身長が低い人ほど病気にかかりにくく長生き、これって本当?
「独活(うど)の大木」という言葉がある。これは、体が大きいだけで何の役にも立たない者をあざけて言ったもの。他に類例として「大男総身に知恵が回りかね」「大男の見掛け倒し」というのもある。つまり、背が高い奴はろくなもんじゃんねえ、ということ。加えて、対義語として「山椒(さんしょ)は小粒でもぴりりと辛い」とあり、これは小男を褒めた言葉だ。その逆の、ノッポを褒めたり、チビをけなしたりする言葉は見当たらない。もっとも「馬鹿の大足、間抜けの小足、中途半端のろくでなし」という、全否定する言葉があるが。
どうして、こうしたことが言われるのかはさておき、表題にした「身長が低い人ほど病気にかかりにくく長生き」というデータがけっこう多い。それを紹介しよう。
2017年07月27日付け人民網日本語版に出ていたのだが、その概略を以下に記す。
①長生きできる
・米国ハワイ大学:8千人以上の日系アメリカ人を50年間追跡調査:身長156cm以下の人が最も長寿である。
・イタリア:身長約162cmの人は身長が162cm以上の人より平均2年長生きする。
・ニューヨークのアルベルト・アインシュタイン医学校老衰研究所:千人以上の95歳以上の高齢者調査:多くは身長が高くない。100歳を超える高齢者の多くは身長が低い。
②発癌リスクが低い
・米国の国立がん研究所:身長が高い人の発がんリスクは身長が低い人より高い。
身長が10cm増えるごとに、女性の発癌リスクは約18%、男性は約11%増加。
ガンの種別でみてみると、身長が10cm増えるごとに、女性は乳がんリスクが20%、黒色腫リスクが32%増加し、男性は黒色腫リスクが27%、前立腺がんリスクが21%増加。
③女性の場合、脳卒中のリスクが低い
・ノルウェーのトロムソ大学:身長が高い女性は脳卒中にかかるリスクが高い。
女性の身長が157cm以下で、かつ標準体重の場合は血栓リスクが約3倍も減少する。
以上、5つの研究報告がまとめて掲げられていた。他にないかと、ざっとネット検索したら、がんについてしかなかったが次のものが見つかった。
①男性の場合、悪性リンパ腫にかかりにくい
日本の国立がん研究センター:1990年から16年間にわたる40~59歳の男女約1万5千人の追跡調査結果:身長の高いグループが悪性リンパ腫になるリスクは、低いグループの1.38倍。ただし、これは男性のみに見られる傾向で、女性にはこの傾向はない。
②女性では発がんリスクが低い
英国オックスフォード大学:1996年から5年かけてイギリス人女性130万人を対象に調査:身長152.5cm以上の女性は10cm背が高くなるにつれてがんの発症リスクが16%ずつ高くなる。がんの種類によって若干異なり、身長が10cm高くなるごとに大腸がん1.25倍、乳がん1.17倍、子宮頸がん1.19倍、腎臓がん1.29倍、白血病1.26倍。
③発がんリスクが低い
スウェーデン:1938~91年の間に生まれた男女550万人を対象:身長が高いほどがんのリスクは増加する。この傾向は女性で顕著にみられ、身長が10cm高くなるごとにがん発症率が男性で10%、女性で18%高まる。うち、女性の乳がんリスクは身長が10cm高くなるごとに20%上昇、悪性黒色腫(メラノーマ)のリスクは男女ともに30%も増える。
ところで、身長の低い人のほうが病気になりやすいという、逆の研究報告もある。
それを以下に紹介しよう。
①身長の低い人のほうが脳卒中になりやすい
日本の国立がん研究センター:1990年から16年間にわたる40~59歳の男女約1万5千人の追跡調査:身長が低いグループの脳卒中発症リスクは、身長が高いグループの1.6倍。(参照:国立がん研究センター発表 身長と循環器疾患発症リスクとの関連)
(先に紹介したノルウェーのトロムソ大学の調査と間逆の調査結果であり、同様の調査結果は欧米にも数多くあるようで、トロムソ大学の調査結果は例外的なもののようだ。ただし、トロムソ大学の調査は女性に限っているから、直ちに間違いと断定することはできないであろう。)
②身長の低い人のほうが心臓病のリスクが増加する
フィンランドのテンプル大学教授ツーラ・パーヤネン氏ら:約3百万人のデータ(52の研究):160.5cm未満の身長の低い人は173.9cm以上の人と比べて、心臓病のリスクが約1.5倍になる。(①の日本の国立がん研究センターの調査では、身長との相関はないとの結果が出ている。)
③男性は身長の低い人のほうが認知症のリスクが増加。ただし、女性は逆転。
英国エディンバラ大学:1994年から2008年にかけ18万人の病歴などを収集分析:身長が170cm未満の男性は認知症になる確率が50%高くなる。
ただし、身長が170cm以上の女性は背の低い女性よりも認知症のリスクが35%高くなる。女性は身長が8センチ低くなるごとに認知症のリスクが13%減る。
以上、なんとも眉唾ものの調査研究が多いような気がするのであるが、身長の高低との相関関係がたとえ統計学的に有意であっても、因果関係ありとすることは決してできない。
たとえば、一番最後の「男性は身長の低い人のほうが認知症のリスクが増加。ただし、女性は逆転。」の場合を例にとってみてみよう。
チビの男は何かと不利な人生を歩んできたであろうから、老後もつまらない人生をおくることがままあって、認知症になりやすいのかもしれない。逆に女性の場合はノッポだと不利になり、男と真逆になるだろう。こうした場合、「老後に有意義な人生をおくっているか否か」と「認知症の罹患率」の相関関係を調査したほうがいいことになるのである。
ところで、米国のある科学者は、次のように主張している。(人民網日本語版による)
人間はその生存に最適な身長が存在し、男性は165~168cm、女性は159~162cmである。身長が高い人は生き残るためにより多くのエネルギーや水分、酸素の摂取が必要となり、それにより各器官に与える負担が増える。一方、身長が低い人は日常的なエネルギー消費が比較的少ないため、必要とする栄養素も少なく、体の耐力が比較的強い。
ということだそうだが、これも眉唾の説明に聞えてくる。
所詮「馬鹿の大足、間抜けの小足、中途半端のろくでなし」であって、健康と身長との関係にあんまり振り回されてはいかんでしょうなあ。無視したほうがいいでしょうね。
「飽食せず、小まめに体を動かし、ストレスを上手に抜き、充実した毎日をおくり、感謝を忘れない」といった生活、これしか健康を維持することはできないのではないでしょうか。
小生はチビ(身長157cm)で若い頃はコンプレックスを持っていましたが、今ではなんとも思っておらず、「飽食せず」以下の前2行に掲げた生活でもって、すこぶる健康です。
本稿はつまらないよもやま話になってしまい、失礼しました。