雪は帰りの地下鉄のホームで電車を待ちながら、一人息を吐いてげっそりしていた。
もう死にそう‥マジで‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/6f/c8f0f7dbeb96fba307684315b5f007f2.jpg)
ただでさえ中間試験で頭が痛いというのに、横山からは再びストーカー行為をされ清水香織からは変に絡まれ‥。
再び繰り返されるさざ波のような災難に、雪は閉口していた。
すると雪の耳に、聞き慣れた声が聞こえて来た。
「お~いダメ~ジヘア~!よっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/8e/0b4827cb6d1558d0b03bb43dd033b6af.jpg)
河村亮だった。彼は手を振りながら雪に近づくと、ニヤリと笑って話し掛ける。
「何だ?図書館行くんじゃなかったのか?」
「‥止めました。考えてみたら行かない方がいいです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/12/d8362b1df689282be3f65642f01b5b47.jpg)
雪は横山のことを思い出してゲンナリしたが、
気分を変えて亮に「ピアノの方は上手く行ってますか^^」と質問した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/11/f9dfd7045b6446ef4c9a5fa1cc95669b.jpg)
亮は顔を顰めながら「毎日ゲンコツ食らってばっかだ  ̄- ̄」と答え、
そのまま二人は沈黙した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/fd/2775206f8f97ae6eb057ec98d35bc2f0.jpg)
俯きがちに小さく溜息を吐く雪を見て、亮の脳裏に先日目にした光景が浮かんで来た。
夜道で淳と雪が言い合いをしていた。
淳の元から逃げるように去る彼女は、苦しそうな表情を浮かべていた‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/eb/585e40da84869d97da90e86c152445ee.jpg)
どこか落ち込んでいるように見える雪を前に、亮は心のままに口を開く。
「お前もしかして‥淳と何か‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/84/dbcae9253c768cfd7f678d37880cc0df.jpg)
そう口にしたところで、雪は亮の方を向いた。
彼女の切れ長の大きな目が、亮のことを真っ直ぐに見つめる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/13/570172fed796f25d39e3d7c6b22611ec.jpg)
こう真正面から見つめられては、それ以上聞くのは野暮だと思われた。
亮は首を何度か横に振ると、誤魔化すかのようにストレッチを始める。
「あ、イヤイヤ‥な、仲良くしてっかぁ~?あ~疲れた‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/79/5855519bfe08eaef33b33f1d655def41.jpg)
亮は心の中で、何でこんな質問しちまったんだと己を責めていた。
その後もブツブツと言い訳を口にする亮を見て、雪はフッと軽く笑う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/0f/718c357a4cadfc2aa2bd76e8b3b900e6.jpg)
そして深く溜息を一つ吐くと、観念したように口を開いた。
「やっぱり全部駄々漏れですか‥ちょっと‥あんまり良くなくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/65/334bf405e236f746b859f8a68729bcd9.jpg)
そう言って俯く雪を見て、亮は気まずそうに相槌を打った。そして諭すように言葉を続ける。
「そ、そうか?まぁ、男女の仲にゃ色々あっからな!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/20/846e6fd21b95b0b00042306fbe5b95d2.jpg)
オレには関係ねーけど、と言って亮は取り繕うように笑った。
そんな亮の隣で彼を見上げていた雪は、イタズラな表情で口を開く。
「ねぇ河村氏、思い出してみれば‥初めて会った時、この場所で話し掛けて来ましたよね?
お前青田淳とどういう関係だーって」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/58/4b4c102eabec6ee2f8001add1fc711ef.jpg)
あれはまだ春学期が開講して間もない頃だった。
いきなり現れて不躾な質問をして来た彼の印象は、ハッキリ言って良くなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/fa/d69f813c825deee5a70ef493e0bf149f.jpg)
雪はあの時のことを思い出して、不敵な笑みを浮かべて話を続けた。
「あの時は何このヤンキーと思ったもんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/df/4286f3607156488fcdd25d519514981e.jpg)
そう口にしながらも、雪は心の中で思う。でもイケメンと思ったことは内緒にしておこう‥と。
そんな彼女を見て亮は、意地悪な顔をして彼女に近づいた。
「あぁ?そのヤンキーに頭突きしたお前は何だ?ヤ◯ザか?
