猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

天国への階段。

2013年08月04日 07時16分07秒 | イタリア見聞録。

 

 

ソレントの朝は早かった。

街はずれにあるホテルのバルコニーは、
ゴツゴツとした小さな山に面していて。

夜が明けると共に、鳥たちが、
その岩陰から木陰から、一斉に囀り始めるのだ(笑)

 

あまりの美味しさに、南にいる間中飲み続けた、搾りたてオレンジジュース。


そういえば前夜、Hさんが、
その山の中腹には小さな教会があるようだと、
狭い階段が続く方角を指差して言っていたが...

せっかく早起きしたことだしと、
ゴンザと私は朝食後にそこへ行ってみようと思い立つ。


小さな山の、小さな階段。

そこに見えてきたのは...

想像以上に静かで開放的で、
まだ一晩眠っただけというのに、
ソレントが、理想の保養地と感じられたのは、
もしかしたらこの朝が、すべてを物語っていたからなのかもしれない。

天国へと続く階段は、素朴に、神聖に、
暮らしと共にそこにあった。

 

近づいてみれば、彼らの信ずる神のお話。

岩陰に住むのか、とにかくたくさん見かけたトカゲ。



聞こえてくるのは鳥の声だけ。

動いているのは、風に揺れる葉とトカゲだけ。

誰かに踏みつぶされたイチジクの実の甘い香りは...

見上げれば、どうして地中海沿岸に住む人々が、
あれほどイチジクを食べるのかわかるほどの、大きな樹の下から漂っていた。

 

タイルに描かれたキリストの生涯を追っていくと...

あった!


上るごとにわかってくる、教会へ続く階段の、もう一つの役目。

山肌を削って作られた、
そのジグザグの小さな階段の角ごとには、
キリストの生涯が描かれた、美しいタイルがはめ込まれていた。

 

信ずるものが何であっても、人々が心を寄せて作ったものは美しい。

小さな門が閉まっていたのは朝早かったから?

 

ここを上る人々は、きっと、そこを上るたび、眺めるたびに、
信仰を深めていったのだろう。

振り返ればすぐそこに見える地中海同様、
暮らしの中にあるものとして。

 

振り返れば、ソレントの街並みと地中海。



『ソレントの思い出は何か?』ともし聞かれたら、
私は一番に、この『教会の朝』を挙げるだろう。

そこには、観光地を思わせるものは、
私たち以外には何もなく。

たとえていうならそれは、我々日本人が、
小さな神社の境内をすり抜けていくような、
そんな感覚にも似ていた。

 

教会の裏にひっそりと建っていた、終戦の記念碑(?)

路傍の花が、美しいのも同じ。