前回の続きです!
今回でようやく終わりです(´▽`)
ほんとにお待たせ致しました~。
-------------------------------------------------
広々としたホールに、着飾った人々が溢れる。領主の息子、ユーリの誕生日会は、それなりにきちんとしたパーティーだった。派手すぎず上品に飾り付けられた会場に、凝った料理の数々。
中には、質素な身なりの若者たちも何人かいる。きっと魔道士としてのユーリの友人たちだろう。
初対面では愛想の悪い男だったが、彼の誕生を祝う友人もちゃんといるらしい。
その中で、あたしは慣れないドレスを着て壁の花になっていた。
今朝、ユーリから宿に届いたドレスはシンプルながら品があって、高価そうな代物だった。
着て行くか凄く迷ったが、せっかくだから着ることにした。......着ないのは勿体無いし。
銀細工のネックレスが、首もとできらきらと光る。これも今朝届いた物だ。
素敵な贈り物を貰って、素直に嬉しい気持ちと、申し訳無いような複雑な気持ちで、ネックレスを指で弄る。
これが、スケベな悪徳商人のおっちゃんからのプレゼントだったら、なんの躊躇いもなく貰うのに。そしてうっぱらう。
──でも、このドレスやネックレスには、ユーリの気持ちが籠もっているから。
「......無碍に出来ないじゃない」
ふう、とため息を付いて天井を見上げた。
宿を出る時、ガウリイとは会わなかった。どうやらまだ寝ていたらしい。
──どこまでも呑気なヤツ!
ガウリイは、昨日のあたしの態度を、なんとも思って無いのだろうか。急に怒り出して困った、くらいのものなのか。
......凄く、腹立たしい。
あたしは昨日、ガウリイに、何て言って欲しかったのだろう。今日は一日、そればかり考えている。
「リナ、来てくれたのかっ!」
呼ばれて振り向くと、今日の主役が立っていた。
昨日と打って変わってきちんとした身なり。撫でつけた髪。目つきだけはやっぱり良くないけど、ずっと上品に見える。ただ、少し幼い感じがする。
「ユーリ......」
「それも、着てくれたんだな」
あたしのドレスを見て満足そうに頷いた彼は、当たりを見回した。
「一人で来たのか?」
「......まあね」
肩をすくめてみせると、ユーリはちょっと黙ってから、微笑んだ。
「そうか」
「ユーリは、今年いくつになるの?」
「十九だ」
言って、後ろを振り返る。
彼の見つめる先には、父親らしき男性の姿があった。少し離れた場所で、周りの人々と談笑している。
「来年は二十歳になる。そろそろ親父の仕事を手伝わないとな。流れの魔道士を装って夜の食堂にたむろするのも、出来なくなるだろうな」
「そう......」
遠い目をした彼は、あたしに向き直った。ざわめきの中で、あたしたちの周りだけは静かだ。その空気に、少しだけ緊張する。
「なあ」
「......何?」
何気なく返事をしたあたしは、彼の目があまりに真剣なのを見て、思わず息を呑んだ。
「......リナ。俺はお前が気に入ってる。そのドレスを贈るくらいには」
「そう」
その続きを、あたしは聞くのが怖い。けど。
「俺と、婚約してくれないか」
「......っ!」
ひたり、と見つめられて、あたしは言葉に詰まった。
なにせ、今までそんな事を言われたことが無かったのだから仕方がない。
──婚約。
その言葉の意味くらい分かっている。彼の気持ちが、瞳から伝わって来る。
「これから、俺のパートナーになってくれ」
「パートナー......」
パートナー。相棒。それは、あたしにとって、ずっとただ一人のための言葉だった。
それはきっと、普通の意味でも、違う意味でも。
今、この場所で、それに気付いてしまった。
──それに、本当にこのドレス姿を見てほしかったのは、ユーリじゃなくて......
「......ユーリ、ほんとにごめんなさい」
言って、頭を下げた。
「そうか。......やっぱり、な」
「へ?」
ユーリが苦笑しながらあたしの後ろに目をやった。
つられて振り向くと、すぐ後ろに。
「ガウリイ!?」
肩で息をしながら、パーティー用の洒落た礼服を着たガウリイが立っていた。
「......悪い、連れてくな」
それだけユーリに言うと、呆気に取られるあたしの腕を引いて、さっさと歩き出す。
「ちょ、ちょ、ちょっと!今の話聞いてたの!?」
「え?何の話だ?」
「何のって......」
慌てるあたしに構わず、ガウリイは会場の外へあたしを連れ出した。
「捜したぞ、リナ」
人気の無い廊下まで出てから、ガウリイが笑う。
普段目にしない彼の礼服姿が、様になっていてどきりとする。
長い金髪がきちんとまとめられ、前髪を流しているから両目がちゃんと見えている。改めて、ガウリイの目の碧さに驚いた。
「何しに来たのよ......」
驚きと恥ずかしさでぶっきらぼうに言ったあたしに、ガウリイは苦笑した。
「お前さんを攫いに」
「は!?」
「なんつって、な」
照れたように頭を掻いて、目を細める。
「その格好、似合うな」
「......そりゃどーも」
「でも、嫌だったんだ」
「は?」
「リナが、あいつから貰った服であいつと一緒に居るのが、嫌だった。ほんとは一人で行かせたくなかった」
「だったら......っ」
──なんで昨日は、あんな事を。
「すまん、昨日のオレはあいつに嫉妬して、拗ねてた。まったく子供みたいだよな」
「......それって」
──つまり、つまり。そういうこと?
