Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

見えない鬼

2014-06-20 01:00:00 | 雪3年3部(偽物への警告~疎いライオン)
横山翔は、今日も図書館の中を徘徊していた。

ある人物の姿を探しながら。



キョロキョロと辺りを見回し、横山は棚から棚へとその間をヒタヒタと歩いた。

彼女の後ろ姿を求めながら。



横山は彼女を探すことに夢中になっていた為、後ろに人影があることに気づかずにいた。

そして彼は遂に、席に座って勉強する彼女の後ろ姿を見つける。

 

少し紅がかった豊かな髪は、彼女の特徴だ。

横山は鼻歌を歌いながら、彼女の隣の席を引いた。



しかし横山が彼女の顔を覗き込んだ瞬間、その子は訝しげな表情をして横山を睨んだ。

‥完全なる人違いだ。



横山はバツの悪い思いをしながら、取り繕うように笑ってその子の元から離れた。

ど、どこ行った?図書館じゃねーのか?



辺りを見回しながら歩く横山の後ろから、不意に小さな音が聞こえた。

最小の音量で、シャッターを切る携帯音。



カシャッ、というその音に横山は振り返った。

しかし見回したその辺りに、携帯を向けているような人物はいない。



「?」



横山は不思議に思いながら、もう一度棚と棚の間に歩を進めた。

本の間から向こう側の通りを見通してみても、怪しい人影は見えない。



依然として変な気分は残っていたが、横山は立ち止まって先ほどの失態について思いを馳せた。

考えてみりゃさっきみたいに接近しちゃだめだ。あまりに性急すぎる。

いきなり向かいに座ったりしたら驚かせるよな。ただでさえ鋭いのに‥




横山は自分の考えにそうだそうだと頷きながら、再びヒタヒタと歩き始めた。

ひとまず今日は少し離れた場所からそっと見守った後、

昼飯を食べに行くタイミングを狙おう。時間割を見る限り、今日の昼は一人で行くはずだ‥




横山は雪の時間割を盗み見て、彼女のスケジュールを把握していた。おまけに伊吹聡美と福井太一の時間割もだ。

雪があの二人と離れて一人になる頃合いを、横山はじっと窺っているのだ。

何でも焦らずじっくりと、気を引き締めてかからねーと‥



以前の反省を踏まえての、彼の結論だった。

去年、感情で先走るより先によく考えろと、他でもない雪にアドバイスされたのだ‥。



ニヤリと笑みを浮かべながら歩いていた横山であったが、

ヒタヒタと、彼の足音に合わせてもう一つ足音が重なっているのに気づいた。



横山は一旦立ち止まった後、バッと勢い良く振り返るが、



そこには誰も居なかった。しんとした空間がただ広がっている。



横山は胸が騒ぐのを感じた。

嫌な気分がモヤモヤと全身を覆って行く。



横山は少し早足で通路を歩き始めた。するとタッタッとテンポを上げる自分の足音に混じって、

もう一つの足音も同じ様にテンポを上げる。

 

試しにつと立ち止まってみた。

するとやはり、もう一つの足音も同じ様に消える。

 




まるで見えない相手と、鬼ごっこをしている気分だった。

見えないけれど刺さる視線に、体中が怖気立つ。



横山は湧き上がる不安を誤魔化すかのように、棚と棚との間を隈なく覗き始めた。

一体何なんだと思いながら、足音だけの主を探す。



しかしどこまで行ってもどこを覗いても誰も居ない。

そこにはただ沢山の本が沈黙しているだけだった。



横山は本棚を背にすると、青い顔をしてその場に立ち尽くした。

‥ただの錯覚か?いや、確かに聞こえたぞ‥



見えない相手に踊らされている。鬼はあちらか、それともこちらか。

横山は思い当たる人物として、直美のことが思い浮かんだ。

まさか直美さん‥?



横山は自分に執着する彼女の姿を疑い、左方向を向いてじっと眺めてみた。しかし思い直して顔を元に戻す。

‥んなワケないか




そう思って振り返った時だった。


音もなく、彼の隣に彼女が佇んでいた。

それはそれは、鬼のような形相で。






うわああああーっ!!





横山の叫びは図書館中に響き渡った。

叫んだ拍子に手は棚から本を幾冊も落とし、彼自身は足を滑らせてその場で転ぶ。



震える横山が見上げ目にしたのは、目に光を宿さず彼を俯瞰する、雪の姿だった。

「な‥何なんだよ‥お前‥」



それは雪の報復だった。

奇しくもそのシチュエーションは、先日横山から及ばされたあの状況と酷似する。



雪は自分が受けた分の害を、まるごと横山にお返ししたのだった。

「どう?怖いでしょう?」



瞬きもせずそう口にする雪の顔を、横山は顔面蒼白のまま見上げていた。

嫌な汗が全身を伝って流れていく。



その場から横山が動けずにいると、雪は鋭い眼光を彼に向けながら最後にこう声を掛けた。

「こんなこともう止めて」



そう言い捨てて、雪は本棚の向こうへ消えて行った。

鬼ごっこはゲームオーバー。鬼の策略に捕まった横山だけが、腰を抜かしたまま取り残されていた。



今や図書館は騒然としていた。

叫び声を聞きつけたギャラリーが、横山を見てヒソヒソと噂して行く。



横山は顔を真っ赤にして、沸々と湧き上がる怒りと恥辱に耐えていた。

しかしようやく見つけた彼女をこのまま行かせてなるものかと、横山はそのまま雪の後を追いかけて行った‥。



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<見えない鬼>でした。

音もなく現れる先輩の特性をモノにした(?)雪ちゃん、カッコ良いです^^ちょっと怖いですが‥。


次回は<狂った見解>です。


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