久しぶりに800字のSSを更新します~。
最近ガウゼロ多いですね。書きやすいんですよねなんか……
----------------------------------------------------------------
とある、重苦しい雲がどんよりと空を漂う昼下がり。仕事終わりのちょっとした空中散歩に勤しんでいた獣神官ゼロスは、何処からかどくどくと命が零れる音を聞いた。
流血の音ではない。生命の源、魂が身体から抜けていく音。ヒトの命が失われていく音。
「――おやおや、これは……」
視線を下せば、眼下に映ったのは大きく抉れた地面と焼け焦げた木々。強力な黒魔法の余韻と漂う瘴気は、ここで壮絶な戦いがあった事を伝えている。
「……ゼロス?」
「よく分かりましたねガウリイさん。貴方、もうまともに目が見えてなさそうなのに」
彼がその場に降りた瞬間。掠れた声を上げた男、ガウリイ=ガブリエフは深々と腹を刺し貫かれた姿で大木に寄りかかっていた。長い金色の前髪は血に塗れ、彼の淡いブルーの瞳を隠してしまって。
「はは、なんとなく、な」
弱弱しくも笑って見せる彼からは、既に負の感情すらもあまり感じとる事が出来ない。――つまり、感情ごと意識が消えうせるのも時間の問題と言う事だ。
「……なあ」
「リナさんなら、大丈夫そうですよ。少なくとも貴方よりは」
ちらりと横に視線を向ける。驚いた事にあの栗色の髪を真っ白に染めた少女が、その場に倒れ伏している。余程高位の魔族と対峙したという事だろうか。だが、その場にそれらしき者の姿はない。そして、倒れ込んだ少女は気絶はしているものの、しっかりとした息があった。
恐るべきデモン・スレイヤー。またしても彼女は勝利したのか、我々に。
「そうか……なら、よかっ……ごふっげほっ」
激しく咳き込んだ剣士は、腹とどうやら肺もやられているらしい。口を抑え込んだ掌の間から、血液が流れ落ちては地面に血だまりを新たに作る。
――……嗚呼、勿体ない。
ふと、そんな思いが魔族の脳裏をよぎった。
「貴方を亡くしたリナさんの負の感情も、それは美味しそうではありますが……」
一瞬の思案。そして。
「仕方ありません。貸し一つ、ですよ」
願わくば、こんな死に際の『残りかす』ではなく。憎悪と怒りと絶望を、己に向けるこの男を、この手で。
「それまでは、勝手に殺されちゃあダメですよガウリイさん」
流血の音ではない。生命の源、魂が身体から抜けていく音。ヒトの命が失われていく音。
「――おやおや、これは……」
視線を下せば、眼下に映ったのは大きく抉れた地面と焼け焦げた木々。強力な黒魔法の余韻と漂う瘴気は、ここで壮絶な戦いがあった事を伝えている。
「……ゼロス?」
「よく分かりましたねガウリイさん。貴方、もうまともに目が見えてなさそうなのに」
彼がその場に降りた瞬間。掠れた声を上げた男、ガウリイ=ガブリエフは深々と腹を刺し貫かれた姿で大木に寄りかかっていた。長い金色の前髪は血に塗れ、彼の淡いブルーの瞳を隠してしまって。
「はは、なんとなく、な」
弱弱しくも笑って見せる彼からは、既に負の感情すらもあまり感じとる事が出来ない。――つまり、感情ごと意識が消えうせるのも時間の問題と言う事だ。
「……なあ」
「リナさんなら、大丈夫そうですよ。少なくとも貴方よりは」
ちらりと横に視線を向ける。驚いた事にあの栗色の髪を真っ白に染めた少女が、その場に倒れ伏している。余程高位の魔族と対峙したという事だろうか。だが、その場にそれらしき者の姿はない。そして、倒れ込んだ少女は気絶はしているものの、しっかりとした息があった。
恐るべきデモン・スレイヤー。またしても彼女は勝利したのか、我々に。
「そうか……なら、よかっ……ごふっげほっ」
激しく咳き込んだ剣士は、腹とどうやら肺もやられているらしい。口を抑え込んだ掌の間から、血液が流れ落ちては地面に血だまりを新たに作る。
――……嗚呼、勿体ない。
ふと、そんな思いが魔族の脳裏をよぎった。
「貴方を亡くしたリナさんの負の感情も、それは美味しそうではありますが……」
一瞬の思案。そして。
「仕方ありません。貸し一つ、ですよ」
願わくば、こんな死に際の『残りかす』ではなく。憎悪と怒りと絶望を、己に向けるこの男を、この手で。
「それまでは、勝手に殺されちゃあダメですよガウリイさん」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます