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真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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アメリカによる司法介入の証拠文書

2023年03月23日 | 国際・政治

 下記は、 「砂川事件と田中最高裁長官 米解禁文書が明らかにした日本の司法」布川玲子・新原昭治(日本評論社)からの一部抜萃ですが、アメリカが東京地裁の伊達判決にいかにあわてふためいたかがよくわかると思います。
 伊達秋雄裁判長が,1959年3月「日米安全保障条約に基づく駐留米軍の存在は,憲法前文と第9条の戦力保持禁止に違反し違憲である」と断定した直後から、アメリカのマッカーサー駐日大使は、藤山外務大臣などと接触しつつ、頻繁に国務省に「夜間作業必要緊急電報」を打っているのです。そして、日本政府やメディアの報道、日本社会の反応などを逐一国務省に報告しています。
 私は、そうした「夜間作業必要緊急電報」のやりとりは、米軍の日本駐留が、実は、日本を守るためというより、アメリカの覇権と利益のためであったことを示しているように思います。
 また、当時の岸首相が、アメリカと手を結んだ日本の戦争指導層を代表する首相であったために、伊達判決は、アメリカの司法介入によって覆されることになったのだと思います。60年以上前の話ですが、私は、日本に対するアメリカの司法介入は、現在につながっている問題であることを忘れてはならないと思います。

 日本のメディアは、日本政府を批判し、非難しても、アメリカの他国に対する内政干渉や戦争犯罪には目をつぶり、追及しないということが、あたりまえになっているように思います。そういう意味では、戦後アメリカと手を結んだ岸首相をはじめとする戦争指導層と同罪だと思います。
 先日、朝日新聞は「イラク戦争20年」ということで、”不正な侵略 重い教訓”と題する記事を掲載しました。そのなかに、下記のような”苛立ちを感じる”一節がありました。

米ブラウン大によると、アフガニスタン、イラクの戦争で戦費は退役軍人への治療費などを含め8兆ドルに上る。米兵7千人以上が死亡し、敵兵や市民も合せて90万人の命が失われた。疲弊した米社会に厭戦ムードが拡大し、政治の「内向き化」の加速により国際社会での米国の存在感は陰った。
 世界最強の軍事大国でも、武力で他国の体制を変えることはできなかった。自身の国力と威信は無惨に傷ついた。この事実こそ、イラク戦争からくみ取るべき最大の教訓だろう。「不正な戦争」がいかなる末路をたどるのか。国内の不満を強権で抑え込むプーチン大統領は、歴史に真摯に向き合う必要がある。

 アメリカは、イラクやアフガニスタンでの戦争が「不正な戦争」であったと認め、反省したでしょうか。イラクやアフガニスタンの人たちに、賠償や補償をしたでしょうか。退役軍人に出した治療費に相当するものを、イラクやアフガニスタンの人たちに出したでしょうか。なぜ、そうしたことを問わないのでしょうか。    

 また、当時の小泉首相が、多くの反対の声があったにもかかわらず、アメリカの戦争をいち早く支持した過ちさえ問わないで、イラク戦争から「教訓」をくみ取ることを語れるのでしょうか。
 どうしても受け入れることができないのは、この記事の結論です。
 なぜ、アメリカのイラク戦争の問題を、”「不正な戦争」がいかなる末路をたどるのか。国内の不満を強権で抑え込むプーチン大統領は、歴史に真摯に向き合う必要がある。”などとプーチン大統領の問題にすり替えてしまうのでしょうか。

 アメリカは、選挙で選ばれ、2011年に日本を公式訪問した際、当時の天皇(明仁)から大勲位菊花大綬章を授与されているウクライナのヤヌコーヴィチ大統領(親露派)を独裁者に仕立て上げ、暴力的なクーデターで政権転覆することに手を貸し、ウクライナ戦争のきっかけをつくったのではないでしょうか。
 この記事は、追及すべき相手を意図的にすりかえて、読者を惑わす記事だ、と私は思います。
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                 第1部 砂川事件に関する米国政府解禁文書  

国務省・受信電報
「部外秘」
1959年3月30日午前6時52分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:1968、3月30日午後8時
夜間作業必要緊急電
国務省宛1968:同文情報提供─太平洋軍司令部宛55、在日米軍司令部宛332
太平洋軍司令部は政治顧問へ
国務省から国防総省と文化情報庁へ。
大使館・文化情報局共同連絡

 伊達秋雄裁判官を裁判長とする東京地方裁判所法廷は本日、日本が日本防衛の目的で米軍の日本駐留を許している行為は「憲法第9条で禁じられている陸海空軍その他の戦力保持の範疇に入るもので、日米安保条約と日米行政協定の国際妥当性がどうであれ、国内法のもとにおいては米軍の駐留は……憲法に違反している」と宣言した。

