2千人のウクライナ兵士を包囲しており、脱出ルートも塞がれている”、とロシア独立系メディアが報道じたことを伝えています。ウクライナ兵士は、イーロン・マスク氏のスペースX社の衛星通信サービス「スターリンク」が使えず、司令部との連絡もできないといいます。

 スターリンク関しては、トランプ米政権が遮断をちらつかせ、ウクライナに鉱物資源の権益に関する協定への署名を迫ったとロイター通信は報じていたのですが、先日、マスク氏は「ウクライナ政策にどれほど反対していても、スターリンクが接続を停止することは決してない。それを交渉材料として使うことも決してない」と述べて、若干ウクライナやNATO諸国に譲歩の姿勢を見せていることも、今後のウクライナのありかたに関わる大きな問題だと思います。

 トランプ大統領やイーロン・マスク氏は、平気で前言を翻すことがあるようなので、目が離せないと思います。

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