ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

君にだけは。(ガウリナ)

2015-09-03 21:49:45 | スレイヤーズ二次創作
リクエスト消化第二弾!
というわけで、普段twitterでお世話になりつつ、最近はブログもリンクさせて頂いている紫陽花さんからのリクエストです~♪
「声を出せないリナ。ゼルアメとも上手く意思疎通ができなくて、でもガウリイだけは分かってくれて、フォローしてくれる……」という、なんとも素敵シチュなガウリナSSのリク頂きました!

そんなわけで頑張ってみました~。こんな感じでいかがでしょうか??
※原作一部あたりの時間軸で、アメリアは原作風味です。

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 喉をやられた。
「…………」
 口をぱくぱく動かして、喉の奥に力を入れてみる。しかし、残念ながら肝心の声はまったく出てきてくれない。天才魔道士リナちゃんの可愛いソプラノボイスは、今はひゅーひゅーと空気の音に変わってしまっていた。
 がくりと頭を垂れるが、仕方がない。これは自分のせいなのだ。

 ……体調管理の失敗。つまり風邪であった。
 以前アサシンに喉を潰されたように、怪我が原因なのだったら治癒系の呪文でなんとかなるかもしれないが、風邪ではそうはいかない。素直に根本的原因である風邪をなんとかするしかないだろう。
 まあ、声が出ない以外、熱があるわけでもないのでそこまで困ることは無い。呪文を唱えられないというのは、少し痛いけれど。

 ……そう、楽観的に考えていたのだが。

「……」
 ぱくぱくと口を動かして意思表示をしようとするあたしに、隣を歩いていたアメリアが気付いて顔を覗き込んで来る。
「なに、リナどうしたの? お腹すいた??」
 あたしはずるり、とずっこけそうになった。どうしてそうなる!
 前を見ろ、と言っているのだ。あたしの持つ地図と目の前の地形が微妙に違っている。道を間違えたのなら引き返した方が良いかもしれない。
「……! ……っ!」
「あれ、違うの? リナだしてっきりそうだと思ったんだけど……」
 抗議の声をあげようとして失敗するあたしを見て、今度はゼルガディスが口を開いた。
「アメリア。リナの事だ、きっと盗賊でも居ればひと稼ぎ出来るのに…とか言ってるんだろう」
 ――違うわいっ! いや、ちみっとそう思わなかったりしなくもないけど……。

 ここまで意思疎通が出来ないと、がっくり来ることこの上ない。
 げんなりするあたしの肩を、ぽんと誰かが叩いた。ガウリイだ。
「元気出せリナ。腹が減ったんなら釣りでもするか?」
 ――お前もか! だから違うって言ってんでしょーがっ!
 ふるふる首を横に振っていると、彼はふとあたしの持つ地図に目を留めた。そして前方の景色に目をやる。
「ん、あれ。……これ、道間違ってないか?」
 ――……!
「……え、本当ですか?」
 ガウリイの言葉に、ゼルとアメリアも足を止めた。ようやく、あたしの言いたかった事が伝わったらしく、ほっと息を吐く。

 よくやった、ガウリイ君! その意味を込めて相棒に笑いかけると、彼はいつものようにのんびりと微笑んで、しかしすぐにその笑顔を引っ込めた。
 ――……ん?

 それから数秒遅れて、その場に居た全員がその「気配」に気が付く。
「リナ!」
 叫んで、ガウリイがあたしを引き倒した。
 ――ぎゃっ!
 悲鳴も上げられずに倒れるあたしの頭の上を、鋭い音を立てて何かが飛んでいく。すぐ横の木に深々と刺さったのは一本の矢だった。
「……『爆煙舞(バースト・ロンド)』!!」
 矢の飛んで来た方向に、すぐさまアメリアが『力ある言葉』を解き放つ。無数の光球が林の奥で炸裂し、炎をまき散らす。殺傷能力は低いが、見た目に派手なのでこけおどしには効果あり。
 ……って、こんなとこでんな呪文使うなっ!

