亮が帰宅すると、室内は雑然としていた。
「あぁ?!こりゃまた何だぁ?」

散らかったゴミを足で蹴りながら室内を進み、
寝転んで寛いでいる静香の元へ急ぐ。

実はその途中で亮は、昼間静香が燃やした楽譜を蹴ったのだが、彼は気が付かなかった。
頭の中は、聞きたい事でいっぱいだったからである。
「また変なことしただろ!お前!」

亮は静香の肩を掴むと、険しい形相で凄んで見せた。
静香は自分が楽譜を燃やしたことに怒っているのだと思い、弁解する。
「何よ、またケンカする気?あれはミスって‥」
「てめぇはまた何やらかしてんだよ?!」

しかしどうやら亮は他のことに怒っているらしい。
何が? と静香が聞き返すと、亮は怒りの形相で静香を責め始めた。
「何堂々と自分は淳の彼女だなんて宣言してんだよ!脳天吹っ飛ばされでもしたか?!」

静香は突然キレ始めた弟に疑問符を浮かべ、「何寝ぼけたこと言って‥」と口にした。
しかし突如昼間の出来事が脳裏に浮かぶ。いきなり電話を掛けてきた、「淳の彼女」のことだ。

静香はニヤニヤと笑い始めると、開き直るようにこう口にし始めた。
「あ~ハイハイ‥そのことね。でもあながち間違いでもないじゃない?
あたし以外に彼女って呼べる人間なんていたっけ?淳ちゃんに」

亮は当然の如くその事実を姉が認め、しかも悪びれず居直っている様を見て顔を青くした。
何を言ってやがんだと、より一層声を荒げる。

静香はかなり怒りボルテージの高い弟を前にして、純粋に疑問符を浮かべた。
「てか、何でアンタはそんなにガン切れしてるワケ?また淳ちゃんに何か言われた?」

冷静に姉にそう問われた亮は、
「そうじゃねぇけど‥」と言って、少し怒りを引っ込める。

静香は可笑しそうに、自分が彼女のフリをしたことで「淳の彼女」が泣きながら別れ話でもしたのか、
と言ってケラケラ笑った。亮はふざけた態度の姉に顔を顰めっぱなしだ。

しかし次の瞬間、静香は亮に向き直り、苦い表情で口を開いた。心外だったのだ、こんな風に弟に責められるのは。
「てかさぁ、あたしがどんな話しようがアンタに関係なくない?
別に何か問題が起こったわけでもないし、何でそんなに大げさに騒いでんの?」

「それは、」と亮は口を開きかけた。
「それは?」と静香はその答えを聞きたそうに待っている。

しかし亮はその続きを口にすることが出来なかった。
静香の前では、雪の話題はご法度だ。以前大学で目にした、彼女の暴行が脳裏に蘇る‥。

亮は暫し思案したが、結果雪のことは口に出さず静香に釘を打つことにした。
「て、てめぇ‥オレが口が腐るほど言ったじゃねーか、無駄な夢見んじゃねーって!
んなことして、淳が振り向くとでも思ってんのか?!」

静香はまたも亮の口から出る説教に顔を顰め、その辺にあった物を手当たり次第に投げつけ始めた。
「アンタ暇人?!何でまたケンカふっかけてくんのよ!あたしが楽し~くしてあげようか?」

亮は静香からの攻撃を受けながら、彼女が勢いで投げつけてきた黒い携帯を手に取り、こう言った。
「お前、これじゃなくてもう一個の方の携帯出せ!淳に貰った携帯あんだろ?それ見せろ!」

突然の亮の要求に、当然静香は顔を顰めた。
「は~?てかなんでそれ知ってんの?」

静香はもしかして淳が、携帯まで取り上げて亮に回せと言っているのかと口にして憤った。
あの狐野郎ケチくさいんだよ、と愚痴を口にする姉に、亮は「いいから出せ」とまたキレる。
「ほら」

しぶしぶ渡した静香の白い携帯を、亮はバッと取り上げてスクロールを始めた。
メールフォルダを開き、手当たり次第に目を通して行く。
「‥んだよ、何かの決済だの配送だのってメールばっか‥」

意味不明な行動を繰り返す弟を、静香は恨めしそうに見つめて黙っていた。
床には、昼間燃やした楽譜の切れ端が落ちている。

静香はくさくさした。自分だけが流れ行く時間の中に置いてけぼりにされている。
ギュッと唇を結びながら、言い様のない苛立ちに苛まれた。

そして携帯を見続けている弟に向かって、単純な興味と共に静香は口を開く。
「何でいきなりその旧型携帯が人気なのよ?」

「変な奴から電話はかかってくるわ、淳の彼女本人から連絡くるわ、」

「あんたもこんな風にキレて駆けつけるわ‥」

亮は「淳の彼女」‥つまり赤山雪から電話が掛かって来たという事実を知り、目を剥いた。
弟が手にしているその携帯を眺めながら静香は、一体この携帯を巡って何が起こっているのか気になると口にする。

そして彼女は天を仰ぐと、思い出すように視線を泳がせてこう言った。
「その携帯、譲り受ける時からちょっといわくつきだったんだよねぇ‥」

そして彼女は語り始めた。
この携帯を、淳から譲り受けることになった経緯を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<姉の携帯>でした。
亮さん、燃やされた楽譜に気づいてないのね‥^^; どんだけ部屋が散らかっているのか‥。
さて、次回は静香がその携帯を譲り受けた経緯の話を、静香視点で書いていこうと思います。
次回<退屈な遊び>です。
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「あぁ?!こりゃまた何だぁ?」