見てっとお前はマジで時々ヤバイことやらかすから恐ろしいぜ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/07/455c4215554019b0b45244c64cde4af9.jpg)
亮に頭突きをしたり、塾で男子学生に突っかかって行ったり‥。何かと危なっかしい雪に、亮がそれとなく釘を刺す。
けれど雪も自分からしたくてしたわけではなく、相手が自分を怒らせるからだと口にした。
亮と雪の会話は続く。
「テメーはそんな状況になったら全部のケンカ買うってか?」
「うわ~笑っちゃう!河村氏はムカつく人が居ないってんですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/6e/18ad9b63ddbbe20ad3378a7b4781431a.jpg)
雪はそう言い返した。すぐに手が出る亮から言われたら堪らない。
亮は眉を寄せると、天を仰いで息を吐いた。
「まぁ、いるっちゃいるな。静香のガキと、じゅ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/00/54c3cbac623447f10977dc7ac4e7b81d.jpg)
つい口から淳の名前が出かかり、
ハッと気が付くと気まずそうに雪が亮を見上げていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/a2/89f2a18042a499ae67fd26f365182089.jpg)
いやまぁその‥と亮は言葉を濁し、誤魔化すように渇いた笑いを立てる。
バレバレなのだが‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/d0/3538c28d57ceca0b7de3c86a24424651.jpg)
雪は亮の口から「静香と淳」が出たことで、心の一部が騒ぐのを感じた。
気まずそうに未だ笑いを立てている亮に、それとなく質問をする。
「あのところで‥河村氏のお姉さんと先輩って‥すごく‥仲良いんですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/d6/3bbc4dc207c56a4bca407bacb3360b2e.jpg)
雪からの質問に、亮は「は?」と片眉を上げて聞き返す。
雪は首を横に振りながら、幾分気まずそうに話を続けた。
「あ、いえその‥今はそんなに良い関係じゃないってことは知ってるんですけど、
それでもそれなりには気兼ねの無い関係に思えて‥」
「そりゃまぁ、幼馴染みだから‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/9a/b8f8d3a611c89f02108449f9d0b5c6f9.jpg)
亮はそう口にしてから、彼女の質問の意図を推し量って聞いてみる。
「どーしたよ?気になんのか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/66/6eb2cdaeea548d6abe9bbd332eb570c5.jpg)
雪は「いや、まぁ‥」と言葉を濁してから、黙り込んだ。
気まずそうな表情を浮かべながら、そのまま二人は立ち尽くす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/7a/77dfffe12c0ebde69cf6750a78812c91.jpg)
電車を待つ人波の間で、暫し亮と雪は口を噤んだまま肩を並べて立っていた。
二人の心の中には同じ様に、淳と静香の姿が浮かんでは消える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/63/7a3cb777256a917c8281ca1319da9e7f.jpg)
すると亮が突然、雪の方を向いて拳を固めて見せて来た。強い口調で口を開く。
「おい、もし家の姉ちゃんと喧嘩することがあれば、まずは髪の毛を引っ掴めよ!」
「はい?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/5c/771cd75289b321f61b31a4d458db0d20.jpg)
そう口にした亮は、女同士のケンカのイロハを雪に説き始めた。
まずは先制攻撃として髪の毛を掴み、次は床に引き倒して‥と彼の教えは続く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/1e/aeb819c6767284f72949a7fcb1cda816.jpg)
戸惑う雪に、亮は姉の危険性を切々と説明した。
以前服屋で見かけたあのクレイジー女を思い出せと言って‥。
雪と亮が初めて会ったその場所で、彼等は気を使うこと無く会話した。
時に笑い合い、時に罵り合い‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/4c/f592fc391ffb00239ce01019aaf4dae4.jpg)
そんな親しい空気を震わせて、電車はホームに滑り込んでくる。
亮が初めて彼女に会った時は、電車に乗った彼女をそのまま見送った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/91/080f084bc1f8f730c848004cbf791678.jpg)
そして出会って半年経った今は、共に同じ電車に乗って、同じ街へと帰路を辿る‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<初めて会ったその場所で>でした。
亮と雪の関係も、初めの頃に比べて格段に近づきましたねぇ。
初めて二人が会った場所で繰り広げられる会話だからこそ、その空気の温かさが伝わってきます。
そして初めて亮が話し掛けた時も今も、二人の間に淳が居る、という構図は変わっていませんね。
この図が今後変わることになるのか‥先を見守ることにしましょう‥。
次回は<ピアノとオレとアイツとお前>です。
