王子駅から音無親水公園に向かう。江戸の料亭扇屋の玉子焼き今に伝える店の前には、今日も行列が出来ている。音無親水公園は、王子神社の下を流れていた石神井川の跡地に造られた公園で、都市公園百選にも選ばれている。公園内には木の橋が架かっているが、台風で流された舟串橋を再現したものらしい。
舟串橋を渡って園内に造られた流れに下り、昭和5年に架けられた音無橋の下に出る。以前の石神井川は音無橋の下を流れていたが、現在は橋の上流側で飛鳥山の下を潜る水路に流れ込んでいる。音無橋を潜って右手の道に上がり左に進む。道の左側は石神井川だが壁に阻まれて残念ながら川の流れを見る事が出来ない。
松橋を渡った先に、石神井川の旧水路を利用した“音無さくら緑地”があり、入って直ぐのところに“緑の吊橋”が架かっている。最初に架けられたのは昭和29年ということだが、当時は石神井川の風景に相応しいものだったろう。吊橋の下を潜って昔の石神井川の痕跡を探しながら歩き、緑地の名にし負う桜並木を通って現在の石神井川に戻る。
川沿いに進み紅葉橋を過ぎて先に進めば、音無もみじ緑地に出る。ここには、石神井川の旧水路を利用して入江が造られており、水面近くまで下りられるようになっている。この地は、紅葉の名所として知られ、松橋弁財天の洞窟や滝もあって、広重の江戸名所百景にも取り上げられる景勝地であったのだが、現在の風景から昔の姿を想像する事は難しくなっている。
滝野川橋を渡って、石神井川の右側を進むと、観音橋の先に平成20年に開眼した谷津大観音の像が見えてくる。川に沿ってさらに進み谷津橋を渡る。渡った先は音無くぬぎ緑地で、先に進むと埼京線の鉄道橋に出る。
石神井川の桜は埼京線の車窓から何度も眺めているが、桜の時期に鉄道橋の下を潜るのは初めてかも知れない。先を急ぐので電車の来るのを待たずに先に行き、東橋から下流側を眺める。コンクリートの川は興ざめだが、川の中の緑が少しだけ気持を和らげてくれる。
金沢橋近くの加賀公園は加賀藩下屋敷があった場所で、公園内には標石と説明版が置かれている。下屋敷絵図によると、屋敷内に石神井川が流れており、川沿いに高山と書かれている築山が、加賀公園内に残る築山に相当する。その南側には大きな池が描かれているが、現存しない。下屋敷は江戸最大の大名屋敷で二十一万八千坪あったが今はその面影も無い。加賀公園内には桜もあり、今は花見の場所になっている。
加賀公園の築山に登り、石神井川に下って加賀緑橋を渡って、石神井川の右側を歩く。加賀橋、緑橋、加賀二の橋、加賀学園橋と続き、稲荷橋を渡って石神井川の左側に移る。
御成橋を過ぎると次は番場橋となり、旧中山道が通る板橋が見えてくる。その先を左に入って石神井川の旧水路による緑道を抜ければ板橋に出る。板橋から先、石神井川の左側を歩道が通じており、ふれあい橋を過ぎれば中山道の通る新板橋となる。