赤山蓮は、日が沈んでから外に出た。
しかしその表情は暗く、蓮は深く息を吐きながら頭をぐしゃぐしゃと掻く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/7e/18e44da0efddfe1ac30f70edad7fbcdf.jpg)
昨日目にした絵が頭から離れない。
恵のスケッチブックに詳細に描かれた、姉の彼氏の絵‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/3b/c76567e36162a00915bce6be90bb56b3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/39/0d81bac4d937391e3ab7a1a6889be55e.jpg)
蓮は溜息を吐きながら、マンションの玄関前の階段を下りた。
するとそこに、腕組みした彼女が待ち構えている。
「今日は出て来たね?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/62/98118fe39715aefe703b25ccad867e1f.jpg)
「昨日はシカトだったけど」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/a6/21707bee561f11f8c2c145de9b1f391a.jpg)
あのカフェでの一件以来、蓮はあからさまに恵を避けていた。昨日は恵の呼び出しがかかっても、彼はそれをシカトした。
しかしさすがに今日は無視出来なかったらしく、蓮は気まずい気持ちを押して出てきたのだった。
恵から目を逸らしながら頬を掻く蓮に、恵は正面からぶつかって行く。
「蓮、本当にどうしちゃったの?あたしが雪ねぇの彼の絵を描いてたからって、
なんでこんな風にぎくしゃくするの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/54/2f21d45f5e0a1d796ae30c901d537a6b.jpg)
蓮は目の前の恵から、唇を噛んで顔を逸らした。
心が揺れて、紡ぐ言葉が見つからない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/6e/9e3a72f2c77e9d284e5aa4166f8da33d.jpg)
恵は蓮が考えていることを推測して、怒ったような表情で彼を見つめた。
後ろめたいことなど無いと、恵自身が一番良く分かっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b0/d4c32de5f12b0c914cbbfc55553e408f.jpg)
恵は沈黙する蓮に構わず、大きな声で自分の気持ちを口にした。
「そうよ!その通りよ!あの先輩を初めて見た時、めちゃめちゃカッコ良いと思ったよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/56/eeb01d657544c710eeebeb8149785754.jpg)
「けど芸能人に対して思うようにあの先輩の顔が好きだっただけで、
雪ねぇの彼氏に対してそういう感情抱くわけないでしょ?!あたしは雪ねぇに対して顔向け出来ないことをしたつもりはない!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/1a/9de2af61bf99c74e74d3b8110dd05d85.jpg)
恵は蓮が、”雪ねぇの彼氏”に気があると誤解していることが許せなかった。
だから正面切って彼の目を見て、ハッキリと今本当の気持ちを口にしたのだ。
しかし蓮は、まだ彼女を信じられなかった。というよりも、そのことよりも気になっていることが蓮を憂鬱にさせていた。
「顔が気に入ったって‥それでもずっと描き続けてるってことは、
気があるってことじゃんか‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/fa/0b9ee2263b42381e2059d40e7525eedb.jpg)
蓮は、恵が姉の彼氏‥もとい青田淳に気があることの方がショックだった。
彼の絵を描き、手元にずっと持っていることが、何よりもショックだったのだ。
恵は蓮の言葉とその態度に、少し苛立って言葉を続けた。
「違うってば!てかどうして蓮がこんなに不機嫌になるの?意味分かんないよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/64/7b0be0feab60cca17e850d67eea66a7c.jpg)
恵はまだ彼の本心には気がつかない。
互いが持っている少し内容の違う誤解が、掛け違えたボタンのように噛み合わずぎくしゃくする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/8b/9fbef3cda36d5cb5ea9a4a261df99695.jpg)
そしてその恵の言葉を最後に、二人の間には沈黙が落ちた。
暫し立ち尽くした蓮は、彼女と目を合わせぬまま静かにこう口にする。
「てかさ、お前は俺が何でこんなに怒ってんのか分かんないだろ?
