皮膚常在菌という“宇宙服”を脱ぐと、命は…。シャンプー・ボディーソープは危険です。
生き物の体表は微生物の防御服で守られているのです。
「何だ、このキャベツ。青々とした葉っぱに真っ白なものが付いている。これは農薬か?とても食えんわ。」
お世話になった方へ、うちの畑で採れたキャベツを日持ちするよう、外皮を剥がさずに宅急便でお送りしたら、後日、そんな声が聞こえてきました。
外皮に付いた白っぽいものは微生物です。あらゆる野菜の表面に、びっしり張り付き、野菜と共生しています。
野菜が元気に育ち、また、漬物が美味しくなるのも、この微生物のお陰です。
動物の場合はどうか。野菜同様、皮膚全体にびっしり微生物が住んでいます。ヒトの場合は、1平方センチメートル当たり数十万~数百万。1人当たり1兆個にもなります。
これを「常在菌」と言います。
皮膚の垢(アカ)を栄養とし、皮脂を分解して脂肪酸を作り、皮膚の表面を酸性に保ってくれ、酸性を嫌う化膿菌などの黴菌の増殖を抑えてくれています。
腸と皮膚は非常に似た器官です。皮膚が進化して腸になったのですからね。
どちらも外界と接していますから、黴菌が住み着いたり異物が入り込みやすく、様々な防御網ができています。
でも、ヒト単独、つまり体の内側からだけでは、とても防ぎ切れません。
腸と善玉菌の関係と同様、皮膚も常在菌(=皮膚の善玉菌)との共生なくしては、ヒトは生きていけないのです。
特に、ヒトは水生環境で進化した“裸の猿”ですから、猿のように体毛でもってバリアの役割のかなりを担うということもないですので、非常に深刻な問題になるのです。
野菜の話に戻します。野菜の表面に黴菌が取り付いたら、どうするか。
農薬を散布しますが、その昔、農薬工場の大火災で、一時期、農薬が入荷しなくなったことがあります。さあ、大変。
そのとき、農薬に詳しい方が、台所洗剤を薄めて噴霧すれば良いと、皆に指導されて、見事に黴菌の退治に成功!
どちらも強力な界面活性剤であり、黴菌の細胞膜を破壊します。野菜と共生する微生物も大多数がやられますが、膨大な数が住み着いていますから、回復可能です。
再びヒトの皮膚の続き。皆さん、お風呂で、こんなことしていませんか。
毎日毎日、汚れ落ちの良いボディーソープをタオルにたっぷり付け、全身をゴシゴシ擦って、“あー、さっぱりした!”。
<常在菌の叫び声>
「わっ! 仲間が擦り取られて流されていくっ…。残った仲間も界面活性剤で次々と死んでいくー…。ほっ、ご主人様がやっと風呂から上がられた。生き残った仲間は、たったの1%かぁ…。」
これでは、余りにも残酷ではありませんか。
皮膚の常在菌の数が百倍に回復するのに約8時間。それから、すっかり無くなった脂肪酸作りに常在菌は大忙し。健全な皮膚に戻せるのは、いつのことやら。
汚れ落ちが良いものほど、界面活性剤が強力です。ご注意を。
<正しい体の洗い方>
まず、タオルを使わないことです。
素手で擦り洗いしただけでも、常在菌の9割が洗い流されます。化粧品をお使いの方は、洗顔は「泡で包むだけで擦らない」ということをご承知と思います。体も全く同様。
そもそも、ヒトの体は洗浄剤で洗う必要がないようにできています。
日本では、江戸時代までは石鹸すら使っていませんし、逆に、米ぬかで保湿成分を補っていました。垢は常在菌によって完全に分解され、ほとんどの汚れは、湯に浸かるだけで綺麗に取れます。
洗浄せねばならない部位は、汚れが溜まりやすい陰部や肛門、脇の下、足指の間だけです。あとは、脂性の方の頭皮と顔ぐらい。
その洗浄には、石鹸が一番。泡立てしてからしか使えませんし、界面活性剤は通常入っていませんからね。
皆さん、ヒトの体は、『常在菌という宇宙服』で守られていることを、しっかり理解し、お風呂にお入りください。
腸内善玉菌と同様、皮膚の常在菌を大事にしてあげれば、皮膚はドンドン若々しく健康になり、『長寿美肌』間違いなし!