ガウリイは、あたしの肩に手を置いた。
「オレはお前さんが好きなんだ。ずっと一緒に居て欲しい。あいつとじゃなくて、オレと。これからも、ずーっと。死ぬまで」
「......っ」
「それだけ、言いたくて来たんだ」
間近で見るガウリイの瞳が、肩に置かれた手が、どっちも熱っぽくて、くらくらする。
「......ばか」
「え?」
「ばかばかばかっ!......あたしも好き」
それが精一杯だった。あたしの返事。
それだけ言って、あたしはその場から逃げ出した。
......けど、あっという間に捕まえられて、後ろから抱きしめられた。
「ぎゃっ」
「やった!嬉しいぞリナっ!」
後ろから、顔を見なくても満面の笑顔だと分かるくらい嬉しそうな声が響いて、胸がきゅう、と締め付けられる。
「うるさいっ!離しなさいよっ!」
あたしはじたばた暴れながら、だけど我ながら真っ赤だったと思う。
......あともう少しで、ドラスレ放っちゃう所だった。危ない危ない。
結局、それからすぐ会場に戻って二人してご馳走を頂いて帰った。
あたしたちは、そんなにすぐには変われないのだ。
......でも、それで良い。
それがあたしたちの普通なのだから。
終わり
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おしまいでっす!
颯爽とリナを攫うガウリイを書きたかったんだ!
なんか違うけどっ!!(笑)
......ちなみにこの後ドレスとアクセサリーは返却しようとして断られた、かなー?
それではまた次回。
今回でようやく終わりです(´▽`)
ほんとにお待たせ致しました~。
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広々としたホールに、着飾った人々が溢れる。領主の息子、ユーリの誕生日会は、それなりにきちんとしたパーティーだった。派手すぎず上品に飾り付けられた会場に、凝った料理の数々。
中には、質素な身なりの若者たちも何人かいる。きっと魔道士としてのユーリの友人たちだろう。
初対面では愛想の悪い男だったが、彼の誕生を祝う友人もちゃんといるらしい。
その中で、あたしは慣れないドレスを着て壁の花になっていた。
今朝、ユーリから宿に届いたドレスはシンプルながら品があって、高価そうな代物だった。
着て行くか凄く迷ったが、せっかくだから着ることにした。......着ないのは勿体無いし。
銀細工のネックレスが、首もとできらきらと光る。これも今朝届いた物だ。
素敵な贈り物を貰って、素直に嬉しい気持ちと、申し訳無いような複雑な気持ちで、ネックレスを指で弄る。
これが、スケベな悪徳商人のおっちゃんからのプレゼントだったら、なんの躊躇いもなく貰うのに。そしてうっぱらう。
──でも、このドレスやネックレスには、ユーリの気持ちが籠もっているから。
「......無碍に出来ないじゃない」
ふう、とため息を付いて天井を見上げた。
宿を出る時、ガウリイとは会わなかった。どうやらまだ寝ていたらしい。
──どこまでも呑気なヤツ!