俺のことなんて何とも思ってないんだから」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/fd/e3f6ab919e4d2dc52436d7eb7ff1843e.jpg)
その蓮の告白に、恵は目を見開いた。
彼の心を悩ませている問題が、今ようやく理解出来たのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/05/a00f226888f1be899a273629a8a03a4e.jpg)
そう言ったきり「もう帰る」と、項垂れたまま建物の中へ戻ろうとする蓮だったが、
恵は彼の背中に向けて力いっぱいスケッチブックを投げつけた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/eb/0641caf4837643416ab888b85baf9075.jpg)
恵は怒ったように彼に背を向け、階段を下りながら振り返ってこう口にした。
「人の絵を勝手に見るんなら、最後までちゃんと見れば?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/c0/a8f5ec0152ee403b57a8d691942f0253.jpg)
そのまま足早に去る恵の後ろ姿を目で追いながら、蓮は溜息を吐きつつスケッチブックを開いた。
そこにはやはり青田淳の絵が描かれている。
「だからこんなん見せられてどうしろって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/1c/8f85e57778fb796dff1e42fe99fff38a.jpg)
パラッ、と次のページを捲ると、
静かに微笑む青田淳の絵がまた描かれていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/d4/69d3e0a74024f62feb4916efd832fc94.jpg)
しかし次のページを捲って目に入って来たのは、
青田淳のようで青田淳でない人物だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/d4/e132ea3f632a86fa3ece37c408586a9b.jpg)
そしてそのページ全体に視線を走らせた蓮は、はっと息を飲んだ。
そこに描かれている人物はまさに、自分だったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/b6/5c225a33dc684061fce7e787e589591c.jpg)
それは、恵の心の中を写し取った気ままなグラフィティーだった。
そして今その中心で微笑んでいるのは、他でもない自分なのだー‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/0f/662f77b7198a0085df601d43d05d2bd6.jpg)
蓮は走った。
スケッチブックを持ったまま、彼女が去って行った方向へ全速力で。
「キーンカーン!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/fe/5a9410c13d1da9aad0ac0a8a609cba20.jpg)
恵の後ろ姿を見つけた蓮は大きな声でその愛称を呼ぶと、息を切らせて彼女に駆け寄った。
嬉しくて堪らないという表情で、スケッチブックを自分のその顔の横で翳す。
「この絵俺だろ?!俺だよね?!俺じゃん!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/89/4402c6a7b4bd8560e09acb4edd975252.jpg)
分かりやすくテンションの上がった蓮を前にして、
恵は無言でそんな彼をじっと見ていたが、やがてその手を軽く振り払ってこう言った。
「知らない!好きなように思ってれば?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/ce/c31744f6b3913a7fe5acede45b54725b.jpg)
フン、と言ってそのまま背を向ける恵の後ろで、蓮のテンションは更に上昇した。
この絵が自分であることを否定しない彼女の心の中心に、今まさに自分が居るのだ‥!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/91/d75d775abda2acfc1f4b1525315ace82.jpg)
蓮は恵に駆け寄ると、彼女の周りをくるくると踊るように舞いながら話し掛けた。
「なぁなぁ!俺明日一緒に大学行ってもいい?試験期間だけどさ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/00/9df4b4112d4c5df1a8cbaaf4a853459b.jpg)
何度も返事を促す蓮に、恵は冷静な態度で一言口にした。
「いいよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
蓮は心を踊らせながら、もう一度恵に確認する。
「マジ? マジでいいの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/88/630d54303b4909a33be309eca49199a9.jpg)
恵は少し微笑みながら、再びこう口にする。
「うん。いいよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a6/210ad4ba4e22f8abf2a43a3eeedbc3bb.jpg)
いい、には「好い」という意味もある。
蓮は恵の口にした言葉の中にそのニュアンスを汲み取って、ガッツポーズで喜びに震えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/de/2bab2aa728d65356badc9e2361d6cd0e.jpg)
そして二人は肩を並べながら、秋の夜道をゆっくりと歩いた。
蓮は未来の約束を次々と口にし、恵はそれに笑顔で頷く。
「そんで晩飯も一緒に食おうな!お前の好きなもん食いにいこ!」
「そうだね」
「試験終わったら遊園地行こうぜ。それから映画見たいのあんだ。一緒に行こ?」
「うん」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/22/b27c9e671cfa62178791a489c7762d84.jpg)
やむを得ない事情から、(仮)のカップルだった恵と蓮は、今日晴れて正式なカップルとなった。
二人の間を阻んでいた誤解も括弧も消え去って、二人は互いに笑顔を浮かべ共に歩く。
これから先に楽しいことが沢山待ち受けていると思うと、蓮の心はウキウキと踊るようだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<カップル誕生>でした。
(仮)が外れましたね~^^おめでとう蓮と恵!
