(本稿は2016年05月11日アメブロに投稿したものですが、このブログで再掲することにします。)
高齢者の仲間入りをしたら死に方を考えましょうよ
人は必ず死にます。太古の昔から一人の例外もなく。
高齢者(65歳以上)の仲間入りをすると、思いのほか死期は近いです。あと何年生きられるか。その平均余命は、平成26年簡易生命表によると次のとおりです。
ただし、95歳は平成13年生命表から継ぎ足しました。(小数点以下、四捨五入)
男 女
65歳 19年(84歳) 24年(89歳)
70歳 15年(85歳) 20年(90歳)
75歳 12年(87歳) 16年(91歳)
80歳 9年(89歳) 12年(92歳)
85歳 6年(91歳) 8年(93歳)
90歳 4年(94歳) 6年(96歳)
95歳 3年(98歳) 4年(99歳)
平均寿命は男81歳、女87歳となっていますが、これはオギャーと生まれた赤ちゃんが平均して何歳まで生きるかという数値でして、高齢者にとっては全く無意味なものですから、平均寿命の数値は忘れていただいたほうがいいです。
知っておきたいのは、上の表の数値でして、全部覚えるのは無理ですから、数字を丸めて、次のことを頭に置いておかれるといいでしょう。
高齢者(65歳)になったら、男は平均してあと20年、85歳まで生きられる。女は平均して男より5年長生きし、90歳まで生きられるだろう。
10年生き延びて後期高齢者にたどり着いても、余命は2、3年延びるだけ。以下同様で、せいぜい男は90歳、女は95歳であらかたがあの世に逝くことになり、幸か不幸かここまで生き残れるのは5人に1人だけ。
もっと簡単に言えば、高齢者となったら、
男であれば、余命はあと20年、せいぜい25年しかない。
女であれば、余命はあと25年、せいぜい30年しかない。
と、なります。
長いようで短い。でも、ボケのことを考えると短いようで長いです。後期高齢者ともなるとボケを心配せねばならなくなり、ボケが始まってから5年も10年も生き続けるとなると家族に大迷惑をかけることになり、いっそ早く死んでしまいたいとう心境になります。しかしながら、ボケてしまうと何も分からなくなり、迷惑を迷惑と思わなくなりますから質が悪いです。これを思うと、死ぬことよりもボケになることのほうが怖いですよね。何とかしてボケずに、立つ鳥あとを濁さずで逝きたいものです。
これを心して、じゃあ最期は自分はどんな疾患で死ぬことになろうか、それを考えてみましょう。
年齢別死亡原因のベスト5は次のとおりです。
(平成21年人口動態統計による。ただし、4位の半分にも満たない5位の死亡原因は掲載省略)
<男> 1位 2位 3位 4位 5位
75-79 がん(39%) 心疾患(13%) 脳卒中(10%) 肺炎( 9%)
80-84 がん(32%) 心疾患(14%) 肺 炎(13%) 脳卒中(11%)
85-89 がん(24%) 肺炎(16%) 心疾患(16%) 脳卒中(11%)
90-94 肺炎(20%) がん(18%) 心疾患(17%) 脳卒中(11%) 老衰( 6%)
95-99 肺炎(21%) 心疾患(18%) がん(13%) 老衰( 11%) 脳卒中(10%)
<女> 1位 2位 3位 4 5位
75-79 がん(35%) 心疾患(16%) 脳卒中(11%) 肺炎(7%)
80-84 がん(27%) 心疾患(19%) 脳卒中(13%) 肺炎(10%)
85-89 心疾患(24%) がん(16%) 脳卒中(16%) 肺炎(11%) 老衰( 6%)
90-94 心疾患(22%) 肺炎(14%) 脳卒中(14%) がん(13%) 老衰(10%)
95-99 心疾患(22%) 老衰(17%) 肺炎(15%) 脳卒中(13%) がん( 8%)
男であれば85歳(せいぜい90歳)まで、女であれば90歳(せいぜい95歳)までしか生きられないのが一般的ですから、この表で下線を引いた行が、大方の人の死亡原因となりましょう。もっとも、これは今現在のもので、20年先、30年先は、どれだけか死亡原因が変わるでしょうが、大勢に変化はないと思われます。
若干の順位差はありますが、男は①がん、②心疾患、③肺炎、④脳卒中、⑤老衰の順になり、女は①心疾患、②脳卒中、③がん、④肺炎、⑤老衰という順番になります。
そして、男女とも年を食うに従って、がんで死ぬ率が落ち、心疾患と肺炎の率が増えていきます。脳卒中は年齢で大差なく、老衰はまず望み薄と言えます。
それぞれの疾患による死亡ついて、当人の苦しさなり、家族に迷惑がかかるかどうかを考えてみましょう。(死亡原因の%表示は丸めた数値で小生の勝手な将来予測を含んでいます。)
①がん(男:約30%、女:約15%)
高齢者のがん治療となると、手術は若干減るものの、抗がん剤や放射線治療は相変わらずの感がします。当の本人には大変な苦しみとなりますが、たっぷり治療を受けて不幸にも(運よく)早々にこれで一巻の終わりとなれば、家族に迷惑がかからず、これまたよし、となります。ただし、幸いにも(運悪く)生き延びた場合は、寝たきりになる恐れがあって、家族に迷惑をかけることになりかねませんから、がん治療は遠慮してもらわねばいかんでしょうね。
こうしたことからも、「がんはホットケ」でして、高齢者のがんは放っておいても日常生活にさほど障害にならず、また、放置がん死は大して苦しまずにホトケになれます。
(参照記事:別立てブログ)→「楽に死ぬには、がんに限る。がんは放っておけばいい! 」
②心疾患(男:約15%、女:約25%)
平成25年人口動態調査によると、80歳以上で心疾患が原因して亡くなった方のその内訳は、心不全44%、急性心筋梗塞17%、その他の虚血性心疾患15%、不整脈及び伝導障害14%となっています。やたらと難しい用語が並んでいますが、簡単に説明しましょう。
・心不全:心筋が縮まなくなり、血液が肺や全身に送れない
・急性心筋梗塞も虚血性心疾患の一種:心筋の血流悪化で心筋が動かなくなる
・不整脈及び伝導障害:心臓の電気系統が故障し、心筋が縮まなくなる
これらが単独で発生して死因になることもあれば、複数が絡んで発生することもあるようです。高齢の女に心疾患が多いのは、男はがんで若死にするから心疾患死が目立たないだけでして、がんにもならずに長生きすれば、あとは心臓にガタがきて心疾患になる、といったところでしょう。
ところで、小生のおふくろは10日間寝込んだだけで97歳で他界しましたが、医師の判定は老衰なるも、死ぬ1週間前からひどい不整脈となり、死ぬ2、3日前は心臓に異常な鼓動がありましたから、その様を見ていて、いよいよ心臓のポンプが壊れれるかと思わせられました。こうしたことから、超高齢となって老衰と判定される場合も、けっこう心疾患であることが多いのではないんじゃないでしょうか。
さて、存命中にどれだけか心疾患の傾向が出てくると、大なり小なり心臓の働きが弱まるのですから、血流が悪くなって酸欠になり、息苦しくなります。ときには心臓に痛みも感じましょう。
でも、体のあちこちが痛いの痒いのというのは、年を食えば食うほど誰でもそうなりますから、心疾患の傾向が出てきても、ここは愚痴をこぼさず、重たい体を休み休み少しずつなんとかかんとか動かしておれば、自分のことは自分でできるという自立した生活が可能でしょう。
しかし、病態がだんだん進んでいきます。容易には体を動かせなくなりましょうが、そこは気力です。そして、いよいよ何ともならない事態の訪れを察知すれば、気力も萎え、あとは早い。何らかの心疾患であの世に逝くことになります。
できれば、急性心筋梗塞が望まれます。急に倒れて意識を失う。正真正銘のピンピンコロリ!でも、死因が急性心筋梗塞なのは、心疾患のうち17%(全死因の3~4%)ですから望み薄です。
③脳卒中(男:約10%、女:約15%)
平成25年人口動態調査によるによると、80歳以上で脳卒中で亡くなった方のその内訳は、脳梗塞70%、脳内出血22%、くも膜下出血6%となっています。
これはわかりやすいですね。血管が詰まるか切れるか、どちらかです。高度成長期前は栄養事情があまり良くなく、血管が切れるほうが圧倒的に多く、比率は逆転していました。今は、飽食、運度不足で過栄養となり、詰まることが多いです。将来、この傾向は強まるでしょう。
いずれのケースも、普段は自立した生活ができていて、家族と楽しく過ごせていたことでしょう。そうしたなかで、ある日突然、急に倒れて意識を失うことになります。家族の誰かに“倒れた!すぐ救急車だ”と、早速に救急救命病院へ運ばれてしまうと、運悪く助かってしまうことがあり、たいていは半身不随だの何だので、要介護となってしまいます。
ここは、“しばし待て!安静にして寝かせておいてくれ”と言いたいところですが、意識がないですから止めることはできません。この場合は、(参照:別立てブログ)→「リビングウィル 」を書いておき、家族にも知らしめておくことです。
脳卒中の場合は、運よく一巻の終わりとなるケースが多いですから、一番望まれる死に方です。
ピンピンコロリ運動で有名な長野県のお年寄りの合言葉が「95歳で脳血管障害でコロリと死のう!」というのも、うなずけます。ぜひこうありたいですね。
④肺炎(男:約15%、女:約15%)
肺炎というと、「風邪をこじらせて肺炎菌に侵されて死ぬ」と一般的に思われていますが、高齢で免疫力が大きく落ち込んでいると、たしかにそうしたことも起きますが、誤嚥性肺炎が多いです。食べ物だけでなく、寝ている間に唾液が気管支に入り、唾液に含まれる雑菌が肺の中で増殖して肺炎を引き起こすこともあるのです。
どちらのケースも、その多くは寝たきりになっている重度の要介護者です。肺炎が死因ということは、長く寝たきりであったと言えましょう。御免こうむりたい死に方です。
ところで、寝たきり老人がいるなんて日本ぐらいなものです。安易に寝たきりに甘んずる年寄りが悪いとも言えますが、家族が寝たきりにして生かしておきたがるという、家族の見栄丸出しの利己主義的文化をうまく利用して医療介護業界が成り立っているとも言えます。(参照記事:別立てブログ)→寝たきり老人をなくす術
お年寄りも家族も、延命治療を拒否する勇気をぜひ持ちたいものです。なお、欧米では、延命治療は老人虐待という考え方をもっていますから、寝たきりがほとんどない大きな要因になっています。日本人の平均寿命が世界一となっている最大の要因は、死ぬべき老人が延命治療で生かされているから、と言って過言でないです。
ところで、入院していったん延命治療が始まると、それを中止することは安楽死させることになりますから、容易なことではないです。そのためにも、健康なうちに「リビングウィル」を書いておくことでしょうね。
⑤老衰((男:約2%、女:約8%)
体全体が平均的に弱ってきて生命維持ができなくなって死亡したときに老衰と判定されるのですが、持病があったりするとそれが死因とされることが多いですから、老衰死の実態は定かでないと思われます。
85~89歳の死因で老衰死は、男2%(?)、女6%となっているのですが、なぜか男の老衰死は極端に少ないです。
いずれにしても、老衰死の場合は、死ぬまでのしばらくの間は床に伏すことになります。その期間はどれくらいかとなると、心疾患の場合と同様に、本人が気力でどれだけ体を動かし続けてきたか、にもよりますし、延命治療の程度で大きく違ってきます。
自力で飲食ができなくなれば、欧米では何もしないのが原則で、水も飲まないのですから1週間か10日で確実にご臨終となります。
小生のおふくろは老衰死と判定されましたが、最後の1か月間ほどは気力を振り絞って97歳の体を動かし続け、とうとう動けなくなって床に伏し、そのときには自力で飲食ができなくなっていて、小生が口元へ水やジュースを運んであげたのですが、日に日に飲む量が減り、10日間で逝きました。
その母親、うちのお祖母さんの場合も老衰死と判定されたのですが、間もなく98歳というときに風邪を引いたのが原因で床に伏すようになり、起き上がれなくなって栄養点滴を受け40日間生き長らえましたが、点滴はけっこう苦しいようですから、何もしなかったほうが良かったようです。
おふくろもお祖母さんも、珍しく自宅でともに老衰死したのですが、その要因は、これといった持病はなく、ヨボヨボになっても毎日庭の草引きをしたりして、百姓で鍛えた骨太かつ筋肉ある体を何とか維持し、何度か転倒しても骨折することなく、加えて関節痛もさほどのことはなかったですから、早々に寝たきりになるような事態にならなかったことが幸いしたと言えます。
よって、今年68歳となる小生としても半農半商の生活を生涯現役で勤め上げ、最後は老衰死を望むのですが、そうは調子よくいかないでしょうから、でき得ることなら十分に自立生活ができているうちに、ある日突然、脳卒中でピンピンコロリと逝きたいものです。
くれぐれも、死亡診断書に肺炎なんぞと決して書かれないよう、残された余生20年余を心して自立した生活をするんだと腹をくくっています。
その余生が運悪く30年になっても、最後の数年間は気力でもって体を動かし続けることをここに宣言して。
と書いて、ここで終ろうかと思ったのですが、考えてみるに、団塊世代の20年後、30年後は、どこの介護施設も満タンで、入りたくても入れない状態になっていますから、必然的に気力でもって自立生活することを余儀なくされます。果たしてそれに耐えられるかどうか、宣言した小生とて怪しい。
残された方法、自分で唯一選択できる死に方、そんなエッと思わせられる方法がありますので、最後にそれについてもふれておきます。
自分で唯一選択できる死に方、それは「断食往生」です。これも悪くはないです。実は小生も密かにそう願っているところです。
中村仁一著『「自然死」のすすめ』から、中村氏ご本人が望んでおられる「断食往生」のやり方について、抜粋して紹介します。
…現在の、死に際に医療が濃厚に介入する「医療死」ではなく、子どもの頃に接した年寄りの死に方、何百万年と続いていたご先祖様の死に方、「自然死」(注1)が希望です。…
そこで、タイミングがむずかしいのですが、完全にぼけ切る前に、…「断食往生」ができないかを考えています。
…西行さん(注2)のように「死に時」が察知できれば、非常に楽だと思います。できるだけ体内サインに敏感になれるよう、できるだけ自然に任せて様子をみるというトレーニングを積むようにしています。
中村流「断食往生」の具体的工程
一、五穀絶ち 7日間
二、十穀絶ち 7日間
三、木食 7日間(木食は木の実だけを食べること)
四、水絶ち 7日間
(引用ここまで)
(注1)自然死(同著より抜粋):自然死の実態は…「餓死」(「飢餓」「脱水」)です。一般に、「飢餓」「脱水」といえば、非常に悲惨に響きます。空腹なのに食べ物がない、のどが渇いているのに飲み水がない。例えば、砂漠をさまよったり、海を漂流したりする状況は、非常に辛いものと想像されます。しかし、同じ「飢餓」「脱水」といっても、死に際のそれは違うのです。いのちの火が消えかかっていますから、腹もへらない、のども乾かないのです。
(注2)西行(さいぎょう):平安時代末期に武家に生まれ、出家して歌人となり、鎌倉時代初期に断食往生。中村流のそれは、これを模したもののようです。
いかがですか「断食往生」。
実は小生は毎日ミニ断食をしています。1日1食の食生活です。そして、年に1回は2日断食(断食前後の肉断ち少食を含めると1週間)をすることにしています。その目的は、病気したときには動物皆そうですが断食して自然治癒させますので、それに備えての訓練として始めたものですが、最近、これは長期の断食による「断食往生」の訓練でもあると捉えるようになりました。
ところで、「断食往生」、それは自殺と捉えられてしまいますが、中村氏は、自殺とは「いっそひと思いに」といった形のもので、このように1か月もかけてというものは、よほど強靭な精神力が必要となり、自殺の範疇に入らないのではないかと言っておられます。
なお、留意点として、これは自然死も同様ですが、医師の往診を受けずに自宅で死亡した場合は、検死が行われ、場合によっては家族が「保護責任者遺棄致死の罪」で取調べを受けることにもなります。その対処法についても本書で具体的に書かれています。
よって、今後は、年に1回行う断食日数を3日、4日さらには1週間と延ばしていき、断食慣れすれば、すんなり「断食往生」に入れるのではないかと。
さあ、今年は「断食往生」に備えて3日断食を決行しよう! できるかなあ?
(追記)
2016年05月11日のアメブロ投稿時以後に知ったことですが、死に様が物凄い御仁が明治時代にいました。それは山岡鉄舟です。52歳で胃がんで没。
「みやざき中央新聞8月1日号 先人に学ぶ生き方の極意 その8 (著者:白駒妃登美)」からの抜粋
1888年(明治21年)7月19日朝、鉄舟は「腹痛や 苦しき中に 明け烏(がらす)」と歌いながら朝湯につかり、上がると白装束に着替え、左手に数珠、右手に団扇を持って座りました。やがて、見舞いに来た勝海舟としばらく世間話をしていましたが、鉄舟はおもむろに「只今、涅槃に入る」と告げました。それを聞いた勝が「左様か、ではお心安く御成仏を」と言って辞去すると、鉄舟はそのまま座を崩さず、皇居の方角に向かっていつの間にか息を引き取っていたそうです。
死に際にその人の生き様が凝縮されるとするならば、まさしく山岡鉄舟こそ「ラスト・サムライ」といえるのではないでしょうか。「ラスト」には、「最後の」という意味のほかに、「永遠に続く」という意味もあります。(引用ここまで)
いやあー、恐れ入ります。とても人間業とは思えません。そんなこと絶対に不可能だ、となってしまいそうですが、どっこい身近にそれに近い方がいらっしゃいました。
その方は、80歳で肝臓がんで亡くなられたのですが、死の近くまで農作業をされ、「もうあかん、動けん」と言ってから20日後に息を引き取られました。がんだと分かっても誰に言うこともなく、医師の手当ても受けず、そして自分の死期を悟られたことでしょう。
やっぱり「楽に死ぬには、がんに限る」ですなあ。