“秋の東京いい庭キャンペーン”の対象の一つになっている根津美術館の庭園に行ってみた。隈研吾設計による新美術館になってからは、初めての入館ということになる。丸山応挙の展覧会を鑑賞したあと、1階の庭園口を出る。庭園へは地下一階からも出られるようで、そちらからは車椅子での通行が可能なようである。
根津美術館の庭園は起伏に富んだ土地にあり、谷には池を作り、園内四カ所に茶室を設け、各所に数多くの石造物を置き、その間を園路が縦横に結んでいる。
庭園内には現在も湧水があり、井筒から流れ出た水は、細い水路を流れて池に注いでいる。園路からは小さな滝も見える。
園路を下り、八つ橋の池を橋で渡る。池の辺りは紅葉の盛りといったところ。谷底に造られた池は、長細い形をしている。
池から南に上がり、観世音菩薩が住むという補陀落を抜けて先に進むと、竹藪のある薬師堂に出る。ここまで来る人は少ないようで、辺りは森閑としている。
薬師堂から少し広めの道を歩いて、紅葉の鮮やかな披錦斎に行く。ここには一樹庵が付属している。この辺りは少し高い位置にあるので、園内では眺めが良い方である。
自然石のような石灯籠があり、その向こうに弘仁亭が見える。池に下り、暫し紅葉を眺める。
八つ橋の池の中に井筒がある。湧水があるらしい。場所を変えて見てみると、近くの斑鳩庵から池に来て、飛び石を伝って湧水を汲む趣向のようにも思える。池に沿って先に進むと、小さな舟が一艘。この舟にも何か趣向があるのかも知れない。
橋を渡って天神社に行く。飛梅祠の石像は中国で参禅する菅原道真の姿を表したものという。この庭園が自邸の庭だった頃、薬師堂や飛梅祠は信仰の対象になっていたのだろうか。
天神社から池に沿って進み閑中庵に行く。ここに付属する牛部屋の名の由来はなんだろう。
苔むした石灯籠の向こうは、やはり紅葉である。
弘仁亭の前の池には、4月の末頃に燕子花が咲き、時期を合わせて光琳の燕子花図屏風が展示されるという。弘仁亭には無事庵が付属する。また、弘仁亭には待合もある。その屋根の縁を紅葉の中に置いてみる。また、披錦斎付近の紅葉をバックに、ススキを前景にしてみる。
庭園を一回りしてから、大屋根が特徴的な美術館の本館に戻る。根津美術館の庭園は新館の建築工事に合わせて改修されたようで、以前の庭園はもう少し野趣に富んだものだったような気がする。それにしても、この庭園には石造物などが数多く存在する。美術館の庭園はかくあるべしとでも語っているようでもある。
(注)「秋の東京いい庭キャンペーン」の対象になっているのは、浜離宮、芝離宮、小石川後楽園、六義園、旧岩崎邸、向島百花園、清澄庭園、旧古河庭園、殿ケ谷戸庭園の都立9庭園のほか、東御苑、東京国立博物館、昭和記念公園、新江戸川公園、朝倉彫塑館、池田山公園、目白庭園、薬師池公園、八芳園、根津美術館、毛利庭園、椿山荘、旧安田邸、小石川植物園、柴又帝釈天、京王百草園の16カ所、計25か所である。