「おいっ!赤山!ちょ、待てって!」

図書館を出た横山は、前方を早足で歩く雪にようやく追いついた。
彼女の名前を何度も呼ぶが、雪は一向に振り向こうとはしない。
「待てって言ってんだよ!」

横山は雪の腕を掴むと、話があるんだと言って食い下がった。
こんなことをするのは止めて、俺の話を聞いてもう一度考えてくれ、と。
「これ以上何を聞けっての?!困らすのはもう止めて!!」

雪はそんな横山の手を振り払い、携帯が入れてあるポケットに手を突っ込んだ。
するとその仕草を見逃さなかった横山が、彼女の手から携帯を奪う。

雪は横山に手を伸ばして激高したが、横山は「話を聞いてくれたら返す」と言って携帯を自分のポケットに仕舞った。
そして横山は雪をじっと見つめると、確認するようにこう口にした。
「お前、俺に全然興味ナシってワケでもねーんだろ?」

突然突拍子もないことを言い出した横山に、雪は開いた口が塞がらない。
「はぁ??!!」

横山は雪が自分の方を向いて足を止めているのをいいことに、ニヤリと笑みを浮かべて話し始めた。
「誰も俺のことなんて気にも留めなかったのに、お前だけ俺に話し掛けて、慰めてくれたじゃんか。
お前が俺の真心を誤解してちょっとこじれた時期もあったけど‥最近じゃ青田の本当の姿を教えてやったろう?
お前のこと、大切に思ってるんだよ」

横山は物憂げな表情で雪に相対し、まるで愛を語るように甘い口調で話を続けた。
「お前ってちょっとひねくれてるから、いつも悪く考え過ぎる癖あるよな。それってマジ哀しくね?」
「何の話よ?!あんたマジでおかしいんじゃないの?!」

雪は横山が何を言っているのか、まるで理解出来なかった。しかし彼は何も疑うことなく、更に話を続けてくる。
「俺、スゲェ変わったよ。今や友達も沢山いるし、一人の女とだけ付き合って‥。
俺もA大生だし、実家結構裕福よ?青田だけが金持ちなワケじゃねーって。
この程度なら、彼氏としてはかなり良いスペックじゃね?」

まるで見当違いな話を続ける横山。雪は本当に意味が分からなかった。
「青田はもうすぐ卒業だし、したら自分とつり合う女選ぶっしょ。
お前とずっと付き合うワケねーじゃん?現実的に考えろよ」

そして横山は話を続けつつ、ジリジリと雪に近寄り始めた。
「聞けよ。直美さんとは間もなく別れる。
お前も俺のことがずっと気になってるから、俺を追ってここまでするんだろ?
俺に関心無いなら、こんなことしないもんな?」

息がかかるほど近づいた横山に、雪はパンチを繰り出した。
しかし横山はそれをヒラリとかわす。
「黙れっ!てか近寄んな!」

雪は激怒していた。横山に向かって、青筋を立ててがなり立てる。
「慰めたって?それくらいの慰めなんて、誰にでもするっつの!
あんたなんてねぇ、私にとっちゃどうでもいい存在なんだよ!」

そして雪はポケットの中に手を突っ込むと、そこに入っている物を手当たり次第に投げつけた。
「あの日アンタにお菓子をあげたのなんて、鳩に餌やったようなもんだから!
ほら食え!思う存分食えっ!!」

アメやらチョコやらを投げつけられ、横山は顔を歪めた。
しかし雪の口は止まらない。横山に向かって、怒りに震えながら言葉を続ける。
「だから変なことで気を引こうとしないで!それが”気がある”って勘違いするのも止めて。
もう私もおとなしくしてるばかりじゃないわよー‥」

雪は警告を込めてそう言った。一瞬二人の間には沈黙が流れたが、横山はせせら笑うような態度を見せたかと思うと、
再び雪に向かって口元を歪めながら話し出す。
「は?”おとなしく”しなかったらどうなるっての?お前にビクビクしなきゃいけねーの?
ずっとこんな風に追いかけるってか?てかそれ俺にとっては却って好都合だから!」

しかし雪は怯まない。強い眼光で横山を射ると、彼に向かって警告を続ける。
「私がそんな間抜けに見える?」

「今日のことは、アンタのせいで私がどんな気持ちになったか、同じことをして味わってもらう為だった。
それでもアンタは目を覚ませないみたいね。それじゃもう一度警告するわ。
マジでこんなこと、もう止めてよ!」