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もう死にそう‥マジで‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/6f/c8f0f7dbeb96fba307684315b5f007f2.jpg)
ただでさえ中間試験で頭が痛いというのに、横山からは再びストーカー行為をされ清水香織からは変に絡まれ‥。
再び繰り返されるさざ波のような災難に、雪は閉口していた。
すると雪の耳に、聞き慣れた声が聞こえて来た。
「お~いダメ~ジヘア~!よっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/99/83c9e859ae4c51a52aa26d0a6738b1ed.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/8e/0b4827cb6d1558d0b03bb43dd033b6af.jpg)
河村亮だった。彼は手を振りながら雪に近づくと、ニヤリと笑って話し掛ける。
「何だ?図書館行くんじゃなかったのか?」
「‥止めました。考えてみたら行かない方がいいです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/12/d8362b1df689282be3f65642f01b5b47.jpg)
雪は横山のことを思い出してゲンナリしたが、
気分を変えて亮に「ピアノの方は上手く行ってますか^^」と質問した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/11/f9dfd7045b6446ef4c9a5fa1cc95669b.jpg)
亮は顔を顰めながら「毎日ゲンコツ食らってばっかだ  ̄- ̄」と答え、
そのまま二人は沈黙した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/fd/2775206f8f97ae6eb057ec98d35bc2f0.jpg)
俯きがちに小さく溜息を吐く雪を見て、亮の脳裏に先日目にした光景が浮かんで来た。
夜道で淳と雪が言い合いをしていた。
淳の元から逃げるように去る彼女は、苦しそうな表情を浮かべていた‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/eb/585e40da84869d97da90e86c152445ee.jpg)
どこか落ち込んでいるように見える雪を前に、亮は心のままに口を開く。
「お前もしかして‥淳と何か‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/84/dbcae9253c768cfd7f678d37880cc0df.jpg)
そう口にしたところで、雪は亮の方を向いた。
彼女の切れ長の大きな目が、亮のことを真っ直ぐに見つめる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/13/570172fed796f25d39e3d7c6b22611ec.jpg)
こう真正面から見つめられては、それ以上聞くのは野暮だと思われた。
亮は首を何度か横に振ると、誤魔化すかのようにストレッチを始める。
「あ、イヤイヤ‥な、仲良くしてっかぁ~?あ~疲れた‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/79/5855519bfe08eaef33b33f1d655def41.jpg)
亮は心の中で、何でこんな質問しちまったんだと己を責めていた。
その後もブツブツと言い訳を口にする亮を見て、雪はフッと軽く笑う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/0f/718c357a4cadfc2aa2bd76e8b3b900e6.jpg)
そして深く溜息を一つ吐くと、観念したように口を開いた。
「やっぱり全部駄々漏れですか‥ちょっと‥あんまり良くなくて‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/65/334bf405e236f746b859f8a68729bcd9.jpg)
そう言って俯く雪を見て、亮は気まずそうに相槌を打った。そして諭すように言葉を続ける。
「そ、そうか?まぁ、男女の仲にゃ色々あっからな!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/20/846e6fd21b95b0b00042306fbe5b95d2.jpg)
オレには関係ねーけど、と言って亮は取り繕うように笑った。
そんな亮の隣で彼を見上げていた雪は、イタズラな表情で口を開く。
「ねぇ河村氏、思い出してみれば‥初めて会った時、この場所で話し掛けて来ましたよね?
お前青田淳とどういう関係だーって」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/58/4b4c102eabec6ee2f8001add1fc711ef.jpg)
あれはまだ春学期が開講して間もない頃だった。
いきなり現れて不躾な質問をして来た彼の印象は、ハッキリ言って良くなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/fa/d69f813c825deee5a70ef493e0bf149f.jpg)
雪はあの時のことを思い出して、不敵な笑みを浮かべて話を続けた。
「あの時は何このヤンキーと思ったもんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/df/4286f3607156488fcdd25d519514981e.jpg)
そう口にしながらも、雪は心の中で思う。でもイケメンと思ったことは内緒にしておこう‥と。
そんな彼女を見て亮は、意地悪な顔をして彼女に近づいた。
「あぁ?そのヤンキーに頭突きしたお前は何だ?ヤ◯ザか?
