「‥‥‥‥」

背後から、横山翔の視線が刺さる。雪は暫し顔を顰めながらそのストレスに耐えていた。
そうする内に時刻は開講時間に迫り、教室には学生達がぞくぞくと登校して来たのだった。
「雪おはよ!」 「早かったッスね!」

聡美と太一も教室に入って来た。
雪は自分と横山との間に沢山の人が入ったことで、ほっと胸を撫で下ろす。

試験勉強について話す雪と聡美と太一が居る席の後方に、同期の女の子二人が座ってノートを開いていた。
そしてその隣には通路を挟んで横山翔、そしてそこに直美や香織などが集っている。
「キャハハハハッ!えーマジでぇ?!」

しかし横山を始めとする彼等はうるさかった。
皆試験勉強をしたりノートを見たりしている中、彼等は大きな笑い声を上げて騒いでいる。
うるさー 何なのあれ

彼女達は顔を上げ、小さくそう呟いていた。聡美が顔を顰め、雪は彼等に視線を送る。
彼等は清水香織が可愛くなったということをしきりに話していた。
香織は彼等から褒められて、嬉しそうに頬を染める。

そんな彼女を見ていた雪だが、不意に清水香織と目が合った。
少し雰囲気が変わった彼女は、どこか見下すような視線を送ってくる。

しかし直美が「彼氏が出来たせいだ」と話題をそっちに持って行くと、
香織は後ろめたそうに俯いた。

テストや課題のことを口に出しながら、チラと直美がこちらに視線を送ってくる。
どこかニヤニヤした笑みを湛えて。

そして人々の影の間を縫うように、横山もこちらに視線を送って来る。
じっと見ていたかと思うと、可笑しそうにクックと笑ったりを繰り返して。

そんな嫌な視線が次々と刺さるのを、雪は背中でビシビシと感じていた。
むっつりと黙りこみ、雪は一人苛立ちを募らせる。

彼等に神経使わされるのは御免だが、嫌でも感じてしまうその視線、その存在感‥。
「みなさーん試験の準備してくださーい」

そうする内に、試験開始時刻が迫り事務の品川さん達が教室に入って来た。
皆各々席に就き、問題用紙と解答用紙が配られる。
遂に中間考査が始まったのだった。

しんとした教室に、ペンが走るカリカリという音だけが響く。
雪は勉強の成果を存分に発揮して、白い答案を黒い文字で埋めて行ったのだった。

「うあ~!一つ終わったー!」 「お疲れっス」 「おつかれ!」

一つ目の試験が終わった。雪は割りとよく出来たと今の試験を振り返ってホッとしていた。
他の科目で手が回らないと思っていたこの試験だが、地下鉄の中で暗記した内容が結構出たのだった。

太一は次、教養科目の試験があるらしく、その場で雪達に別れを告げた。
時刻はもう昼前だったので、雪と聡美はお昼を食べに行こうと言って教室を出る準備をする。
「何食べよっか~」 「うーん‥外行ってー‥」

そこまで口にしたところで、後方から大きな馬鹿笑いが聞こえた。
振り返ると、横山を囲んだ御一行がワイワイと昼食について話している。

大人数の彼等は、大学近くの座敷がある店に行くらしい。
彼等が外に食べに行くことを知った雪は、行き先を学食へと変更する。

するとそんなやり取りを聞いていた同期の女の子が、雪達に声を掛けて来た。
「雪ちゃん達も学食?うちらも一緒に行くー」

女の子三人が雪と聡美に合流し、雪達は計五人で学食に行くことになった。
教室を出る時に、出入口近くでバッタリ横山と顔を合わす。

すると横山は雪に声を掛けようとした。
「ちょっと‥」と口が動くのが見える。

雪はギクッと身を強張らせると、即効で横山に背を向けた。
学食に向かう雪の背中を、横山はそのまま見つめている。

横山は先日雪に青田淳からのメールを見せた時、彼女が去り際に見せた表情が忘れられなかった。
あの哀しみとショックを湛えた、今にも泣き出しそうな顔の彼女‥。

ぼんやりと雪の背中を目で追っていた横山に、隣の直美が声を掛けた。
「ちょっと!聞いてんの?」

先ほどから話し掛けているというのに、ちっとも反応しない横山に直美は立腹していた。
しかし横山は直美に対して、適当な相槌で話を流す。
そして彼等は皆一様に、昼食を取りに教室を出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<刺さる視線>でした。
今回悲しかったこと‥