怒りを込めた雪からの警告。しかし横山はふざけた態度で、彼女に対してこう言った。
「は~?ヤ~ダね~」

そして横山はニヤニヤした笑みを浮かべると、再び雪に近づいてこう口にし始めた。
「俺ってば今日お前に可能性を見出しちゃったから、更に頑張っちゃうもんね~!
”十回叩いて倒れない木は無い”って言葉もあんだろ?」

去年から変わらない、懲りない横山。
言葉の通じないモンスターを前にしているような、この絶望感。
「‥ずっとそのつもりってわけね‥」

静かにそう呟いた雪に、横山は先ほど雪から驚かされたことについて軽く文句を口にし、息を吐いた。
プライドを傷つけられたと言って。
雪は俯いたまま、鋭い眼差しを横山に向けると、滾る怒りを言葉に乗せて口を開いた。
「バカにしないで。アンタはどうかしてる。アンタの相手をして時間を無駄にする私も大馬鹿者だけど。
だけどアンタと私、どっちがバカでどっちがそうじゃないか、今後様子を見ようじゃないの」

強いプレッシャーを掛けた雪からの警告であったが、横山は雪の携帯を持ち上げながら軽い調子でそれを流した。
「ハイハイ。どっちが勝つかね~。
またこの間みたいに録音するのしないだのってバカな真似はしねーよな?」

雪は怒りながら、早く返せと言って横山の持つ携帯に手を伸ばした。
すると雪から近づいて来たことを良いことに、横山は雪の顔に自分の顔を近づけ、彼女の髪に触れて言った。
「まぁまぁ。そうツレないのは止めて、俺の気持ちも少しは分かってくれよ‥」

甘い囁きのような横山の台詞に、雪は全身に鳥肌が立った。
横山の手から携帯を奪い返すと、力任せにそれを横山の顔に向かって振るう。
「こんのクソッタレがっ!」

その攻撃で横山は口から血を流したが、フッと微笑むとそのまま雪に背を向けた。
「ふ‥じゃあな」
「消えてなくなれ
!」

雪は去って行く横山の後ろ姿を暫くの間睨めつけていたが、
彼が見えなくなると、植え込みのある方向を振り返った。

そして雪からの視線を確認した彼等は、植え込みの中からガサリと姿を現した。
伊吹聡美と福井太一。携帯を手にした二人は、雪の方を見て固い表情で頷いた。

二人は横山が居なくなったことを確認すると、雪と合流し先ほど録った映像を見せ合った。
そこには雪と横山の相対場面がハッキリと録画されている。

しつこい横山の姿を見て聡美は、「怖気が立つ」と言って身体を擦る。
暫し沈黙を守っていた太一も、額に青筋を立てて怒りに震えていた。
「さっきからマジで殴りたかったッス‥。けど今は理性を守らねば‥」
「マジでダメだっつーの!」

ブルブルする太一をなだめつつ、聡美は携帯を掲げて雪に提案する。
「とにかく音はちょっと聞きづらいけど、
このレベルなら初めにしては結構強い証拠になるんじゃないの?太一も写真超撮ったし」

しかし雪は冷静な表情でかぶりを振る。
「これだけじゃダメ。もっと集めないと」

残念ながら、聡美もそれに同意せざるを得なかった。会話もいまいち聞こえないし、
”ホコリを叩いてあげていただけ”などと横山が主張すれば、このシチュエーションはそう見えなくも無い。
雪は厳しい表情で、自分の見解を冷静に口に出す。
「去年と同じじゃダメ。しっかり確実に追い詰めなきゃ」

横山の持つ狂った見解を、誰が見ても否定出来るだけの証拠を集めなければならない。
静かなる雪の決意に、聡美が「勝つのは自分達だ」と言って燃えている。

その隣で太一は、腕組みの姿勢で一人考えていた。
雪の言うように確実な証拠が必要だが、言い逃れが出来得るような動画や録音ではおそらく不十分だ。

太一は横山が去って行った方向を睨みながら、更なる考えに耽っていた。
雪だけではなく自分にとっても忌々しい存在の横山を、何とか追い詰める方法は無いものか‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<狂った見解>でした。
雪から携帯電話で殴られ、口から血を流す横山が‥

↓これに見える‥(笑)