そして今回の肝となるここ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
恵は「チョアヨ」と言っています。
この「チョアヨ」は「良い、好き」という意味で、ここではWミーニングになっています。
蓮の提案に「良いです」という意味と、「好きよ」という意味ですね。
記事では直訳のままにしましたが、意訳するとこんな感じだと思います↓
・・・・・・・・・・・・・・
蓮は恵に駆け寄ると、彼女の周りをくるくると踊るように舞いながら話し掛けた。
「なぁなぁ!俺明日一緒に大学行ってもいい?試験期間だけどさ。
一緒に登校とか、お前楽しくって好きだろ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/00/9df4b4112d4c5df1a8cbaaf4a853459b.jpg)
何度も返事を促す蓮に、恵は冷静な態度で一言口にした。
「うん、好きよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
蓮は心を踊らせながら、もう一度恵に確認する。
「マジ? マジで好き?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/88/630d54303b4909a33be309eca49199a9.jpg)
恵は少し微笑みながら、再びこう口にする。
「うん。好きだよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a6/210ad4ba4e22f8abf2a43a3eeedbc3bb.jpg)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やはり「好き」という言葉が出ると、その後の蓮のガッツポーズの喜びがより伝わってくる気がしますよね。
皆様はどちらがお好きですか~^^
次回は<布石>です。
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しかしその表情は暗く、蓮は深く息を吐きながら頭をぐしゃぐしゃと掻く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/7e/18e44da0efddfe1ac30f70edad7fbcdf.jpg)
昨日目にした絵が頭から離れない。
恵のスケッチブックに詳細に描かれた、姉の彼氏の絵‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/3b/c76567e36162a00915bce6be90bb56b3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/39/0d81bac4d937391e3ab7a1a6889be55e.jpg)
蓮は溜息を吐きながら、マンションの玄関前の階段を下りた。
するとそこに、腕組みした彼女が待ち構えている。
「今日は出て来たね?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/62/98118fe39715aefe703b25ccad867e1f.jpg)
「昨日はシカトだったけど」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/a6/21707bee561f11f8c2c145de9b1f391a.jpg)
あのカフェでの一件以来、蓮はあからさまに恵を避けていた。昨日は恵の呼び出しがかかっても、彼はそれをシカトした。
しかしさすがに今日は無視出来なかったらしく、蓮は気まずい気持ちを押して出てきたのだった。
恵から目を逸らしながら頬を掻く蓮に、恵は正面からぶつかって行く。
「蓮、本当にどうしちゃったの?あたしが雪ねぇの彼の絵を描いてたからって、
なんでこんな風にぎくしゃくするの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/54/2f21d45f5e0a1d796ae30c901d537a6b.jpg)
蓮は目の前の恵から、唇を噛んで顔を逸らした。
心が揺れて、紡ぐ言葉が見つからない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/6e/9e3a72f2c77e9d284e5aa4166f8da33d.jpg)
恵は蓮が考えていることを推測して、怒ったような表情で彼を見つめた。
後ろめたいことなど無いと、恵自身が一番良く分かっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b0/d4c32de5f12b0c914cbbfc55553e408f.jpg)
恵は沈黙する蓮に構わず、大きな声で自分の気持ちを口にした。
「そうよ!その通りよ!あの先輩を初めて見た時、めちゃめちゃカッコ良いと思ったよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/56/eeb01d657544c710eeebeb8149785754.jpg)
「けど芸能人に対して思うようにあの先輩の顔が好きだっただけで、
雪ねぇの彼氏に対してそういう感情抱くわけないでしょ?!あたしは雪ねぇに対して顔向け出来ないことをしたつもりはない!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/1a/9de2af61bf99c74e74d3b8110dd05d85.jpg)
