かわいそうな日本のお医者さん、大きく間違っている日本の医療制度
(最終更新 2016.8.18)
このブログで、何度かにわたって、お医者さんを非難しまくってきました。
でも、お医者さんには、そうせざるを得ない深~い事情があるのです。
その辺りを、岡本裕著「9割の病気は自分で治せる」から要約して紹介しましょう。
日本では、1日に50人の患者さんを診ないことには採算が合いません。先進国の平均は、1日15人程度の患者しか診ず、1人当たりの診療費は何と日本の約7倍です。
つまり、先進国では、日本の約3割の患者さんを診るだけで倍の診療費が稼げるのです。よって、余裕しゃくしゃくで診療できますから、並みの患者は健康指導が中心となり、薬をだらだら出し続けることは決してなく、薬はやむを得ず出し、副作用防止のため、短期使用に止められます。
ところが、日本の医療システムは、薄利多売の医療構造になっていますから、マニュアル(標準化された作業手引き)どおりに迅速・正確にさばくしかないのです。いっそのこと、コンピュータに患者を診させれば手っ取り早いのでは、というのが現実です。
どうして、日本の医療は、こんな悲惨な状態になってしまったのでしょうか。
そもそも、日本は、医師の技術料が低く抑えられ、薬価差益で儲けるしかない構造でした。でも、昨今は国の医療費が増え続け、薬漬けの医療から脱しようと、国が薬価を抑えましたから、差益がなくなり、代わって、必要もない検査をやって客単価を上げるしかなくなったのです。
患者も患者で、医者通いを日課にしている人が多いですし、病気はお医者様が治してくださるものと考える傾向にあります。これは、とんでもない間違いです。生活習慣病のほとんど全部が、その類と言えます。こうした病気は、医者が治る切っ掛けを示すだけで、あとは、自分自身の自然治癒力で治すしかないのです。
これからは、医師への依存心を捨て、医師の言うことは参考に留め、薬を飲むのも、検査をするのも、何もかも自分で決めるべきで、自分自身で健康管理すべきです。
そうしてもらえれば、医師は、本来の専門的な治療を要する患者にかかり切りになれ、救われるべき人が命を落とすことなく健康を取り戻せるのです。
医師もそれを望んでいます。 (以上、要約)
(2015.4.17挿入)
最後の段落に関係することですが、日本とアメリカ両国の掛け持ちで内視鏡外科医を長く勤めておられる新谷弘実氏が、その著「病気にならない生き方」のなかで次のようにおっしゃっておられます。
アメリカでは1977年の「マクガバン・レポート」を機に政府が掲げた「食生活のガイドライン」がアメリカ社会に少しずつ定着してきました。しかし、アメリカ人のすべてが「良い食事」を心がけているわけではありません。はっきりいって現在のアメリカでは、社会的なレベルが上の人ほど真剣に食生活の改善に取り組んでいます。そのため、経済力のあるいわゆる「上流」のアメリカ人の食生活は、いまはとてもヘルシーなものです。
アメリカでは太っている人は社長になれないといわれていますが、これは、自分の健康管理すらできない人に会社の経営管理はできないということが、社会での常識になっているからです。
アメリカの場合は、知識力と経済力が正比例しています。食事が病気の原因になっているという情報を得たとしても、その意味の深刻さをきちんと受け取って、実際の自分の生活に反映させるにはそれなりの知識力が必要です。その結果、いまアメリカでは健康な富裕層と不健康な庶民層に分かれつつあります。そして、この傾向はこれからますます強くなっていくのではないかと思っています。
日本はアメリカと違い、健康意識の強さと社会的地位が比例していません。たとえ大学教授であっても企業の社長であっても、食事は妻まかせ、健康は医者まかせ、自分が飲んでいる薬の名前さえ知らないという人がとてもたくさんいます。医者の立場からいわせていただくと、医学に関する知識レベル、健康に関する勉強の程度が社会的地位に比べて低い人が多いといわざるをえません。 (以上、抜粋・要約)
いかがでしょうか。健康に関する知識をしっかり勉強して、ちゃんとした自己管理をする必要性の重大さをわかっていただきたいと思います。日本人の場合は庶民層であっても知識力はけっこう高いですから、自己管理は可能です。 (挿入ここまで)
小生思うに、医療関係者内部からの改革は不可能でしょう。何でもそうでして、外部の国民一人一人が「おいしい患者」から、さよならする気になり、それを行動に移して、初めて医療改革が可能となるのです。
なお、日本人が医師への依存心が高いのは、何事も自分個人で決めたがらない国民性による面が大きいでしょう。また、薬漬けの原因は、昔の薬は漢方薬中心で自然治癒力を付けるために飲み続ける必要があるのに対して、欧米から入った洋薬は副作用覚悟で短期使用に止める性質のものなのですが、患者が漢方薬の感覚で飲み続けたいという過ちを犯しているからと考えられます。
(2016.8.18追記)
週刊現代8月20.27日号に先進的な医療制度の例としてデンマークの事情が紹介されていましたので、それを以下に抜粋して紹介しておきます。
デンマークに住む日本人…は初めてデンマークの病院を訪れたときの印象をこう話す。「患者には必ず『かかりつけ医』がいて、診てもらうには予約が必要です。…1人あたりの診察時間は15分ほどです。受診の際の主な症状だけでなく、普段ちっと気になったことなどもゆっくり話せます。」…
医療費は、基本的にすべて無料である…。税負担は重いが、その分、無駄な医療費に対する国民の目も厳しい。同じ国民皆保険でも、医療費の使われ方に対する意識が低い日本とはそこが違う。…
デンマークの政府関係者が語る。「この国では自己責任が徹底されており、簡単な病気、例えば風邪を引いたくらいでは『自分で治しなさい』と、病院では診てくれない。たとえ予約を入れて診察を受けても『ゆっくり寝ていれば治る』といわれるのがおちで、薬を出されることはまずありません。…」…
デンマークでは、どんな病気であってもまずは、ジェネラリストである「かかりつけ医」を受診することがほとんどです。…かかりつけ医は10年、20年と同じ患者を診続けているので、健康状態から家庭のことまでよく把握している。…
ここでポイントになるのは、かかりつけ医の報酬の仕組みだ。…何人のかかりつけの患者を診ているかで報酬が決まる「人頭払い」という制度がある。…デンマークでは患者のかかりつけ医として登録してもらえれば、それだけで定期的な収入につながりますから、必然的に長期的視点で患者の立場に立った医療を行うようになる。クリニックには検査のためのCTやMRIなどはなく、レントゲンの機械すらない所も多いです…。…医療全体のバランスを見て、費用対効果を考えたとき、無駄な検査や治療におカネをかけ過ぎないほうがいいというのがデンマークなど北欧諸国の医療の考え方なのです。
…デンマークは…全国民が登録しているポータルサイト…日本でいうところのマイナンバーを入れると患者の通院・治療歴、カルテ、処方箋、遺伝子情報にいたるまですべて見ることができる。…80歳を超えるような高齢者も認知症でない限り、みなiPadなどを自然に使いこなしている。
「日本では患者がカルテを見ることはまずないですが、デンマークは患者本位の治療を行うためにはきちんと情報を共有したほうがいいという考え方です。日本のようなお医者様と患者という主従関係ではなく、対等な関係にあるべきだという意識なのです。医療情報が完全に透明化されているので、医者は適当な処方や手術はできない。…」
病人を薬漬けにするのではなく、いかに健康で長生きしてもらうか、国ぐるみで取り組むというデンマークの医療制度には、ますます高齢化が進む日本にとって重要なヒントが無数にひそんでいる。
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