てか雪ちゃんのポケットにはアメとかチョコが入ってるんですね^^ちょっと意外w
次回は<逸らせぬ視線>です。
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図書館を出た横山は、前方を早足で歩く雪にようやく追いついた。
彼女の名前を何度も呼ぶが、雪は一向に振り向こうとはしない。
「待てって言ってんだよ!」

横山は雪の腕を掴むと、話があるんだと言って食い下がった。
こんなことをするのは止めて、俺の話を聞いてもう一度考えてくれ、と。
「これ以上何を聞けっての?!困らすのはもう止めて!!」

雪はそんな横山の手を振り払い、携帯が入れてあるポケットに手を突っ込んだ。
するとその仕草を見逃さなかった横山が、彼女の手から携帯を奪う。

雪は横山に手を伸ばして激高したが、横山は「話を聞いてくれたら返す」と言って携帯を自分のポケットに仕舞った。
そして横山は雪をじっと見つめると、確認するようにこう口にした。
「お前、俺に全然興味ナシってワケでもねーんだろ?」

突然突拍子もないことを言い出した横山に、雪は開いた口が塞がらない。
「はぁ??!!」

横山は雪が自分の方を向いて足を止めているのをいいことに、ニヤリと笑みを浮かべて話し始めた。
「誰も俺のことなんて気にも留めなかったのに、お前だけ俺に話し掛けて、慰めてくれたじゃんか。
お前が俺の真心を誤解してちょっとこじれた時期もあったけど‥最近じゃ青田の本当の姿を教えてやったろう?
お前のこと、大切に思ってるんだよ」

横山は物憂げな表情で雪に相対し、まるで愛を語るように甘い口調で話を続けた。
「お前ってちょっとひねくれてるから、いつも悪く考え過ぎる癖あるよな。それってマジ哀しくね?」
「何の話よ?!あんたマジでおかしいんじゃないの?!」

雪は横山が何を言っているのか、まるで理解出来なかった。しかし彼は何も疑うことなく、更に話を続けてくる。
「俺、スゲェ変わったよ。今や友達も沢山いるし、一人の女とだけ付き合って‥。
俺もA大生だし、実家結構裕福よ?青田だけが金持ちなワケじゃねーって。
この程度なら、彼氏としてはかなり良いスペックじゃね?」


まるで見当違いな話を続ける横山。雪は本当に意味が分からなかった。
「青田はもうすぐ卒業だし、したら自分とつり合う女選ぶっしょ。
お前とずっと付き合うワケねーじゃん?現実的に考えろよ」

そして横山は話を続けつつ、ジリジリと雪に近寄り始めた。
「聞けよ。直美さんとは間もなく別れる。
お前も俺のことがずっと気になってるから、俺を追ってここまでするんだろ?
俺に関心無いなら、こんなことしないもんな?」

息がかかるほど近づいた横山に、雪はパンチを繰り出した。
しかし横山はそれをヒラリとかわす。
「黙れっ!てか近寄んな!」

雪は激怒していた。横山に向かって、青筋を立ててがなり立てる。
「慰めたって?それくらいの慰めなんて、誰にでもするっつの!
あんたなんてねぇ、私にとっちゃどうでもいい存在なんだよ!」

そして雪はポケットの中に手を突っ込むと、そこに入っている物を手当たり次第に投げつけた。
「あの日アンタにお菓子をあげたのなんて、鳩に餌やったようなもんだから!
ほら食え!思う存分食えっ!!」

アメやらチョコやらを投げつけられ、横山は顔を歪めた。
しかし雪の口は止まらない。横山に向かって、怒りに震えながら言葉を続ける。
「だから変なことで気を引こうとしないで!それが”気がある”って勘違いするのも止めて。
もう私もおとなしくしてるばかりじゃないわよー‥」

雪は警告を込めてそう言った。一瞬二人の間には沈黙が流れたが、横山はせせら笑うような態度を見せたかと思うと、
再び雪に向かって口元を歪めながら話し出す。
「は?”おとなしく”しなかったらどうなるっての?お前にビクビクしなきゃいけねーの?
ずっとこんな風に追いかけるってか?てかそれ俺にとっては却って好都合だから!」

しかし雪は怯まない。強い眼光で横山を射ると、彼に向かって警告を続ける。
「私がそんな間抜けに見える?」

「今日のことは、アンタのせいで私がどんな気持ちになったか、同じことをして味わってもらう為だった。
それでもアンタは目を覚ませないみたいね。それじゃもう一度警告するわ。
マジでこんなこと、もう止めてよ!」

