北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦あけぼの弾道ミサイル攻撃事案【1】ソマリア海賊対処中にイエメン武装勢力フーシ派のミサイル攻撃

2023-12-02 20:22:08 | 国際・政治
■初のミサイル攻撃-被害無
 日本から遠くアフリカ沖において海上自衛隊の護衛艦あけぼの海賊対処任務中、弾道ミサイル攻撃を受ける事案が有りました。

 こんごう筆頭に海上自衛隊は1993年の北朝鮮弾道ミサイル実験事案以降ミサイル防衛を本格的に検討し、1998年のテポドンミサイル事件事案、東北地方上空をミサイルが通過する事案をうけ、ミサイル防衛は計画から実際の防衛力整備へ進みました。しかし、護衛艦に向け弾道ミサイルが発射されたのは、意外にも日本海ではなく遠くアフリカ沖でした。

 ソマリア沖合族対処任務、護衛艦あけぼの、は11月25日、前任の護衛艦いかづち、より海賊対処任務の引継を受け遠くアデン湾付近において海賊を警戒していましたが、11月26日、イギリス船会社運行のリベリア船籍タンカーセントラルパーク号が海賊の襲撃を受け救難信号を発信、同じく派遣中のP-3C哨戒機とともに現場へ急行、対応に当ります。

 セントラルパーク号は同海域を航行していたアメリカ海軍ミサイル駆逐艦メイソンが現場海域に到着した事で海賊は遁走を図りました、海賊被害を未然に防ぐ事が出来て一件落着かと思われた際、イエメンから弾道ミサイルが発射されました。過去、射撃管制レーダー照射を受ける等の事例はありましたが、弾道ミサイル攻撃を受けた事例はありません。

 あけぼの18km先に弾道ミサイルが着弾、18kmというと百里基地から最寄りのJR常磐線石岡駅までの距離しかなく、しかも発射されたのは2発という。弾道ミサイル攻撃を行ったのはイエメンのフーシ派武装勢力、内戦開始以来周辺国に幾度もミサイル攻撃や自爆無人機による攻撃を加えている自称はともあれやっている事は実質無差別暴力集団である。

 メイソン、今回の海賊襲撃では一時的にタンカーは襲撃されたものの、あけぼの情報収集を受けアメリカ海軍がミサイル駆逐艦メイソンを急派し、海賊はボートで遁走しました。そこにミサイル攻撃が加えられた形です。ただ、メイソンはアーレイバーク級、イージス艦であるためミサイル攻撃を探知し対比できた構図でイージス艦の重要性を示した構図だ。

 海賊の襲撃は海上自衛隊が海賊対処任務を開始する直前には高い頻度で発生しており、各国海軍は有志連合を編成し巡回することで海賊を警戒していましたが、海上警備行動を最初の法的根拠とし、その後は特別措置法と段階を踏んで派遣された海上自衛隊は、当初船団護衛方式を採用し海賊の警戒に当たりました。当時はまだ周辺情勢に余裕もありました。

 船団護衛方式では護衛艦2隻を派遣し、船団を集結点に集め前後を護衛艦が護衛する、あたかも先の大戦における南号作戦の反省を生かしたような方式を採用、船団には過去一隻の海賊被害も生じていません。ただ、海賊被害の低下とともに船団を組むまでの待機時間が商船の運航には惜しく、船団に参加する商船が減少し、現在は巡回方式をとっている。

 海賊被害とともに武装勢力のテロ攻撃、イエメンのフーシ派は10月から続くイスラエルガザ騒擾を背景にガザ地区のハマス支援を主張し、イスラエルへの長距離ミサイル攻撃を試みるなど過激な行動を続けています。11月20日には日本郵船の自動車貨物船ギャラクシーリーダーを襲撃し不法占拠、拿捕し抑留しています。乗員は未だ解放されていません。

 ギャラクシーリーダーはイスラエル資本が運航に関わっているとされますが、日本郵船の運航船であり、無差別攻撃の様相を呈しています。19日に発生した弾道ミサイル攻撃事案も、タンカー襲撃を受け出動したアメリカ海軍と、付近を航行し情報収集や情報中継を行った我が国護衛艦をねらったもの。まさか、海賊対処中にミサイル攻撃を受けるとは。

 海賊事案とされましたが、海賊とフーシ派が連携しているのか、それともAIS船舶位置情報などを受けて日米の艦艇をねらい攻撃したものなのか。少なくとも日本の護衛艦に向け弾道ミサイルが発射されたのは今回が初めての事例であり、フーシ派からの海上自衛隊への謝罪も釈明さえもないため、今後もこうした事態が繰り返される可能性があります。

 曙、駆逐艦曙でなくて命拾いしたなあ帝国海軍はイスラエル軍のように甘くはない、という声は一部にあるようですが。たしかに第一航空戦隊の直衛艦であった曙にミサイル攻撃を行えば赤城と加賀が出張って幾つかの都市が消えたでしょうが、いまは大戦前ではないですし、逆に戦後だからこそ弾道ミサイル攻撃も許されないことはいうまでもありません。

 アラブ首長国連邦海軍輸送艦へのミサイル攻撃被害。実は海軍艦艇が海賊ではなくミサイル攻撃を受け被害が生じた事例は実際にありましてもともと危険な海域なのでした、2016年10月1日にバベルマンデブ海峡を航行中のアラブ首長国連邦海軍高速輸送艦スイフトがフーシ派からの対艦ミサイル攻撃を受け大破し、航行不能となった事例がありました。 

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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