A大にて彼女(仮)を待っていた彼氏(仮)は、その姿を見るやいなや大きな声でその愛称を呼んだ。
「キ~ンカーン!!」

「彼氏が来たぞーーー!!」

そう口にした赤山蓮は、キンカンこと小西恵の前に躍り出てポーズを決めた。
俺は誰?!ジャーン!彼氏!

そのままハートポーズを決めまくる蓮から(その意味はI love youらしい)、恵は目を逸らしながらそっと去ろうとした。
「今終わり~?‥ってどしたん?どこ行くの~?」

しかし蓮は逃がしてくれない。そのまま走り出した恵を追いかけて、尚も大きな声で話し掛けて来る。
「彼氏が来たってのに~!こんな超イケメン放ってどこ行くっての?!」

やめてよ!と口にする恵だが、蓮はうっとりとした仕草で彼女(仮)に語りかけた。
君が俺の元に飛び込んで来て‥と二人のストーリーを‥

ドゴッ

‥しかし最後は恵が切れ、蓮のお腹に一発食らわせた。バッカじゃないの、と捨て台詞付きで‥。
けれど蓮は挫けない。そのまま立ち去ろうとする恵に誘いをかける。
「なぁキンカン、そう言わずにメシ行こーぜ!」
「ちょっと、あたし試験期間なんだってば」

そう言って早足で歩き出す恵を追いかけながら、蓮は尚も食い下がった。
「えーでも一日中じゃないだろ?」 「試験勉強もあるの!」
「美大も試験なんてあんの?全部実技じゃねーの?」 「違うんだって!」
「だったらメシだけでも一緒に食おーよー!」 「‥‥‥‥」

何度突き放しても、蓮はなかなか引き下がらない。恵は一つ息を吐くと、蓮の方に向き合って口を開いた。
「ねぇ蓮、こんなことしてる時間があったら帰ってお店手伝いなよ!」

そんな恵の提案にも、蓮は首を傾げて「今日は仕事無い日なのに?」と返してくる。
恵は「だったら友達とでも遊んで来なよ!」と尚も提案する。蓮には友達がいっぱいいるはずなのだ。
すると蓮はキョトンとした表情を浮かべ、ストレートにこう聞いて来た。
「俺がここに居たらヤダ?」

それは裏を返せば、自分はここに居たいという意味で‥。
恵はそんな彼を前にして、口をあんぐり開けて固まった。

すると蓮は肩を落としながら、手で顔を覆って俯いた。どんよりとしたオーラを背負っている。
「帰国した当初は天国だったけど‥今はお金も無いし、他の奴らと遊んでも何一つ面白くない‥」

いきなりシリアスムードになって項垂れる蓮を前にして、恵は幾分焦った。
こんな反応をさせたくて口にした言葉じゃなかったのに‥。
「そか‥あたし今から試験で行かなきゃで‥」「邪魔しないように待つからさぁ‥」

しおらしく蓮はそう言ったが、次の瞬間また元気になってハートマークを浮かべた。
「彼氏なんだからそのくらいは
」

(仮)なのに彼氏彼氏と連発する蓮に、恵は再びブチッと切れた。その開いた口に食券をぶち込み、
「あたしが試験受けてる間、それでご飯でも食べな」と言い捨てる。

暫しゴホゴホとむせていた蓮だが、恵から貰った食券を握り締めると笑顔を浮かべた。
目の前に居るのは幼い頃から一緒に居る幼馴染み、けれど今は仮の彼女‥。

蓮はニコニコ笑いながら、恵の肩に腕を回した。
「やっぱり俺にはキンカンしかいないな~。メシ食って待ってたら後で会ってくれる?」
「分かった分かった」

「マジで?」 「マジで!」 「マジのマジのマジのマジで?」 「‥‥‥‥」

晴れ渡る秋の空の下を、二人はふざけ合いながら肩を組んで歩いた。
蓮は恵に向かって、微笑みを浮かべながら小指を立てて見せる。
「それじゃ、約束」

それを見て、恵はフッと小さく息を漏らす。
「なによもー」

そして二人は小指を絡めて指切りをした。
子供みたいね、と言って恵は小さく笑う。

蓮もニコニコ笑いながら、先ほど口にした言葉をもう一度言った。
「やっぱりお前しかいないよ」

蓮はそう言って、優しい眼差しを恵に向けた。
小さい頃から傍に居た、一番近くの女の子‥。

小さい頃から傍に居た、一番近くの男の子を前にして、恵は少し面食らった。
今まで見たことがあっただろうか? 蓮のこんな優しい眼差しを‥。

絡めた小指が体温を分けて、二人の境界を曖昧にさせる。
今は閉じられた(仮)の括弧もまた、曖昧にぼやけていく‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<曖昧な(仮)>でした。
なんだかとても良い雰囲気‥ラブコメ部門はこちらの二人に任せることにしましょう(笑)
次回は<隠された秘密>です。
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「キ~ンカーン!!」