怒りを込めた雪からの警告。しかし横山はふざけた態度で、彼女に対してこう言った。
「は~?ヤ~ダね~」

そして横山はニヤニヤした笑みを浮かべると、再び雪に近づいてこう口にし始めた。
「俺ってば今日お前に可能性を見出しちゃったから、更に頑張っちゃうもんね~!
”十回叩いて倒れない木は無い”って言葉もあんだろ?」

去年から変わらない、懲りない横山。
言葉の通じないモンスターを前にしているような、この絶望感。
「‥ずっとそのつもりってわけね‥」

静かにそう呟いた雪に、横山は先ほど雪から驚かされたことについて軽く文句を口にし、息を吐いた。
プライドを傷つけられたと言って。
雪は俯いたまま、鋭い眼差しを横山に向けると、滾る怒りを言葉に乗せて口を開いた。
「バカにしないで。アンタはどうかしてる。アンタの相手をして時間を無駄にする私も大馬鹿者だけど。
だけどアンタと私、どっちがバカでどっちがそうじゃないか、今後様子を見ようじゃないの」

強いプレッシャーを掛けた雪からの警告であったが、横山は雪の携帯を持ち上げながら軽い調子でそれを流した。
「ハイハイ。どっちが勝つかね~。
またこの間みたいに録音するのしないだのってバカな真似はしねーよな?」

雪は怒りながら、早く返せと言って横山の持つ携帯に手を伸ばした。
すると雪から近づいて来たことを良いことに、横山は雪の顔に自分の顔を近づけ、彼女の髪に触れて言った。
「まぁまぁ。そうツレないのは止めて、俺の気持ちも少しは分かってくれよ‥」

甘い囁きのような横山の台詞に、雪は全身に鳥肌が立った。
横山の手から携帯を奪い返すと、力任せにそれを横山の顔に向かって振るう。
「こんのクソッタレがっ!」

その攻撃で横山は口から血を流したが、フッと微笑むとそのまま雪に背を向けた。
「ふ‥じゃあな」
「消えてなくなれ


雪は去って行く横山の後ろ姿を暫くの間睨めつけていたが、
彼が見えなくなると、植え込みのある方向を振り返った。

そして雪からの視線を確認した彼等は、植え込みの中からガサリと姿を現した。
伊吹聡美と福井太一。携帯を手にした二人は、雪の方を見て固い表情で頷いた。

二人は横山が居なくなったことを確認すると、雪と合流し先ほど録った映像を見せ合った。
そこには雪と横山の相対場面がハッキリと録画されている。

しつこい横山の姿を見て聡美は、「怖気が立つ」と言って身体を擦る。
暫し沈黙を守っていた太一も、額に青筋を立てて怒りに震えていた。
「さっきからマジで殴りたかったッス‥。けど今は理性を守らねば‥」
「マジでダメだっつーの!」

ブルブルする太一をなだめつつ、聡美は携帯を掲げて雪に提案する。
「とにかく音はちょっと聞きづらいけど、
このレベルなら初めにしては結構強い証拠になるんじゃないの?太一も写真超撮ったし」

しかし雪は冷静な表情でかぶりを振る。
「これだけじゃダメ。もっと集めないと」

残念ながら、聡美もそれに同意せざるを得なかった。会話もいまいち聞こえないし、
”ホコリを叩いてあげていただけ”などと横山が主張すれば、このシチュエーションはそう見えなくも無い。
雪は厳しい表情で、自分の見解を冷静に口に出す。
「去年と同じじゃダメ。しっかり確実に追い詰めなきゃ」

横山の持つ狂った見解を、誰が見ても否定出来るだけの証拠を集めなければならない。
静かなる雪の決意に、聡美が「勝つのは自分達だ」と言って燃えている。

その隣で太一は、腕組みの姿勢で一人考えていた。
雪の言うように確実な証拠が必要だが、言い逃れが出来得るような動画や録音ではおそらく不十分だ。

太一は横山が去って行った方向を睨みながら、更なる考えに耽っていた。
雪だけではなく自分にとっても忌々しい存在の横山を、何とか追い詰める方法は無いものか‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<狂った見解>でした。
雪から携帯電話で殴られ、口から血を流す横山が‥

↓これに見える‥(笑)

てか雪ちゃんのポケットにはアメとかチョコが入ってるんですね^^ちょっと意外w
次回は<逸らせぬ視線>です。
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