ガウリイは、昨日のあたしの態度を、なんとも思って無いのだろうか。急に怒り出して困った、くらいのものなのか。
......凄く、腹立たしい。
あたしは昨日、ガウリイに、何て言って欲しかったのだろう。今日は一日、そればかり考えている。
「リナ、来てくれたのかっ!」
呼ばれて振り向くと、今日の主役が立っていた。
昨日と打って変わってきちんとした身なり。撫でつけた髪。目つきだけはやっぱり良くないけど、ずっと上品に見える。ただ、少し幼い感じがする。
「ユーリ......」
「それも、着てくれたんだな」
あたしのドレスを見て満足そうに頷いた彼は、当たりを見回した。
「一人で来たのか?」
「......まあね」
肩をすくめてみせると、ユーリはちょっと黙ってから、微笑んだ。
「そうか」
「ユーリは、今年いくつになるの?」
「十九だ」
言って、後ろを振り返る。
彼の見つめる先には、父親らしき男性の姿があった。少し離れた場所で、周りの人々と談笑している。
「来年は二十歳になる。そろそろ親父の仕事を手伝わないとな。流れの魔道士を装って夜の食堂にたむろするのも、出来なくなるだろうな」
「そう......」
遠い目をした彼は、あたしに向き直った。ざわめきの中で、あたしたちの周りだけは静かだ。その空気に、少しだけ緊張する。
「なあ」
「......何?」
何気なく返事をしたあたしは、彼の目があまりに真剣なのを見て、思わず息を呑んだ。
「......リナ。俺はお前が気に入ってる。そのドレスを贈るくらいには」
「そう」
その続きを、あたしは聞くのが怖い。けど。
「俺と、婚約してくれないか」
「......っ!」
ひたり、と見つめられて、あたしは言葉に詰まった。
なにせ、今までそんな事を言われたことが無かったのだから仕方がない。
──婚約。
その言葉の意味くらい分かっている。彼の気持ちが、瞳から伝わって来る。
「これから、俺のパートナーになってくれ」
「パートナー......」
パートナー。相棒。それは、あたしにとって、ずっとただ一人のための言葉だった。
それはきっと、普通の意味でも、違う意味でも。
今、この場所で、それに気付いてしまった。
──それに、本当にこのドレス姿を見てほしかったのは、ユーリじゃなくて......
「......ユーリ、ほんとにごめんなさい」
言って、頭を下げた。
「そうか。......やっぱり、な」
「へ?」
ユーリが苦笑しながらあたしの後ろに目をやった。
つられて振り向くと、すぐ後ろに。
「ガウリイ!?」
肩で息をしながら、パーティー用の洒落た礼服を着たガウリイが立っていた。
「......悪い、連れてくな」
それだけユーリに言うと、呆気に取られるあたしの腕を引いて、さっさと歩き出す。
「ちょ、ちょ、ちょっと!今の話聞いてたの!?」
「え?何の話だ?」
「何のって......」
慌てるあたしに構わず、ガウリイは会場の外へあたしを連れ出した。
「捜したぞ、リナ」
人気の無い廊下まで出てから、ガウリイが笑う。
普段目にしない彼の礼服姿が、様になっていてどきりとする。
長い金髪がきちんとまとめられ、前髪を流しているから両目がちゃんと見えている。改めて、ガウリイの目の碧さに驚いた。
「何しに来たのよ......」
驚きと恥ずかしさでぶっきらぼうに言ったあたしに、ガウリイは苦笑した。
「お前さんを攫いに」
「は!?」
「なんつって、な」
照れたように頭を掻いて、目を細める。
「その格好、似合うな」
「......そりゃどーも」
「でも、嫌だったんだ」
「は?」
「リナが、あいつから貰った服であいつと一緒に居るのが、嫌だった。ほんとは一人で行かせたくなかった」
「だったら......っ」
──なんで昨日は、あんな事を。
「すまん、昨日のオレはあいつに嫉妬して、拗ねてた。まったく子供みたいだよな」
「......それって」
──つまり、つまり。そういうこと?
ガウリイは、あたしの肩に手を置いた。
「オレはお前さんが好きなんだ。ずっと一緒に居て欲しい。あいつとじゃなくて、オレと。これからも、ずーっと。死ぬまで」
「......っ」
「それだけ、言いたくて来たんだ」
間近で見るガウリイの瞳が、肩に置かれた手が、どっちも熱っぽくて、くらくらする。
「......ばか」
「え?」
「ばかばかばかっ!......あたしも好き」
それが精一杯だった。あたしの返事。
それだけ言って、あたしはその場から逃げ出した。
......けど、あっという間に捕まえられて、後ろから抱きしめられた。
「ぎゃっ」
「やった!嬉しいぞリナっ!」
後ろから、顔を見なくても満面の笑顔だと分かるくらい嬉しそうな声が響いて、胸がきゅう、と締め付けられる。
「うるさいっ!離しなさいよっ!」
あたしはじたばた暴れながら、だけど我ながら真っ赤だったと思う。
......あともう少しで、ドラスレ放っちゃう所だった。危ない危ない。
結局、それからすぐ会場に戻って二人してご馳走を頂いて帰った。
あたしたちは、そんなにすぐには変われないのだ。
......でも、それで良い。
それがあたしたちの普通なのだから。
終わり
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おしまいでっす!
颯爽とリナを攫うガウリイを書きたかったんだ!
なんか違うけどっ!!(笑)
......ちなみにこの後ドレスとアクセサリーは返却しようとして断られた、かなー?
それではまた次回。
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