太一がことごとく見切れ&後ろ姿というこの事態‥。
間違いなくこの漫画で一番か二番を争ういい男なのに‥(^^;)
次回は<それぞれの事情>です。
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背後から、横山翔の視線が刺さる。雪は暫し顔を顰めながらそのストレスに耐えていた。
そうする内に時刻は開講時間に迫り、教室には学生達がぞくぞくと登校して来たのだった。
「雪おはよ!」 「早かったッスね!」

聡美と太一も教室に入って来た。
雪は自分と横山との間に沢山の人が入ったことで、ほっと胸を撫で下ろす。

試験勉強について話す雪と聡美と太一が居る席の後方に、同期の女の子二人が座ってノートを開いていた。
そしてその隣には通路を挟んで横山翔、そしてそこに直美や香織などが集っている。
「キャハハハハッ!えーマジでぇ?!」

しかし横山を始めとする彼等はうるさかった。
皆試験勉強をしたりノートを見たりしている中、彼等は大きな笑い声を上げて騒いでいる。
うるさー 何なのあれ

彼女達は顔を上げ、小さくそう呟いていた。聡美が顔を顰め、雪は彼等に視線を送る。
彼等は清水香織が可愛くなったということをしきりに話していた。
香織は彼等から褒められて、嬉しそうに頬を染める。

そんな彼女を見ていた雪だが、不意に清水香織と目が合った。
少し雰囲気が変わった彼女は、どこか見下すような視線を送ってくる。

しかし直美が「彼氏が出来たせいだ」と話題をそっちに持って行くと、
香織は後ろめたそうに俯いた。

テストや課題のことを口に出しながら、チラと直美がこちらに視線を送ってくる。
どこかニヤニヤした笑みを湛えて。

そして人々の影の間を縫うように、横山もこちらに視線を送って来る。
じっと見ていたかと思うと、可笑しそうにクックと笑ったりを繰り返して。

そんな嫌な視線が次々と刺さるのを、雪は背中でビシビシと感じていた。
むっつりと黙りこみ、雪は一人苛立ちを募らせる。

彼等に神経使わされるのは御免だが、嫌でも感じてしまうその視線、その存在感‥。
「みなさーん試験の準備してくださーい」

そうする内に、試験開始時刻が迫り事務の品川さん達が教室に入って来た。
皆各々席に就き、問題用紙と解答用紙が配られる。
遂に中間考査が始まったのだった。

しんとした教室に、ペンが走るカリカリという音だけが響く。
雪は勉強の成果を存分に発揮して、白い答案を黒い文字で埋めて行ったのだった。

「うあ~!一つ終わったー!」 「お疲れっス」 「おつかれ!」

一つ目の試験が終わった。雪は割りとよく出来たと今の試験を振り返ってホッとしていた。
他の科目で手が回らないと思っていたこの試験だが、地下鉄の中で暗記した内容が結構出たのだった。

太一は次、教養科目の試験があるらしく、その場で雪達に別れを告げた。
時刻はもう昼前だったので、雪と聡美はお昼を食べに行こうと言って教室を出る準備をする。
「何食べよっか~」 「うーん‥外行ってー‥」

そこまで口にしたところで、後方から大きな馬鹿笑いが聞こえた。
振り返ると、横山を囲んだ御一行がワイワイと昼食について話している。

大人数の彼等は、大学近くの座敷がある店に行くらしい。
彼等が外に食べに行くことを知った雪は、行き先を学食へと変更する。

するとそんなやり取りを聞いていた同期の女の子が、雪達に声を掛けて来た。
「雪ちゃん達も学食?うちらも一緒に行くー」

女の子三人が雪と聡美に合流し、雪達は計五人で学食に行くことになった。
教室を出る時に、出入口近くでバッタリ横山と顔を合わす。

すると横山は雪に声を掛けようとした。
「ちょっと‥」と口が動くのが見える。

雪はギクッと身を強張らせると、即効で横山に背を向けた。
学食に向かう雪の背中を、横山はそのまま見つめている。

横山は先日雪に青田淳からのメールを見せた時、彼女が去り際に見せた表情が忘れられなかった。
あの哀しみとショックを湛えた、今にも泣き出しそうな顔の彼女‥。

ぼんやりと雪の背中を目で追っていた横山に、隣の直美が声を掛けた。
「ちょっと!聞いてんの?」

先ほどから話し掛けているというのに、ちっとも反応しない横山に直美は立腹していた。
しかし横山は直美に対して、適当な相槌で話を流す。
そして彼等は皆一様に、昼食を取りに教室を出て行った。
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<刺さる視線>でした。
今回悲しかったこと‥



太一がことごとく見切れ&後ろ姿というこの事態‥。
間違いなくこの漫画で一番か二番を争ういい男なのに‥(^^;)
次回は<それぞれの事情>です。
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