「彼氏が来たぞーーー!!」

そう口にした赤山蓮は、キンカンこと小西恵の前に躍り出てポーズを決めた。



そのままハートポーズを決めまくる蓮から(その意味はI love youらしい)、恵は目を逸らしながらそっと去ろうとした。
「今終わり~?‥ってどしたん?どこ行くの~?」

しかし蓮は逃がしてくれない。そのまま走り出した恵を追いかけて、尚も大きな声で話し掛けて来る。
「彼氏が来たってのに~!こんな超イケメン放ってどこ行くっての?!」

やめてよ!と口にする恵だが、蓮はうっとりとした仕草で彼女(仮)に語りかけた。
君が俺の元に飛び込んで来て‥と二人のストーリーを‥


ドゴッ


‥しかし最後は恵が切れ、蓮のお腹に一発食らわせた。バッカじゃないの、と捨て台詞付きで‥。
けれど蓮は挫けない。そのまま立ち去ろうとする恵に誘いをかける。
「なぁキンカン、そう言わずにメシ行こーぜ!」
「ちょっと、あたし試験期間なんだってば」

そう言って早足で歩き出す恵を追いかけながら、蓮は尚も食い下がった。
「えーでも一日中じゃないだろ?」 「試験勉強もあるの!」
「美大も試験なんてあんの?全部実技じゃねーの?」 「違うんだって!」
「だったらメシだけでも一緒に食おーよー!」 「‥‥‥‥」

何度突き放しても、蓮はなかなか引き下がらない。恵は一つ息を吐くと、蓮の方に向き合って口を開いた。
「ねぇ蓮、こんなことしてる時間があったら帰ってお店手伝いなよ!」

そんな恵の提案にも、蓮は首を傾げて「今日は仕事無い日なのに?」と返してくる。
恵は「だったら友達とでも遊んで来なよ!」と尚も提案する。蓮には友達がいっぱいいるはずなのだ。
すると蓮はキョトンとした表情を浮かべ、ストレートにこう聞いて来た。
「俺がここに居たらヤダ?」

それは裏を返せば、自分はここに居たいという意味で‥。
恵はそんな彼を前にして、口をあんぐり開けて固まった。

すると蓮は肩を落としながら、手で顔を覆って俯いた。どんよりとしたオーラを背負っている。
「帰国した当初は天国だったけど‥今はお金も無いし、他の奴らと遊んでも何一つ面白くない‥」

いきなりシリアスムードになって項垂れる蓮を前にして、恵は幾分焦った。
こんな反応をさせたくて口にした言葉じゃなかったのに‥。
「そか‥あたし今から試験で行かなきゃで‥」「邪魔しないように待つからさぁ‥」

しおらしく蓮はそう言ったが、次の瞬間また元気になってハートマークを浮かべた。
「彼氏なんだからそのくらいは


(仮)なのに彼氏彼氏と連発する蓮に、恵は再びブチッと切れた。その開いた口に食券をぶち込み、
「あたしが試験受けてる間、それでご飯でも食べな」と言い捨てる。

暫しゴホゴホとむせていた蓮だが、恵から貰った食券を握り締めると笑顔を浮かべた。
目の前に居るのは幼い頃から一緒に居る幼馴染み、けれど今は仮の彼女‥。

蓮はニコニコ笑いながら、恵の肩に腕を回した。
「やっぱり俺にはキンカンしかいないな~。メシ食って待ってたら後で会ってくれる?」
「分かった分かった」

「マジで?」 「マジで!」 「マジのマジのマジのマジで?」 「‥‥‥‥」

晴れ渡る秋の空の下を、二人はふざけ合いながら肩を組んで歩いた。
蓮は恵に向かって、微笑みを浮かべながら小指を立てて見せる。
「それじゃ、約束」

それを見て、恵はフッと小さく息を漏らす。
「なによもー」

そして二人は小指を絡めて指切りをした。
子供みたいね、と言って恵は小さく笑う。

蓮もニコニコ笑いながら、先ほど口にした言葉をもう一度言った。
「やっぱりお前しかいないよ」

蓮はそう言って、優しい眼差しを恵に向けた。
小さい頃から傍に居た、一番近くの女の子‥。

小さい頃から傍に居た、一番近くの男の子を前にして、恵は少し面食らった。
今まで見たことがあっただろうか? 蓮のこんな優しい眼差しを‥。

絡めた小指が体温を分けて、二人の境界を曖昧にさせる。
今は閉じられた(仮)の括弧もまた、曖昧にぼやけていく‥。
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<曖昧な(仮)>でした。
なんだかとても良い雰囲気‥ラブコメ部門はこちらの二人に任せることにしましょう(笑)
次回は<隠された秘密>です。
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