 判決はいわゆる砂川事件に関連したもので、全学連(共産党支配下の学生組織)の書記長、土屋源太郎並びに他の6人の被告に関する1957年7月8日の米軍立川基地侵入(1957年7月8日の大使館電報第68号で説明済)について無罪とした。

 当地の夕刊各紙はこれを大きく取り上げており、当大使館はマスメディアからさまざまな性格の異なる報道に関した数多くの問い合わせを受けている。外務省当局者と協議の後、これらの問合わせには「日本の法廷の判決や決定に関して当大使館がコメントするのは、きわめて不適切であろう。この問題にコメントする最適の立場にあるのは日本政府だと考える」旨答えている。在日米軍司令部、マスメディアの問い合わせに同様の回答をしている。

 外務省当局者がわれわれに語ったところによれば、日本政府は地裁判決を上訴するつもりであり、今夜の参議院予算委員会で法務大臣がそれについて言明する予定である。

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国務省・受信電報
「極秘」
1959年3月31日午前1時17分
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:1969、3月31日午後2時
至急電
国務省宛1969、同文情報提供─太平洋軍司令部宛552、在日米軍司令部宛533
限定配布
太平洋軍司令部は政治顧問とフェルト提督へ。在日米軍司令部宛はバーンズ将軍へ。
大使館関連電報1968

 今朝8時に藤山(愛一郎=外務大臣)と会い、米軍の駐留と基地を日本国憲法違反とした東京地裁判決について話し合った。私は、日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調した。私はこの判決が、藤山が重視している安保条約についての協議に複雑さを生み出すだけでなく、4月23日の東京、大阪、北海道その他でのきわめて重要な知事選挙を前にしたこの時期に、国民の気持ちに混乱を引き起こしかねないとの見解を表明した。
 私は、日本の法制度のことをよく知らないものの、日本政府がとり得る方策は二つあると理解していると述べた。

1、東京地裁判決を上級裁判所(東京高裁)に控訴すること。
2、同判決を最高裁に直接、上告(跳躍上告)すること。

 私は、もし自分の理解が正しいなら、日本政府が直接最高裁に上告することが、非常に重要だと個人的には感じている。というのは、社会党や左翼勢力が上級裁判所(東京高裁)の判決を最終のものと受け入れることは決してなく、高裁への訴えは最高裁が最終判断を示すまで議論の時間を長引かせるだけのこととなろう。これは、左翼勢力や中立主義者らを益するだけであろうと述べた。
 藤山は全面的に同意すると述べた。完全に確実とは言えないが、藤山は日本政府当局が最高裁に辞跳躍上告することはできるはずだとの考えであった。藤山は、今朝9時に開かれる閣議でこの上告を承認するように促したいと語った。               マッカーサー                                                         
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国務省・受信電報
「秘」
1959年3月31日午前9 時29分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:1973、3月31日午後9時
至急電
国務省宛1973、同文情報提供─太平洋軍司令部宛554、在日米軍司令部宛335
限定配布
大使館関連電報1969

 今夕、外務省当局者は、日本政府が東京地裁判決を最高裁に跳躍上告するか、それともまず東京地高裁に控訴するかをめぐって、いまだに結論に到達していないと知らせてきた。どちらの選択肢がより望ましいかで議論の余地があるらしく、目下、法務省で緊急に検討中である。外務省当局者は、今の状況をなるべく早くすっきりと解決することが望ましいことは十分認識している。
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抄訳
国務省・受信電報
「部外秘」
1959年4月1日午前7 時06分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:1978、4月1日午後8時
至急電
国務省宛1978、同文情報提供─太平洋軍司令部宛556、在日米軍司令部宛337 並びに全駐日領事館宛
太平洋軍司令部は政治顧問宛
大使館関連電報1968

 日本における米軍の駐留は憲法違反と断定した東京地裁の伊達判決は、政府内部でもまったく予想されておらず、当初日本国内に鮮烈な衝撃を拡げた。同判決は、国会での政府と社会党指導者との鋭い論議を巻き起こし、また憲法問題専門家らの議論や政治評論家らの広範囲に及ぶ推測、論評が飛び交った。
 岸(首相)と政府幹部はともに国会でも国民向け声明でも、同判決は裁判所内の少数意見を代弁したに過ぎないこと、最終的判決は最高裁によってなされること、差し当って伊達判決は、日本政府の政策を変えるものではないし、憲法9条について日本政府が長年にわたりとってきた以下のような解釈を変えるものではないことを強調している。(A)第9条は、攻撃から自らを防衛する権利を日本が持つことを否定していないこと、(B)このような目的のための戦力を日本が持つことを禁じていないこと、(C)日本における米軍の駐留を禁じていないこと。
 岸は、政府として自衛隊、安保条約、行政協定、刑事特別法は憲法違反ではないことを確信を持って米国との安保条約改定交渉を続けると表明した。

