Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

流出(1)

2014-06-04 01:00:00 | 雪3年3部(聞けない淳の本音~流出)
「雪さーん!雪さんってば!一緒に行きましょうよ!」



ズンズンと先を行く雪に、太一は声を掛けながら必死に後を追いかけた。

ようやく追いつき、彼女の肩に手を掛けるが、



雪はその場で頭を抱えたと思うと、低い声を出しながら身を屈めた。

太一はそんな雪を支えながら、大丈夫ですかと言って心配する。









心の中が燃えていた。

遂に爆発した爆弾は扉をこじ開け、中に入っていたものがドロドロと流出する。

着火の原因となった、メールの文面が脳裏に浮かんだ。


”雪ちゃんは翔のこと好きみたいだけど”




それは彼の声で再生された。

そして開け放たれた扉から、仕舞いこんであった彼への不信が流出する。


お前が俺のこと好きだってことは、青田先輩も知ってる事実だってのに




今まで確かな証拠など何も無かった。

ただいつものように横山が口にする戯言だと思っていた。


どうせ横山のことだから、

せいぜい電話で言い寄るくらいしか出来なかったんじゃないのか?





健太先輩が口にした言葉を聞いて、彼は何と言ったか。

そうだ、こう言った。


出来る限り償いは‥




嘘。

真っ赤な嘘。

本当の彼は、こういう人間。


今度からは気をつけろよ




肩に手を置かれる時、無言の圧力があった。

獲物をピンで刺し、動けなくするように。





夏休みに受けた平井和美からの告白。

あの時は彼女に腹が立って見過ごしていたが、冷静になってみると問題の根本は続いている。




青田淳がどんな人間か、ということ。





あの日目にした彼の瞳。

暗い部屋で一人、悪戯を楽しんでいる少年のような。





二人しか居ない空間に飛ばされたような、不思議な感覚。

彼を凝視する雪の目を、どこか怯えるような瞳で見つめ返す彼。





まるで悪戯が見つかって、大好きなママに見放されることを恐れるような、あの表情。

暗く沈んだような色の瞳に、見つめ返す自分の顔が映っている。


彼を見ている自分もまた、怯えたような表情をしていたー‥。










グラグラと、目の前が揺れていた。

雪さん、雪さん、と自分を呼ぶ太一の声が、どこか遠くで響いているような気がする。





爆発した後の部屋は辺り一面煤だらけで雑然としていたが、

もう煙で曇ってはいなかった。

扉から流出したものに目を背けることも誤魔化すことも出来ず、雪は残酷な真実と相対する。





夜が巡って来ても、雪がそれから解放されることはなかった。

衝撃を受けた後の気怠い疲労感と共に、トボトボと帰路を歩む。



家の近くまで来た時ふと顔を上げると、視線の先に彼の姿が飛び込んで来た。



雪は足を止め、暫しその場で彼の姿をぼんやりと見つめた。

彼は車の前に立ちながら、腕時計で時間を見ている。



やがて彼は雪に気がつき声を掛けた。パッと嬉しそうな笑顔を浮かべて。

「雪ちゃん!」



その微笑みは、その声は、間違いなく先輩のものだった。

雪の感覚は壁一枚隔てているかのように鈍く、ぼんやりと彼の姿を見つめている。



彼は嬉しそうに雪に近づくと、高揚しているのか一人で話始めた。

まるで飼い犬が大好きな主人に近寄るような、無邪気なものさえ見える仕草で。

「今帰り?今日電話出れなくてごめん。今日に限って一日中仕事が忙しくって‥。

その後電話したんだけど雪ちゃんも電話出なかったからさ、直接来ちゃったよ。最近は顔もろくに見れないし‥」




彼はニッコリと笑った。

見慣れたその笑みで、聞き慣れた少し自信過剰な言葉と共に。

「嬉しいでしょ?」



俺みたいな人間、そうそう居ないよ?と言って彼は笑った。

雪はただぼんやりと、彼の笑顔を見て彼が紡ぐ言葉を聞いている。



彼は話を続けた。彼女に会ったことが嬉しくて堪らないという様に。

「あ、それで俺も少し時間出来ると思うし、雪ちゃんもじき試験終るでしょ?そしたらちょっとは‥」



彼の嬉しそうな表情と、紡がれる言葉を前にして、雪はぼんやりとしていた。

今目の前に居る彼は、間違いなくいつもの青田先輩だ。




けれどー‥。




そこでようやく、彼は彼女の異変に気がついた。

話し掛けても反応が薄く、彼女は自分を見上げて動かない。



おかしく思った淳は、最初彼女が怒っているのかと思った。

連絡しなかったことを怒っているのかと。

「ごめんね」



淳はニッコリと笑って、彼女に謝った。

その屈託のない笑顔を前にして、雪の心がぐらりと歪む。



そんな彼女の胸中など知る由も無い彼は、彼女を抱き締めようと手を伸ばした。

「それでもこうやって会いに来たからー‥」



しかし彼女はそれを拒んだ。「待って下さい」と言って、逃げるように彼から後退る。

淳はキョトンとした顔で、何かあったのかと彼女に問うた。



俯いた彼女が抱える闇が、

持て余した感情が、今から流出するとも知らず。




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<流出(1)>でした。

こんな笑顔で迎えられたら‥

「Yukkanen!」(脳内変換中)



私、許してしまいそう‥。ダメな女です(笑)


さて、いよいよ流出した彼への不信と向き合う時が来ましたね。

次回<流出(2)>へ続きます。


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