Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

流出(2)

2014-06-05 01:00:00 | 雪3年3部(聞けない淳の本音~流出)


淳は目の前の雪が俯いているのを、不思議な思いで見つめていた。

下を向き、何かを考え込んでいる彼女。



雪ちゃん? と淳が彼女の名を呼ぶと、彼女も彼の呼び名を口に出した。

「先輩‥」



「ん?」と優しく呼応する彼を前にして、雪は顔を上げかけたが、再び俯いた。

そして俯いたまま、遂に本題を口に出す。

「去年‥私が先輩に、横山のことで問い詰めたことがあったじゃないですか」



「覚えてますか?」



俯いたままの雪の前で、淳は目を見開いた。

遂に恐れていたことが、現実になってしまった現状を前にして。



彼女は俯いている。

垂れた厚い前髪でその瞳は窺えなかったが、きつく結んだ口元が見えた。



淳は俯いた彼女から見えない角度で、暫し視線を天に漂わせた。

この場面で自分がどう振る舞うべきか最良な答えを検索し、物事の行く末を想像する。先の手を読む棋士のように。



そしてやがて、淳は彼女の方へと視線を下した。

俯瞰するように彼女を見つめながら、辿り着いた結論を頭に浮かべながら。



「うん」



ヒヤッと、雪は自分の背中に冷たい汗が流れるのを感じた。しかし騒ぐ胸中を押さえながら、淡々と事実を確認する。

「それで‥私が去年横山からどんなことをされたのか、先輩に一通り説明しました。

分かりますね?」




雪の言いたいことがほぼ読めた淳は、眉を寄せて口を開いた。

雲行きの怪しい展開だけれども、肯定するしか道は無い。



「分かるよ」



彼が肯定したことで、舞台は整った。恐ろしく、目を背けたくなるような舞台だが。

しかしここで逃げ出すわけには行かなかった。雪は青白い顔を、バッと彼の方に向ける。



見上げた彼は、良いとも悪いとも言えない表情をしていた。

言うならばニュートラル。ギアが後ろに入ろうが前に入ろうが、対応して行けるような。



雪は、すぐには言葉が出てこなかった。

どこから手を付けて良いのか迷いながら、言葉を綻ばす。



真っ直ぐに彼を見つめながら、雪はようやく言葉を紡ぎ始めた。

着火の原因となったあのメールこそが、全ての根源だ。

「今日‥横山が‥」



「去年先輩が送ってきたっていうメールを見せて来ました‥」



「そのメール、本当に先輩が送ったんですか?」



見開いた彼女の瞳を、淳は俯瞰するように眺めていた。

能面のような顔をして自分を見上げる彼女を、淳もまた無表情のまま見つめている。



雪はその場に突っ立ったまま、彼への追及を続けた。

しかしその口調は一本調子でロボットのようだった。感情を挟まず淡々と、彼女は彼に真実の在処を確認する。

「去年の夏休み、本当に横山とそんなやり取りをしたんですか?

”私が横山のことが好きだ”って、そんな内容のメールを容易く送ったのは、本当に先輩なんですか?」




雪はそう一言で言い切ると、暫し目を見開いたまま淳のことを見上げていた。

秋も深まった夜の風は冷たく、町中の喧騒はどこか遠く感じる。



二人は向き合ったまま暫く時を過ごした。

間に横たわるその真実を前にして、彼女を見つめる淳の顔が僅かに歪む。



まるで悪戯が見つかってスネている子供のような、そんな表情を彼は浮かべていた。

面白くない展開だが否定する道は残されていない、そんな状況に閉口した子供のように。

「そうだよ」



容易く肯定したかのように見える彼を前にして、

雪は鼓動が早まるのを感じていた。嫌な汗が背中を伝い、胸中がザワザワと騒ぎ出す。



落ち着け落ち着け、と雪は自らに言い聞かせながら、もう一度彼に確認する。

「‥先輩が送ったということで、合ってますね?」



雪からの再確認に、淳は頷いた。彼は「あれは横山が‥」と口に出そうとしたが、それよりも早く雪が口を開く。

「電話したら、ちがう人が出たんです!」  「!」



この雪の発言には、淳も驚かされた。予想外とも言えるその展開に、淳の顔が曇る。

「”先輩の彼女だ”って言ってました」



どういうことですか、と問い詰める彼女を前にして、淳の瞳が翳った。

「何だって?」



思い浮かぶあのイラつく幼馴染みが、ニヤニヤと笑う顔が脳裏に浮かぶ。

淳は下を向き、一つ深く息を吐いた。



そして淳は冷静に説明を始めた。

「雪ちゃん、その女は亮の姉の河村静香だよ」



「以前家が亮達をサポートしていたという話をしたことがあっただろう?」



雪の脳裏に、以前近藤みゆきと立ち寄った店にて、静香と邂逅した時の記憶が蘇った。

物騒な言葉を口に出しながら、狂ったような笑みを浮かべた彼女‥。

あの女の人が‥?



彼女が、”自分は淳の彼女だ”と言った‥。俯く雪に、淳は淡々と説明を続ける。

「俺が使っていた携帯をそのまま譲ることになって、番号も似ていたから‥。

あの子が俺の彼女だって話だけど‥きっと本人が強がったのと、ただ君をからかったんだろう」




雪の心の中で、幾つものパーツが引っかかった。”携帯を譲った”、”あの子”、”メールを送った”‥。

俯く雪を前に、淳は静香とのことを弁明する。

「金の為に俺にそうしているだけであって‥今の俺は二人に対して悪感情しか持ってないし。

まして彼女だなんて‥絶対にそれは違う。静香の話なんて全く気に留めなくて良い」




雪は俯いたままだったが、とりあえず河村静香とのことはそこまでにしておくことにした。

「それで、それが別の番号だってことは分かるんですが‥」



彼女とのことは、根本の問題から派生した二次的問題だ。

爆発の原因となった根本の問題は、今雪が口にする言葉にこそある。

「何でそんなこと、したんですか?」



雪の問いが、徐々に真実を辿って行く。

目を背けたくなるような現実が、目の前に迫ってくる‥。



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<流出(2)>でした。

色々と囁かれる先輩のこの表情の意味‥。



私は「あ~あバレちゃった」という意味だと解釈しました。

それこそ告げ口した横山にスネる子供のように。

彼の横山に対する制裁が怖いですね‥。ブルブル。



次回は<流出(3)>です。



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