「うわああちぃっ!」
「ぎゃあああっ」
 ひたすら情けない声があがり、ぞろぞろと林から出て来たのは十数人の盗賊らしき男たち。……完全に雑魚である。
「お、お前ら! 命が惜しくば有り金差しだせっ!!」
「「「……」」」
 ここまで情けない有様で、それでも一応最初の目的は果たそうとする根性は買ってやるべきかもしれない。

「……貴方達、善良な旅人に刃を向け、あまつさえ金銭を要求するなど…言語道断! 成敗しますっ!」
「そんな事はどうでもいいが、降りかかる火の粉は払う主義でな」
 言って、ゼルとアメリアは身構え、呪文を唱え始める。隣で、ガウリイも黙って剣を抜く。
 あたしはと言えば、そんな仲間たちを見て内心歯噛みしていた。
 ――くやしいくやしいっ! あたしも盗賊いぢめしたいよーっ!! 掛け合いしたいよーっ! 
 それでも一応、短剣は抜いて構えるあたしである。あたしだって、戦士としても一流なんですからねっ!

 瞬間、もう一度弓矢が飛んできた。
「……!」
 がきん、と音を立ててそれをはじく。それくらいは、あたしにも出来る。
「リナ、大丈夫か!?」
 ガウリイの声にこくりと頷いた。
 どうやら、向こう側にはそれなりの弓の使い手がいるらしい。今一番戦力が低いあたしを狙ってくるあたり、雑魚にしてはやる。

「『烈閃槍』(エルメキア・ランス)!!」
「『振動弾』(ダム・ブラス)!」
 ゼルとアメリアの連携によって次々に倒れていく盗賊たち。だが、どこからか飛んでくる矢は未だなくならない。どこに隠れているのか……。
 ――……あっ!
 その時、あたしは林の中のとある一点が、鈍く光るのを見た。金属的な輝きは、防具か、それとも弓矢の矢じりか。
 そこだ。

「……!」
 そしてあたしは、その一点に向かって攻撃呪文を叩きこもうとして、自分の声が出ない事に気が付いた。
 ――あああっ、あたしの馬鹿っ!!
 次の瞬間、その一点から弓矢が飛んでくる。しかも、連続して、二本。
 完全に隙を突かれたあたしは、息を呑んだ。今から構えても間に合わない。
 ――……やばいっ!

 がきんがきんっ
 瞬間的に目を閉じていたあたしは、その連続した打撃音に目を開ける。目の前には、相棒の背中があった。そして、地面に散らばる矢の残骸。
「……っ!!」
 ガウリイ、と口の動きだけで叫ぶ。
 それに頷いて、ガウリイはあたしがさっき見つけた一点に向かって走り出した。

 ぞんっ、と言う彼の剣が振るわれる音。次いで男の悲鳴。それによって、あたしはこの戦いが完全に終わった事を確信したのだった。

***

「――それにしても、よく分かりましたね。あの最後の一人の居場所」
 道を引き返しがてら、アメリアがガウリイに尋ねた。当のガウリイは、きょとんと首を傾げたあと、ぽんと手を打つ。
「ああ、さっきの盗賊の事か?」
 ずべっ。
 思い切り滑ってこけたアメリアが、起き上がりざまに叫ぶ。
「それ以外に何があるって言うんですかっ!」
「……」
 そして他人のフリをするゼルガディス君である。 

「いや、な。リナが」
 言って、ガウリイは頬を指でぽりぽりと掻いた。
「リナが?」
「あっちに居るって、そう言ってるような気がしたから」
 困ったような、曖昧な笑みを浮かべたガウリイ。そんな彼に、アメリアは数回ぱちぱちと瞬きした後、小さく肩を竦めて笑った。
「……へええ、そうですかそうですか~」
 その後にこちらに向けられる、どこかにやにやした表情にあたしはなんとも言えない気持ちになる。
 ――……なによ、その目は。

「ガウリイさんてば、リナの言いたい事なんでも分かっちゃうんですね?」
「いや、まあ……『保護者』だから、な」
 その声の優しさに、あたしは知らず赤くなってしまっているのだった。



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