恵は蓮が、”雪ねぇの彼氏”に気があると誤解していることが許せなかった。
だから正面切って彼の目を見て、ハッキリと今本当の気持ちを口にしたのだ。
しかし蓮は、まだ彼女を信じられなかった。というよりも、そのことよりも気になっていることが蓮を憂鬱にさせていた。
「顔が気に入ったって‥それでもずっと描き続けてるってことは、
気があるってことじゃんか‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/fa/0b9ee2263b42381e2059d40e7525eedb.jpg)
蓮は、恵が姉の彼氏‥もとい青田淳に気があることの方がショックだった。
彼の絵を描き、手元にずっと持っていることが、何よりもショックだったのだ。
恵は蓮の言葉とその態度に、少し苛立って言葉を続けた。
「違うってば!てかどうして蓮がこんなに不機嫌になるの?意味分かんないよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/64/7b0be0feab60cca17e850d67eea66a7c.jpg)
恵はまだ彼の本心には気がつかない。
互いが持っている少し内容の違う誤解が、掛け違えたボタンのように噛み合わずぎくしゃくする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/8b/9fbef3cda36d5cb5ea9a4a261df99695.jpg)
そしてその恵の言葉を最後に、二人の間には沈黙が落ちた。
暫し立ち尽くした蓮は、彼女と目を合わせぬまま静かにこう口にする。
「てかさ、お前は俺が何でこんなに怒ってんのか分かんないだろ?
俺のことなんて何とも思ってないんだから」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/fd/e3f6ab919e4d2dc52436d7eb7ff1843e.jpg)
その蓮の告白に、恵は目を見開いた。
彼の心を悩ませている問題が、今ようやく理解出来たのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/05/a00f226888f1be899a273629a8a03a4e.jpg)
そう言ったきり「もう帰る」と、項垂れたまま建物の中へ戻ろうとする蓮だったが、
恵は彼の背中に向けて力いっぱいスケッチブックを投げつけた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/eb/0641caf4837643416ab888b85baf9075.jpg)
恵は怒ったように彼に背を向け、階段を下りながら振り返ってこう口にした。
「人の絵を勝手に見るんなら、最後までちゃんと見れば?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/c0/a8f5ec0152ee403b57a8d691942f0253.jpg)
そのまま足早に去る恵の後ろ姿を目で追いながら、蓮は溜息を吐きつつスケッチブックを開いた。
そこにはやはり青田淳の絵が描かれている。
「だからこんなん見せられてどうしろって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/67/bf83d34a116dae0bbc67b2caabacd880.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/1c/8f85e57778fb796dff1e42fe99fff38a.jpg)
パラッ、と次のページを捲ると、
静かに微笑む青田淳の絵がまた描かれていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/d4/69d3e0a74024f62feb4916efd832fc94.jpg)
しかし次のページを捲って目に入って来たのは、
青田淳のようで青田淳でない人物だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/d4/e132ea3f632a86fa3ece37c408586a9b.jpg)
そしてそのページ全体に視線を走らせた蓮は、はっと息を飲んだ。
そこに描かれている人物はまさに、自分だったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/b6/5c225a33dc684061fce7e787e589591c.jpg)
それは、恵の心の中を写し取った気ままなグラフィティーだった。
そして今その中心で微笑んでいるのは、他でもない自分なのだー‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/0f/662f77b7198a0085df601d43d05d2bd6.jpg)
蓮は走った。
スケッチブックを持ったまま、彼女が去って行った方向へ全速力で。
「キーンカーン!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/fe/5a9410c13d1da9aad0ac0a8a609cba20.jpg)
恵の後ろ姿を見つけた蓮は大きな声でその愛称を呼ぶと、息を切らせて彼女に駆け寄った。
嬉しくて堪らないという表情で、スケッチブックを自分のその顔の横で翳す。
「この絵俺だろ?!俺だよね?!俺じゃん!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/89/4402c6a7b4bd8560e09acb4edd975252.jpg)
分かりやすくテンションの上がった蓮を前にして、
恵は無言でそんな彼をじっと見ていたが、やがてその手を軽く振り払ってこう言った。
「知らない!好きなように思ってれば?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/ce/c31744f6b3913a7fe5acede45b54725b.jpg)
フン、と言ってそのまま背を向ける恵の後ろで、蓮のテンションは更に上昇した。
この絵が自分であることを否定しない彼女の心の中心に、今まさに自分が居るのだ‥!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/91/d75d775abda2acfc1f4b1525315ace82.jpg)
蓮は恵に駆け寄ると、彼女の周りをくるくると踊るように舞いながら話し掛けた。
「なぁなぁ!俺明日一緒に大学行ってもいい?試験期間だけどさ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/00/9df4b4112d4c5df1a8cbaaf4a853459b.jpg)
何度も返事を促す蓮に、恵は冷静な態度で一言口にした。
「いいよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
蓮は心を踊らせながら、もう一度恵に確認する。
「マジ? マジでいいの?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/88/630d54303b4909a33be309eca49199a9.jpg)
恵は少し微笑みながら、再びこう口にする。
「うん。いいよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a6/210ad4ba4e22f8abf2a43a3eeedbc3bb.jpg)
いい、には「好い」という意味もある。
蓮は恵の口にした言葉の中にそのニュアンスを汲み取って、ガッツポーズで喜びに震えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/de/2bab2aa728d65356badc9e2361d6cd0e.jpg)
そして二人は肩を並べながら、秋の夜道をゆっくりと歩いた。
蓮は未来の約束を次々と口にし、恵はそれに笑顔で頷く。
「そんで晩飯も一緒に食おうな!お前の好きなもん食いにいこ!」
「そうだね」
「試験終わったら遊園地行こうぜ。それから映画見たいのあんだ。一緒に行こ?」
「うん」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/22/b27c9e671cfa62178791a489c7762d84.jpg)
やむを得ない事情から、(仮)のカップルだった恵と蓮は、今日晴れて正式なカップルとなった。
二人の間を阻んでいた誤解も括弧も消え去って、二人は互いに笑顔を浮かべ共に歩く。
これから先に楽しいことが沢山待ち受けていると思うと、蓮の心はウキウキと踊るようだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<カップル誕生>でした。
(仮)が外れましたね~^^おめでとう蓮と恵!
そして今回の肝となるここ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
恵は「チョアヨ」と言っています。
この「チョアヨ」は「良い、好き」という意味で、ここではWミーニングになっています。
蓮の提案に「良いです」という意味と、「好きよ」という意味ですね。
記事では直訳のままにしましたが、意訳するとこんな感じだと思います↓
・・・・・・・・・・・・・・
蓮は恵に駆け寄ると、彼女の周りをくるくると踊るように舞いながら話し掛けた。
「なぁなぁ!俺明日一緒に大学行ってもいい?試験期間だけどさ。
一緒に登校とか、お前楽しくって好きだろ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/00/9df4b4112d4c5df1a8cbaaf4a853459b.jpg)
何度も返事を促す蓮に、恵は冷静な態度で一言口にした。
「うん、好きよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/be/13d2a10ff3eeb1b8bbc7b9270430fccd.jpg)
蓮は心を踊らせながら、もう一度恵に確認する。
「マジ? マジで好き?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/88/630d54303b4909a33be309eca49199a9.jpg)
恵は少し微笑みながら、再びこう口にする。
「うん。好きだよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a6/210ad4ba4e22f8abf2a43a3eeedbc3bb.jpg)
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やはり「好き」という言葉が出ると、その後の蓮のガッツポーズの喜びがより伝わってくる気がしますよね。
皆様はどちらがお好きですか~^^
次回は<布石>です。
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