(ここまでの記事は、当店「長寿美肌新聞」2005年3月号を再掲したものです。以下、今回の継ぎ足し)。
“ボディソープを使わないなんて、おかしい”と、お思いの方が多いと思いますが、これが市場に出始めて喜んだのは、何と皮膚科医でした。皮膚は皮膚常在菌で守られていることをよく知っていたからです。
考えてみてください。腸を綺麗にしようと、毎日、排便後に下剤を飲んで腸洗浄するなんてことは、とんでもないことであることは、誰でも分かるでしょう。毎日排便されれば、それだけで腸は綺麗になるのですからね。それと同じで、毎日お風呂に入れば、それだけで皮膚は十分過ぎるほど綺麗になるのです。
(2017.1.20補記)
ここまで、体の洗い方について述べてきましたが、髪となるともっと大変なことが起きます。ここから先は、最近発売された週刊現代に興味深い記事<「逆さま健康法」 これで元気に100歳だ>が載っていて、そのなかに<髪は洗わない>と題して、宇津木龍一氏の話がありましたので、それを紹介しておきましょう。
(以下、抜粋)
抜け毛、ふけ、かゆみなど、男女を問わず、高齢になると頭皮や頭髪に関する悩みは避けられない。シャンプーを変えたり、念入りに洗髪したりしてもなかなか状態が改善しないことも多いだろう。それもそのはず、頭皮や髪の悩みはそもそもシャンプー自体に原因がある可能性が高いからだ。
著書に『シャンプーをやめると、髪が増える』がある宇津木龍一氏が解説する。
「たくさんのふけが出て頭がかゆくなるといった脂漏性皮膚炎の症状は、ほとんどの場合、頭皮に真菌(カビや酵母菌)がついている。皮膚科で診察を受けると副腎皮質ホルモン(ステロイド)、免役抑制剤といった薬を処方され、一時的に症状は治まりますが、薬をやめるとまたすぐ症状が出る。なぜか? 理由は毎日のシャンプーにあります。…
シャンプーはクリーム状の非常に栄養価が高い液体で、菌が増殖するのに理想的な状態です。そのためパラペンなどの強力な防腐剤を入れなければ液体は腐る。ほとんどの人は防腐剤がたっぷりで消毒効果の高いシャンプーで頭皮を痛めているのです。
皮膚表面は常在菌により、他の病原菌の侵入や外的な刺激から守られています。ところが毎日のシャンプーは、常在菌を殺しているのと同じことなのです。
シャンプーがもたらす弊害は皮脂と皮脂腺に顕著に表れます。皮脂腺には皮脂をつくる機能があります。シャンプーで頭の皮脂をすっかり洗い流してしまうと、皮脂が不足するため、それを補うため皮脂腺が大きく発達します。すると毛に供給されるはずの栄養の多くが皮脂腺に行ってしまい、毛は栄養不足の状態に陥ります。その結果、本来太くて長かった毛が細く短いうぶ毛のようになるのです。…
臭いの元は皮脂が酸化してできる酸化脂質や過酸化脂質、アンモニアや硫化物などです。これらは皆、水で洗い流せます。
脱・シャンプーをしてしばらくのあいだは、臭いやべたつきが気になる人もいるかもしれません。長年のシャンプーで皮脂腺が発達しているからです。しかし、水だけで洗髪することを数か月続ければ、皮脂腺はすっかり小さくなってべたつきも感じなくなるはずです。」(宇津木氏)
いきなりシャンプーをやめることに抵抗がある人は、まずは頻度を減らして、水やお湯だけで洗う日を設けてみてはどうだろう?(引用ここまで)
いかがでしたでしょうか。
肌も髪も常在菌でしっかり守られているのです。というか、ヒトと常在菌は共生関係にあり、常在菌はバリアを作ってヒトの体を守るとともに、垢やふけを栄養源にして生きているのです。さらに、毛じらみも常在菌同様に共生関係にあるとも言われたりします。
清潔意識が高すぎる現代の日本人です。こうなったのは、つい最近のこと。
その昔、平安貴族には入浴習慣がありませんでした。そのため、臭い対策として香を焚いたのです。その時代に戻れとは言いませんが、いい点はぜひ取り入れたいものです。