見てっとお前はマジで時々ヤバイことやらかすから恐ろしいぜ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/07/455c4215554019b0b45244c64cde4af9.jpg)
亮に頭突きをしたり、塾で男子学生に突っかかって行ったり‥。何かと危なっかしい雪に、亮がそれとなく釘を刺す。
けれど雪も自分からしたくてしたわけではなく、相手が自分を怒らせるからだと口にした。
亮と雪の会話は続く。
「テメーはそんな状況になったら全部のケンカ買うってか?」
「うわ~笑っちゃう!河村氏はムカつく人が居ないってんですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/6e/18ad9b63ddbbe20ad3378a7b4781431a.jpg)
雪はそう言い返した。すぐに手が出る亮から言われたら堪らない。
亮は眉を寄せると、天を仰いで息を吐いた。
「まぁ、いるっちゃいるな。静香のガキと、じゅ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/00/54c3cbac623447f10977dc7ac4e7b81d.jpg)
つい口から淳の名前が出かかり、
ハッと気が付くと気まずそうに雪が亮を見上げていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/a2/89f2a18042a499ae67fd26f365182089.jpg)
いやまぁその‥と亮は言葉を濁し、誤魔化すように渇いた笑いを立てる。
バレバレなのだが‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/d0/3538c28d57ceca0b7de3c86a24424651.jpg)
雪は亮の口から「静香と淳」が出たことで、心の一部が騒ぐのを感じた。
気まずそうに未だ笑いを立てている亮に、それとなく質問をする。
「あのところで‥河村氏のお姉さんと先輩って‥すごく‥仲良いんですか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/d6/3bbc4dc207c56a4bca407bacb3360b2e.jpg)
雪からの質問に、亮は「は?」と片眉を上げて聞き返す。
雪は首を横に振りながら、幾分気まずそうに話を続けた。
「あ、いえその‥今はそんなに良い関係じゃないってことは知ってるんですけど、
それでもそれなりには気兼ねの無い関係に思えて‥」
「そりゃまぁ、幼馴染みだから‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/9a/b8f8d3a611c89f02108449f9d0b5c6f9.jpg)
亮はそう口にしてから、彼女の質問の意図を推し量って聞いてみる。
「どーしたよ?気になんのか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/66/6eb2cdaeea548d6abe9bbd332eb570c5.jpg)
雪は「いや、まぁ‥」と言葉を濁してから、黙り込んだ。
気まずそうな表情を浮かべながら、そのまま二人は立ち尽くす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/7a/77dfffe12c0ebde69cf6750a78812c91.jpg)
電車を待つ人波の間で、暫し亮と雪は口を噤んだまま肩を並べて立っていた。
二人の心の中には同じ様に、淳と静香の姿が浮かんでは消える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/63/7a3cb777256a917c8281ca1319da9e7f.jpg)
すると亮が突然、雪の方を向いて拳を固めて見せて来た。強い口調で口を開く。
「おい、もし家の姉ちゃんと喧嘩することがあれば、まずは髪の毛を引っ掴めよ!」
「はい?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/5c/771cd75289b321f61b31a4d458db0d20.jpg)
そう口にした亮は、女同士のケンカのイロハを雪に説き始めた。
まずは先制攻撃として髪の毛を掴み、次は床に引き倒して‥と彼の教えは続く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/1e/aeb819c6767284f72949a7fcb1cda816.jpg)
戸惑う雪に、亮は姉の危険性を切々と説明した。
以前服屋で見かけたあのクレイジー女を思い出せと言って‥。
雪と亮が初めて会ったその場所で、彼等は気を使うこと無く会話した。
時に笑い合い、時に罵り合い‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/4c/f592fc391ffb00239ce01019aaf4dae4.jpg)
そんな親しい空気を震わせて、電車はホームに滑り込んでくる。
亮が初めて彼女に会った時は、電車に乗った彼女をそのまま見送った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/91/080f084bc1f8f730c848004cbf791678.jpg)
そして出会って半年経った今は、共に同じ電車に乗って、同じ街へと帰路を辿る‥。
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<初めて会ったその場所で>でした。
亮と雪の関係も、初めの頃に比べて格段に近づきましたねぇ。
初めて二人が会った場所で繰り広げられる会話だからこそ、その空気の温かさが伝わってきます。
そして初めて亮が話し掛けた時も今も、二人の間に淳が居る、という構図は変わっていませんね。
この図が今後変わることになるのか‥先を見守ることにしましょう‥。
次回は<ピアノとオレとアイツとお前>です。
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