散らかったゴミを足で蹴りながら室内を進み、
寝転んで寛いでいる静香の元へ急ぐ。

実はその途中で亮は、昼間静香が燃やした楽譜を蹴ったのだが、彼は気が付かなかった。
頭の中は、聞きたい事でいっぱいだったからである。
「また変なことしただろ!お前!」

亮は静香の肩を掴むと、険しい形相で凄んで見せた。
静香は自分が楽譜を燃やしたことに怒っているのだと思い、弁解する。
「何よ、またケンカする気?あれはミスって‥」
「てめぇはまた何やらかしてんだよ?!」

しかしどうやら亮は他のことに怒っているらしい。
何が? と静香が聞き返すと、亮は怒りの形相で静香を責め始めた。
「何堂々と自分は淳の彼女だなんて宣言してんだよ!脳天吹っ飛ばされでもしたか?!」

静香は突然キレ始めた弟に疑問符を浮かべ、「何寝ぼけたこと言って‥」と口にした。
しかし突如昼間の出来事が脳裏に浮かぶ。いきなり電話を掛けてきた、「淳の彼女」のことだ。

静香はニヤニヤと笑い始めると、開き直るようにこう口にし始めた。
「あ~ハイハイ‥そのことね。でもあながち間違いでもないじゃない?
あたし以外に彼女って呼べる人間なんていたっけ?淳ちゃんに」

亮は当然の如くその事実を姉が認め、しかも悪びれず居直っている様を見て顔を青くした。
何を言ってやがんだと、より一層声を荒げる。

静香はかなり怒りボルテージの高い弟を前にして、純粋に疑問符を浮かべた。
「てか、何でアンタはそんなにガン切れしてるワケ?また淳ちゃんに何か言われた?」

冷静に姉にそう問われた亮は、
「そうじゃねぇけど‥」と言って、少し怒りを引っ込める。

静香は可笑しそうに、自分が彼女のフリをしたことで「淳の彼女」が泣きながら別れ話でもしたのか、
と言ってケラケラ笑った。亮はふざけた態度の姉に顔を顰めっぱなしだ。

しかし次の瞬間、静香は亮に向き直り、苦い表情で口を開いた。心外だったのだ、こんな風に弟に責められるのは。
「てかさぁ、あたしがどんな話しようがアンタに関係なくない?
別に何か問題が起こったわけでもないし、何でそんなに大げさに騒いでんの?」

「それは、」と亮は口を開きかけた。
「それは?」と静香はその答えを聞きたそうに待っている。


しかし亮はその続きを口にすることが出来なかった。
静香の前では、雪の話題はご法度だ。以前大学で目にした、彼女の暴行が脳裏に蘇る‥。

亮は暫し思案したが、結果雪のことは口に出さず静香に釘を打つことにした。
「て、てめぇ‥オレが口が腐るほど言ったじゃねーか、無駄な夢見んじゃねーって!
んなことして、淳が振り向くとでも思ってんのか?!」

静香はまたも亮の口から出る説教に顔を顰め、その辺にあった物を手当たり次第に投げつけ始めた。
「アンタ暇人?!何でまたケンカふっかけてくんのよ!あたしが楽し~くしてあげようか?」

亮は静香からの攻撃を受けながら、彼女が勢いで投げつけてきた黒い携帯を手に取り、こう言った。
「お前、これじゃなくてもう一個の方の携帯出せ!淳に貰った携帯あんだろ?それ見せろ!」

突然の亮の要求に、当然静香は顔を顰めた。
「は~?てかなんでそれ知ってんの?」

静香はもしかして淳が、携帯まで取り上げて亮に回せと言っているのかと口にして憤った。
あの狐野郎ケチくさいんだよ、と愚痴を口にする姉に、亮は「いいから出せ」とまたキレる。
「ほら」

しぶしぶ渡した静香の白い携帯を、亮はバッと取り上げてスクロールを始めた。
メールフォルダを開き、手当たり次第に目を通して行く。
「‥んだよ、何かの決済だの配送だのってメールばっか‥」

意味不明な行動を繰り返す弟を、静香は恨めしそうに見つめて黙っていた。
床には、昼間燃やした楽譜の切れ端が落ちている。

静香はくさくさした。自分だけが流れ行く時間の中に置いてけぼりにされている。
ギュッと唇を結びながら、言い様のない苛立ちに苛まれた。

そして携帯を見続けている弟に向かって、単純な興味と共に静香は口を開く。
「何でいきなりその旧型携帯が人気なのよ?」

「変な奴から電話はかかってくるわ、淳の彼女本人から連絡くるわ、」

「あんたもこんな風にキレて駆けつけるわ‥」

亮は「淳の彼女」‥つまり赤山雪から電話が掛かって来たという事実を知り、目を剥いた。
弟が手にしているその携帯を眺めながら静香は、一体この携帯を巡って何が起こっているのか気になると口にする。

そして彼女は天を仰ぐと、思い出すように視線を泳がせてこう言った。
「その携帯、譲り受ける時からちょっといわくつきだったんだよねぇ‥」

そして彼女は語り始めた。
この携帯を、淳から譲り受けることになった経緯を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<姉の携帯>でした。
亮さん、燃やされた楽譜に気づいてないのね‥^^; どんだけ部屋が散らかっているのか‥。
さて、次回は静香がその携帯を譲り受けた経緯の話を、静香視点で書いていこうと思います。
次回<退屈な遊び>です。
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