 すべての新聞が引き続き、伊達判決についての詳細な論説や全世界の主要首都からの反応を含めて、大きな扱いを続けている。ただし、当初は3月31日付紙面で際立ったようなセンセーショナルな扱いは影をひそめ、むしろ落ち着いた反応にとってかわっている。
〔以下、各紙論評の特徴と社会党の動向を報告しているが、原本コピー不鮮明につき翻訳は省略。〕

 コメント  東京地裁判決の反響を全面的に予測することはまだ早すぎる。差し当っての一応の推測としては、いうまでもなく社会党は、当面次の選挙戦に向けてこの問題を最大限に活用することが予想される。同時に、長期的には政府が確信をもって予測しているように、最高裁の最終判決が伊達判決を明快な論法で覆すなら、国民的論議や法律的論議の最終的結末は、米日防衛取り決めのための特別な罰則規定を含めて、自衛のための適切な措置をとる権利を日本が持っていることを健全なやり方で明確化するものとなろう。                 マッカーサー
                                    
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国務省・受信電報
「秘」
1959年4月1日午前7 時26分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:1982、4月1日午後8時
至急電
国務省宛1982、同文情報提供─太平洋軍司令部宛557、在日米軍司令部宛338 在日米軍軍司令部宛338
太平洋軍司令部は政治顧問宛
大使館関連電報1968
                   
 藤山(外相)が本日、内密に会いたいと言ってきた。藤山は、これまでの数多くの判決によって支持されてきた憲法解釈が、砂川事件の上訴審でも維持されるだろうということに、日本政府は完全な確信を持っていることをアメリカ政府に知ってもらいたいと述べた。法務省は目下、高裁を飛び越して最高裁に跳躍上告する方法を検討中である。最高裁には3千件を超える係争中の案件がかかっているが、最高裁は本事件に優先権を与えるであろうことを政府は信じている。とはいえ、藤山が述べたところによると、現在の推測では、最高裁が優先的考慮を払ったとしても、最終判決を下すまでにはやはり3ヶ月ないし4ヶ月を要するであろうということである。
 同時に、藤山は、東京地裁判決が覆されるであろうということ、そして日本政府が、自衛隊と米軍駐留が合憲であるという政府の立場が支持されるであろうということに、いささかの疑いも抱いていないことを明確に示すよう振舞うことが大事だと述べた。地裁判決へのマスメディアと世論の反応はこれまでのところ、日本政府の立場にとって決して不利なものではない。いまのところ、日本政府は社会党が新たに司法を尊重せよと騒ぎ立てていることを必ずしも不快に思っていない。というのは、日本政府は「社会党の司法尊重」が最高裁の段階になった時ブーメラン効果〔自らに負の効果がかえってくる〕をあげることを期待しているからである。

 一方で、藤山は、もし日本における米軍の法的地位をめぐって、米国または日本のいずれかの側からの疑問により、例えば〔日米安保〕条約(改定)交渉が立往生させられているといった印象がつくられたら、きわめてまずいと語った。
 そこで藤山は、明日の私と藤山との条約交渉関連の会談を、事前に公表のうえ開催することを提案した。ここで藤山は、会談が日本政府のイニシアチブで行われたことを明らかにすることで、日本政府自らの立場の合憲性を確信しており安保条約〔改定〕交渉を続行するとの意向をアメリカ政府に対し明確に示すことになろう。
 この会談の開催について最終決定を下す前に、藤山は明朝、福田〔赳夫=自民党幹事長)と船田〔中=自民党政調会長〕と相談し、事前公表予定の明日の会談が、自民党にとっても世論にとっても有意義かどうかを再確認する予定である。
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国務省・受信電報
「秘」
1959年4月3日午前2時26分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:2001、4月3日午後4時
至急電
国務省宛2001、同文情報提供─太平洋軍司令部宛563、在日米軍司令部宛344 在日米軍軍司令部宛344
太平洋軍司令部は政治顧問へ
大使館関連電報1982

 自民党の福田幹事長は、内閣と自民党が今朝、政府は日本における米軍基地と米軍駐留に関する東京地裁判決を最高裁に直接(跳躍)上告することに決定した、と私に語った。


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